
「最後まで愛するペットと一緒」をあきらめないで
元気グループ 特別養護老人ホームさくらの里山科
- 分野 高齢 / 地域 /
- エリア横須賀市 /
- 推進主体 社会福祉法人・事業所 /
横須賀市にある特別養護老人ホーム「さくらの里山科」では、2012年の開所以来、犬や猫と一緒に入居ができる取り組みを続けています。今回は、施設長の若山三千彦さんにお話を伺いました。
「あきらめない福祉」ができること
ペットとの同伴入居を始めたきっかけは、若山さんが10年以上関わっていたある利用者との出来事でした。身寄りのない方でしたが、愛犬のミニチュアダックスフンドと家族同然に暮らし、一心同体と言えるほど深い絆で結ばれていました。在宅生活が難しくなり特養に入居する際、愛犬の引き取り手が見つからず、泣く泣く保健所に預けることになりました。その方は「俺は自分の家族を自分の手で殺してしまった」と号泣しながら自分を責め続け、半年もしないうちに生きる気力を無くしたように亡くなってしまったそうです。
「この出来事に、当施設のスタッフが『こんな悲惨な最期に高齢者を追い込んでしまうのが福祉なんでしょうか』と言葉を漏らしました。当法人は『あきらめない福祉』を理念としており、介護が必要になっても利用者が旅行や美味しい食事などをあきらめずに楽しめるようサポートしています。スタッフの言葉を聞いて、ペットと暮らすことも、その人の人生を最後まで楽しいものにするために欠かせないことだと気づき、その当時建設を計画していた『さくらの里山科』を、ペットと一緒に暮らせる特養にしようと思いました」と若山さんは当時を振り返ります。

施設長の若山さん
追い風の中で扉がひらく
特養でのペット同伴入居となると行政の許可が気になるところですが「実際は、特に大きな問題はありませんでした」と若山さんは話します。
「横須賀市は犬猫の殺処分ゼロを目指すなど、元々動物行政に積極的な自治体でした。当施設が完成する前から『犬と暮らしている認知症の方を入居させてほしい』と市から相談があったくらいです。また、施設内の衛生面についても、特養では日ごろから衛生には非常に気を付けているので、普段通りのことをきちんとやっていれば、ペットがいても特に問題はありませんでした」と語ります。

仲良く昼寝をする入居者の女性と愛猫のプリンちゃん
もう一度、となりにいる幸せを
ここには、同伴入居のペットのほかに、施設が保護した犬や猫も暮らしています。そのため、年齢や生活のことを考えて、大好きな犬や猫を飼うのをあきらめていた人からの入居希望も多いそう。「認知症が進んで表現が乏しくなっていた方が、ここで動物たちを見て笑ったり撫でたり、自分から話しかけたりする様子に、ご家族が驚かれることもよくあります。私たちのような特養もあるので、どうか大好きな犬や猫との生活をあきらめないでほしい」と若山さん。老人ホームに入居しても愛するペットと暮らす、「あきらめない福祉」の挑戦は続きます。