当事者の声から考える福祉×防災の実践
令和7年度本会第2種・第3種正会員連絡会研修会報告
- 分野 その他の活動分野 /
- エリア神奈川県 /
- 推進主体 民間団体(NPO等) /
◦はじめに
去る2月5日に本会第2種・第3種正会員連絡会(※)研修会「誰も取り残さない防災と福祉の活動を目指して」を県社会福祉センター(横浜市神奈川区)で開催し、当事者団体をはじめ、市町村・社協・福祉施設等43名の多様な機関・団体が集まりました。
近年、災害が頻発・激甚化する中で、災害時に支援を必要とする方々が地域の中で孤立することなく、どのように支えあっていくかが改めて大きな課題となっています。
本研修会では、駒澤大学教授の川上富雄さんから課題提起のための講義をいただいた後、4団体から「実践レポート」として、災害に備えた平時からの取り組みをご紹介いただきました。本稿では、研修会の概要についてご報告いたします。
課題提起 日頃のつながりを生かして災害に備えた地域づくり
川上さんからは、災害時の被害は「自然現象」と「平時からの備え」の掛け合わせで決まるとの話がありました。災害の規模のそのものを事前に正確に予測することはできませんが、それに備える体制や日頃の準備の強さが、被害の大きさを左右すると強調しました。

「コミュニティワークは支え合いのまちづくりを進めるとともに、災害時に命を守る力となる」と語る川上さん
また、災害時に本当に頼りになるのは、制度そのものではなく「日頃からつながりを持つ人」であるとの指摘もありました。平時から顔の見える関係性を築いておくことが、いざという時の迅速な安否確認や支援につながり、「いのちを守る防災」の基盤になると語られました。
さらに、福祉と防災のまちづくりは切り離すことのできない関係にあることが示されました。日常の地域福祉の取り組みは、災害時の助け合いにも直結します。制度を整えることに加え、地域とのつながりを強めていくことの重要性について呼びかけられました。
実践レポート① 県手をつなぐ育成会
県手をつなぐ育成会では、知的障害児者の成長記録や支援の引継ぎを目的とした『わたしのノート』を普及してきましたが、東日本大震災があり、改めて見直すと『わたしのノート』の内容だけでは災害時に必要な情報が不十分だと感じました。
そこで、令和6年の能登半島地震で被災した輪島市手をつなぐ育成会等から話を伺う学習会を開催し、災害時に知的障害児者のいのちと人権を守るための備えについて検討する必要性を改めて感じました。トイレ・食事・睡眠・薬・風呂の「5つの課題」への対応の重要性や、知的障害児者の特性を踏まえた情報伝達の難しさ、個別避難計画の作成状況の地域差など、具体的な課題が明らかになりました。
これらの課題を踏まえ、昨年度は、県内すべての市町村に聞き取り調査を行い、各地域の取り組み状況をまとめた『防災あんしんブック(わがまち・くらし編)』を作成しました。今年度は、災害時に知的障害児者本人が活用でき、自身のことを周囲に分かりやすく伝えられるツールとして、「じぶんのこと編」や「いつでもあんしんカード」の作成へと発展しました。


「わがまち・くらし編」「じぶんのこと編」【県手をつなぐ育成会提供】
被災地から学んだ教訓と、見えた課題を軽減し、みんなが無事でいられるように、必要な方に届くよう目指しています。
実践レポート②(N)アレルギーを考える母の会
アレルギーを考える母の会は、東日本大震災を契機に、災害時のアレルギー患者や慢性疾患患者支援を続けてきました。
被災地への専門医の派遣や、自治体職員や保健師、学校関係者を対象とした研修会を130回以上実施するなど、地域の支援力向上に取り組んでいます。さらに、避難所におけるアレルギー対応食の不足や表示不備、生活環境への配慮不足などの課題を明らかにし、国の指針づくりにも参画しました。

令和6年6月に輪島市へ支援に行ったときのようす【アレルギーを考える母の会提供】
このたびの災害対策基本法の改正を受け、「要配慮者」という概念が広がる中で、慢性疾患患者も支援の対象であることを明確にし、事前の備蓄やその周知、相談体制の整備を進めるよう働きかけを行っています。
実践レポート③ 防災普及学生団体Genkai
Genkaiは、高校生から大学生の有志で構成され、鎌倉市を中心に「好き×防災」を掲げて若い世代に向けて防災の普及に取り組んでいます。
能登半島地震では、防災士を持つメンバーが現地支援に参加し、街頭募金や現地産業の復旧支援、災害ボランティアセンター運営支援などに携わりました。また、東日本大震災の被災地で伝承活動を行う同世代との交流や、そこでの学びを神奈川の活動に還元しています。
また、平時には、防災を身近に感じてもらうための独自プログラムとして、消火器や心肺蘇生法、土のう作成、簡易担架による搬送方法等をゲーム形式で学ぶ「防災運動会」や、津波避難ビルや危険箇所の確認、公衆電話の使い方を学ぶ「防災アドベンチャー」を実施しています。さらに、行政等と連携し、小町通りへの避難計画表示看板の設置にも参画しました。
学生ならではの視点や発想力を生かし、若い世代に防災を身近なものとして伝えるとともに地域と連携した実践的な取り組みを進めています。


防災運動会のようす【防災普及学生団体Genkai提供】
実践レポート④ JVOAD(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)
JVOADは、全国域の災害中間支援組織として、行政・社協・NPO・企業など多様な主体をつなぎ、被災者一人ひとりに必要な支援を届けるための調整や連携促進に取り組んでいます。災害時には、被災地のニーズと支援状況の全体像を把握し、「情報共有会議」を通じて支援の重複や漏れを防ぐ体制づくりを推進してきました。
能登半島地震において、食支援や在宅高齢者・障害のある方への戸別訪問、広域避難に伴う調整などを実施しました。国の「被災高齢者等把握事業」を活用し、専門職やNPOと連携して継続的な見守り活動につなげた他、炊き出しや子どもの居場所づくり、ペット同行避難への調整にも取り組みました。平時からは都道府県域での災害中間支援組織の整備を進め、復興期までを見据え、地域の力を生かした支援の仕組みづくりを進めるとともに、官民を超えた多様な主体と協働して災害支援体制の構築を目指しています。

石川県内で被災地と県域をオンラインでつないだ情報共有会議のようす【JVOAD(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)提供】
◦おわりに
本研修会を通じて、「誰も取り残さない」防災と福祉の重要性を再確認しました。日頃のつながりと備えを基盤に、地域に即した実践を重ね、平時から支え合える地域づくりを進めていくことが期待されます。(企画課)
