「やさしいにほんご」のすごろくでつながる輪
多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)
- 分野 高齢 /
- エリア神奈川県 /
- 推進主体 民間団体(NPO等) /
言葉や文化の違いを超え、すべての人が自分らしく歳を重ねられる地域づくりを目指す「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」。
本会との協働モデル助成事業の中で日本で暮らす外国人高齢者に対して行った調査からは、多くの人が老後の生活に強い不安を抱きながらも、具体的な支援制度やサービスの利用に結びついていない実態が明らかになりました。その背景には「老後のことを話すのは縁起が悪い」「親は子が看取るべき」といった母国の文化的価値観や、言語の違いによる情報の遮断など、さまざまな要因が複合的な壁となって立ちはだかっています。
老後の不安を自然に共有
そこでTKNKは、水戸市が作成した「認知症456(すごろく)」に注目し、全国で広く活用できる「やさしいにほんご」版の制作に取り掛かり、令和7年9月に完成しました。
TKNKの代表で立教大学特任准教授の門さんは「普段の生活ではなかなか口にしづらい老後の悩みや不安も、すごろくをやりながらだと、ゲーム内の会話として自然に共有できるんです」と、認知症456の魅力を語ります。
各マスには、認知症の初期から日常的な介護が必要になるまでのようすや周囲の対応などが描かれており、時間軸を追って加齢による変化や認知症への理解を深められます。プレイする際は、認知症の進行段階に応じた社会資源がまとまった資料「資源編」を併用することで、具体的なサポートの仕組みも同時に学べるのが特長です。
つながりを重ね、育てた表現
制作の過程には、団体のネットワークを生かした豊かなつながりがありました。国際交流や福祉、日本語教育の専門家や、在日コリアン、中国帰国者、日系ブラジル人といった多文化の背景を持つ方々など、分野を超えた多様なメンバーが参加しました。

左から、村上さん、門さん、中さん
日本語教育の専門家で、制作の中心に携わった村上さんは「特定の地域の情報に偏らないよう汎用性を持たせつつ、誤解やネガティブな印象を与えない言葉を選ぶのは非常に難しかったです。しかし、各メンバーの強みを生かして丁寧に表現を育てられたおかげで、文化や言語、年代を問わず、誰もが参加しやすい形にできたと感じています」と振り返ります。
地域を結ぶきっかけに
完成後、県内の地域包括支援センターや福祉関係者を中心に反響があり、今後は実際に体験できるワークショップを開き、イベントなどに参加したいということです。
前代表の中さんは「民生委員の方や地域のサロンなどでも活用してもらい、外国につながる方との接点になれば嬉しいです」と、すごろくを通じた地域の輪の広がりについて想いを話してくださいました。
認知症456の「やさしいにほんご」版は、認知症についての理解を深めることにとどまらず、さまざまな壁を越えて人と人とがつながるきっかけとして、温かい地域づくりの未来をそっと照らし出しています。



認知症になった人の変化や、みんなで気軽にできる体操などが、ひらがなとカタカナで書かれている


数字が書かれているコマに止まったら、「資源編」で対応する数字をチェック!



コマには参加者同士で話し合う場面もある。それぞれの経験や地域の社会資源などについて、自然に情報交換ができる
