神奈川県社協について
事業報告・決算、社会福祉法人現況報告書
令和6年度神奈川県社会福祉協議会事業報告
我が国では本格的な少子高齢化・人口減少社会に突入し、要支援・要介護認定者が694万人と過去最多数となる一方で、介護を担う職員が令和8年度には25万人不足するという推計が発表されるなど、地域福祉や介護をめぐる状況は目まぐるしく変化しています。
令和6年度、国は孤独孤立対策推進法・困難な問題を抱える女性の支援法・ヤングケアラー支援法などを施行し、新たな地域生活課題への対応策を講じるとともに、地域共生社会の在り方に関する検討会を開始しました。
神奈川県では当事者目線の条例に基づく新たな計画が開始されるとともに地域福祉支援計画の見直しが行われ、あらゆる分野での当事者目線に立った施策を展開することとされました。
本会ではこれら国・県施策の動向、地域の状況などを踏まえ、「神奈川県社会福祉協議会活動推進計画(令和6年度~10年度)」の基本目標に沿った取り組みを行いました。その概況は次のとおりです。
推進の柱Ⅰ 地域での支えあいの推進
1 多様な主体と進める地域福祉活動の推進
- 市町村域における連携・協働の基盤づくり
・包括的な支援体制整備の推進に向けて、重層的支援体制構築支援事業や生活支援コーディネーター養成研修事業など県委託事業間の連携を図りつつ、部会事業とも関連性を持たせながら行政や市町村社協の連携・協働に向けた取り組みを効果的に進めました。
・ケアラー支援ネットワークづくりでは、ケアラー支援専門員設置事業(県委託)を中心に事業を展開し、支援者の養成や地域の関係者間のネットワーク構築を目的とした研修を関係機関・団体やセルフヘルプ・グループ等の協力を得ながら開催しました。また、ケアラーに関する研修会等の開催経費の一部を主催者にかわって本会が負担する制度の運用を新たに開始しました。
・地域の担い手確保に向けた検討会を行う「地域の担い手づくり検討会」では、多様な世代の参画を促進するための活動の一環として、大学生が民生委員・児童委員活動や自治会のイベント企画・実施を体験するフィールドワークを民児協や市社協、自治会関係者の協力を得て実施しました。
- 市町村社会福祉協議会との協働
・福祉教育の今後の展望を考える機会として、市町村社協福祉教育担当者会議を開催しました。県内の公立中学校校長を招聘し、教育現場から見る福祉教育、教育と福祉の連携による福祉教育等について意見交換を行い、検討を深めました。
- 社会福祉法人の公益活動との協働
・ライフサポート事業では、パンフレットの活用や関係機関等を訪問しての説明等により事業の周知をはかるとともに、参加法人・CSWが大学等の講義での実践発表を行うなど、事業の周知と理解促進に向け、広く情報発信する機会をつくりました。
- 民生委員児童委員活動との協働
・令和6年1月に主任児童委員制度が30周年を迎えたことを契機に、主任児童委員の役割を改めて振り返るとともに、多様な関係者とのさらなる連携・協働を考えるきっかけとなるよう、本会機関紙の福祉タイムズで県内の主任児童委員による寄稿の連載、座談会の内容の掲載等を行いました。
・民生委員・児童委員活動の現状や課題、県政令市を超えた県内各地域の実践を共有し、これからの民生委員児童委員活動の一助としていただくことを目的に、関係機関との連携と民生員児童委員活動をテーマとした民生員児童委員活動推進会議を開催しました。
- ボランティア活動・企業等との協働
・セルフヘルプ・グループ活動支援をはじめとした、かながわボランティアセンターの取り組みを知るための大学生の見学・体験、授業への協力等を積極的に受け入れました。受け入れにあたっては、セルフヘルプ・グループ等の協力を得ながらプログラムの充実を図りました。
2 自立した生活を地域で支える取り組みの推進
- 権利擁護の体制づくりの推進
・権利擁護推進事業において、弁護士等を各地域に派遣し権利擁護ネットワークの形成を支援するとともに、身寄りがない方の死後事務等に関する市町村検討会等への参加や先行事例の情報提供等を行いました。
・日常生活自立支援事業において、県域の30市町村社協に業務の一部を委託し、認知症等により判断能力が不十分な方の地域における自立に向けた支援を行うとともに、市町村社協の巡回調査等を通じて適正な運営の確保に取り組みました。
・成年後見制度の推進では、県委託事業としてかながわ成年後見推進センターの設置、担当職員の設置を行い、成年後見制度、利用促進、市町村社協等の法人後見受任支援、市民後見人養成支援を行いました。
- 生活福祉資金貸付事業を通じた自立生活の支援
・生活福祉資金の貸付と相談支援を通じて借受世帯の自立を支援するとともに、市区町村社協の担当者の資質向上を図るため支援共有会等を開催しました。償還状況を市区町村社協と共有し、定期的な滞納調査や所在調査により償還促進、既存債権の整理による償還免除を通じた債権管理に努めました。
・コロナ特例貸付においては、市区町村社協や自立相談支援機関と連携した借受人へのフォローアップ支援に引き続き取り組むとともに、償還免除等の適切な活用に向け周知を図りました。
- 生活困窮者等を地域で支える取り組みの推進
・町村部における生活困窮者自立相談支援事業では、町村部において生活困窮者支援体制を強化するため、個別案件を関係機関と共有する機会を積極的に持ち、連携を図りました。
3 災害福祉支援活動の推進
- 災害福祉支援活動の民間拠点機能の充実
・令和6年1月に発生した石川県能登半島地震および令和6年8月に発生した能登地方大雨災害に伴い、令和6年1月15日から継続して「県外支援体制」を講じ、石川県内社協への応援職員派遣及び「神奈川DWAT本部」の設置・神奈川DWAT派遣を実施しました。石川県内の災害ボランティアセンターに、社協の相互支援協定に基づく協力をいただき、神奈川から99名の社協職員を派遣しました。
・令和6年台風10号の影響により県内で災害救助法が適用されたことに伴い「災害福祉支援本部」を令和6年8月30日に設置(11月15日解除)し、県内に設置された市町村社協災害ボランティアセンターへの支援活動に取り組みました。
・令和6年台風10号の被害を受けて立ち上がった社協災害ボランティアセンターへの運営支援として、相互支援協定に基づきICTの活用を含めた運営支援および市町村社協、県災害救援ボランティア支援センター協働運営者、市町村社協等への情報発信を行いました。また、秦野市社協からの支援要請を受け、市町村社協および本会から応援職員を派遣しました。
・令和6年能登半島地震での神奈川DWATチームの派遣の経験を活かし、発災時に備えてDWAT活動に必要な敷材を確保しました。
推進の柱Ⅱ 福祉サービスの充実
1 社会福祉法人・施設の活動促進
- 社会福祉法人・施設等の専門性を活かした取り組みの推進
・経営者部会では、会員法人と社協が地域でのネットワークを形成し、地域共生社会の実現に取り組めるよう、地域ネットワーク強化事業により、助成を行いました(2年目)。
・施設部会では、各協議会にて分野・種別等に応じ課題等の整理・検討等に取り組んだ他、部会としては、法人や自施設の組織力(組織基盤・風土)の現状診断をテーマに、理事長。施設長セミナーを実施しました。
・地域に根差した法人・施設の公益的な活動が展開されるよう、福祉経営支援レポートによる継続的な情報発信を行うとともに、巡回型経営支援事業に取り組みました
2 利用者の権利擁護
- 権利擁護の体制づくりの推進(1-2-(1)再掲)
- 福祉サービスの苦情解決体制の推進
・かながわ福祉サービス運営適正化委員会では、苦情解決委員会による苦情への適切な対応や、運営監視委員会による日常生活自立支援事業の適切な運営確保に向けた運営確保にむけた実施主体および受託社協への実施状況調査等を実施しました。
推進の柱Ⅲ 福祉人材確保・育成・定着の推進
1 福祉人材の確保
- 福祉人材センターによる福祉の求職・求人支援
・福祉人材センターでは、無力職業紹介事業による就労相談等を実施するとともに、当該地域の介護福祉施設等の協力を受け、横浜市、川崎市を除いた県内を4ブロックに分け、相談等の地域展開を図りました。また福祉人材センターの認知向上のため、地上波放送を利用したCMの放映やWeb広告、Instagramなどを使った広報活動を行いました。
・社会資源とつながる事業展開としては、介護福祉士等の潜在有資格者にむけ、「認知症ケア」をテーマとした5日間のセミナーを県介護福祉士会、地域の社協、社会福祉法人と協働し、有資格者再就労支援事業を行いました。・第3期2年目となる神奈川県介護人材確保推進会議では、介護人材確保・定着・育成をテーマとして、職員育成状況把握等各種調査を実施し、推進会議や検討部会・ワーキングでの検討内容をフォーラムやポータルサイトで発信するとともに、報告書としてとりまとめ発行しました。
- 福祉・介護の仕事の理解促進
・令和6年度から受託した「介護助手普及推進員配置事業」では、介護助手を導入している法人・事業所のヒアリングを行うとともに、就職支援ガイダンス等の機会を活用し、介護助手に関する求職者の意識調査を実施しました。また、中高年者層が中心となるセカンドキャリア層等へ介護助手に関する啓発や情報提供などのアプローチに努めました。
・福祉や介護の仕事の理解を進め、将来の職業の選択肢となるよう、中学生・高校生向け福祉の仕事案内パンフレットを配布しました。また、高校生のインターンシップの受け入れ可能な施設を調査し、ホームページ等を介して情報提供を行いました。
・地域展開した就職相談会とあわせ、キャリア支援専門員による就職ガイダンスの他、当該地域の福祉施設と連携し、仕事の具体的な内容、やりがい等について話を聞く場を設けました。また、大学・養成校や介護に関する入門的研修等において、ガイダンスを実施しました。
- かながわ保育士・保育所支援センター事業の運営
・保育士・保育所支援センターによる就労支援事業として、合同就職相談会や就職支援セミナー、資格保有者未経験者や資格取得を検討している人などを対象としたセミナー等を実施しました。
- 各種貸付事業を通じた資格取得支援・有資格者の就労支援の実施
・介護人材の確保に向けて、介護福祉士養成施設等に通う学生等に対し、修学資金等の貸付を行いました。
2 福祉事業従事者の育成
- 福祉人材育成研修の充実
・全社協がすすめる「福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程」を基幹研修とし、職務別課題研修、および階層別課題研修等の自主研修を実施し、延べ2,230名が受講し、福祉従事者のキャリアパス形成、スキルアップに寄与しました。
・介護支援専門員の研修カリキュラムに向けて、実務研修プロジェクト、専門・更新研修プロジェクトを設置し、研修内容の検討と研修テキストを作成しました。
- 福祉・介護事業者等の人材育成の取り組みの支援
・法人・事業所のキャリアパスに応じた人材育成に向けて、県内で行われる従事者向け研修の情報提供を行いました。また、研修効果の把握と職場のフォローアップのため、研修実施後の振り返りを行いました。
- 資格取得支援に向けた取り組みの実施
・介護支援専門員証の有効期限が切れた方に対する再研修や、実務未経験者に対する更新研修を実施し、介護支援専門員の確保に努めました。
推進の柱Ⅳ 県社協活動基盤の充実
1 課題共有の促進と提言
- 情報発信と提言活動
・本会ホームページでは、新たなコンテンツ「かながわふくしのギャラリー」を制作し、民生員・児童委員、社会福祉法人・施設、市町村社協、ボランティア等の多様な実践活動を紹介しました。
・政策提言活動では、引き続き喫緊の課題となっている人材確保をはじめ、福祉教育宇ア物価高騰に対する支援の必要性等を提言としてとりまとめ、提言しました。
・教育資金等の負債を抱える若者が将来、社会的孤独・孤立につながらないよう、生活課題の把握に向けて関連団体のヒアリングを行い、広域的見地から発信する情報について、検討を行いました。
・改定計画の初年度となった令和6年度は、計画推進委員会において、進捗状況や事業実施上の課題を共有するとともに、福祉教育を推進するため、学校の中の福祉教育の現状について教育分野から報告を受け、意見交換を行いました
2 組織・活動基盤の整備
- 組織・活動基盤の強化
・会員の加入促進に向けてチラシのコンテンツ・デザインを一新しました。賛助会員については呼びかけ先を工夫し、直近3年間の平均を上回る77口(54団体)の加入がありました。
・令和8年度の受け入れを目指し、社会福祉士実習受け入れ体制整備に関する局内プロジェクトを実施しました。
令和7年度は「神奈川県社会福祉協議会推進計画(令和6年度から令和10年度)」の2か年目となります。計画の推進にあたり、これまで以上に本会会員各位、関係者の皆様からのご協力・ご参加をいただきながら取り組んでいく所存でございますので、より一層のご指導を賜りますようお願い申し上げます。
社会福祉法人現況報告書
本会では、毎年、社会福祉法第59条及び社会福祉法施行規則第9条の規程に基づき、組織概要、事業概要、財産の所有状況等をまとめた「社会福祉法人現況報告書」を所轄庁に提出しています。 報告書類はWAM NETのホームページからご覧いただけます。