「学びたい」を支えるICT支援
あっきーテックサポート 鈴木章裕さん
- 分野 こども / 障害 /
- エリア神奈川県 /
- 推進主体 その他の活動主体 /
どうしたら子どもたちの「主体的」な活動を引き出せるか。そこを一番大切にしたいです。
そう語るのは「あっきーテックサポート」の鈴木章裕さん。2011年から横浜市立特別支援学校の教員として勤めた後、2023年に開業し、現在は特別支援教育に関するアプリ開発や、教育現場でICTアドバイザーなどの活動をしています。
原点は、教員一年目の経験から
活動の原点は、肢体不自由の子どもたちが通う特別支援学校の教員時代、新卒1年目の夏休み中に初めてアプリ教材を作った経験にあります。
当時について鈴木さんは「身体面のサポートに不慣れで、子どもたちとの関係づくりに悩み、不甲斐なさを感じる日々でした」と振り返ります。それでも今の自分にできる教育方法を模索する中で、大学で学んだ心理的アセスメントやプログラミング等の〝教育工学的アプローチ〟に基づくICT支援を手がかりに、独学でWindows用のかな文字学習アプリを作り上げました。
この教材が校内外で高く評価されたことに背中を押され、教員生活の傍らiPad用アプリやNPO法人とのアプリ共同制作などに取り組んでいきました。こうした経験から、ICT担当教員を任されることにもなりましたが、自作したアプリのメンテナンス等に責任を持ちたいという気持ちや、ICTの活用をより広げたい思いが重なり、独立する道を選びました。
“かゆい所に手が届く”アプリ開発
鈴木さんが手がけるアプリは、ボタン一つで画面が切り替わるなど、基本的な構造をシンプルにすることで、誰でも直感的に使いやすい設計になっています。その一方で、活用している教員からは“かゆい所に手が届く”という声をもらうことが多いといいます。
開発した「かな文字」を学習できるアプリでは「子どもがどのように考え、答えにたどり着いたか」を一つずつ確認できるよう、文字入力の操作手順をあえて多く設けています。既存のICT教材では対応しきれない、子どもの理解度が分かる“一工夫”は、教員として現場の声に寄り添ってきたからこそ実現できています。
「教育分野では特に、本人の主体性や特性、ご家族の思い、学校等の組織の制約といった複数の要素をつなぎ、それぞれのニーズを調整しながらICTを『コーディネート』していくことの必要性を痛感しています」と課題を伝えます。
卒業後も途切れない支援へ
現在は、ICTアドバイザーとして「訪問カレッジEnjoyかながわ」(※)に参加し、訪問型の学習支援にも力を入れています。一人ひとりの好きなことに応じて一緒に学びを楽しむことを大事にしているこの活動に、学校教育とは違った意義を感じていると言います。
「学校現場ではICT環境の整備が進んできていますが、卒業後に通う事業所では、まだ十分とは言えないのが現状です。子どもたちの活動が途切れることなく広がっていくよう、導入の工夫や体制づくりも含めて一緒に考えていきたいです」と語る鈴木さん。
教員時代から変わらない「子どもたちのために自分にできることをしたい」という強い思いと、ICTという〝架け橋〟を手に、伴走はこれからも続いていきます。

①鈴木さんが作成したアプリ。画面に表示される絵に対応する文字に視線でカーソルを合わせ、一文字ずつ入力を行うことで、ひらがなの理解を確認する



②③④「訪問カレッジEnjoyかながわ」を利用する三野さん。視線入力を使い、絵に合うひらがなを順番に選び、左足の指先でスイッチに軽く触れるだけで、クリック操作ができる

⑤鈴木さんが活用する入力補助機器の一部。教員時代から、子どもたちがICTを活用できるよう自作したり市販品を組み合わせたりしている

⑥カレッジで活用するパソコン用のスタンドや機材などを運搬する鈴木さん
訪問カレッジEnjoyかながわ
特別支援学校等を卒業した方々の自宅を学習支援員が訪問し、「学ぶことは生きること」をテーマに生涯学習支援を行っています。
実施:(特非)フュージョンコム かながわ・県肢体不自由児協会
