福祉タイムズ

Vol.887(2025年10月号)

このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.887(2025年10月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。

テキストデータ作成に当たって
 このデータは、『福祉タイムズ』 vol.887 2025年10月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
 二重山カッコは作成者注記です。

P1
福祉タイムズふくしTIMES
2025.10 vol.887
編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会

Contents
特集 P2 令和7年度社会福祉制度・施策に関する提言
NEWS&TOPICS P4 成年後見制度の見直しに関する動向 みなと横浜法律事務所 弁護士 内嶋順一
みんなの防災ノート P6 災害時に誰ひとり取り残さない福祉を目指して 県地域福祉課災害福祉グループ
県社協のひろば P8 2040年を魅力的な福祉・介護の未来に変える -第22回かながわ高齢者福祉研究大会
information P11 福祉タイムズ・リニューアルへのアンケートにご協力をお願いします!

ついに次号は創刊888号!

今月の表紙
特別養護老人ホーム栗原ホーム管理栄養士の増田真希子さんと、おやつのゼリーを楽しむ山口祥太郎さん。
栗原ホームでは、毎日手作りの食事やおやつを提供しながら、施設内での食品ロスゼロに挑戦。その工夫が、利用者の健康と笑顔にもつながっている。詳しくは12面へ→(撮影:後藤京子)

P2
特集
令和7年度社会福祉制度・施策に関する提言
神奈川における福祉現場の課題解決と福祉サービスの充実に向けた現場からの発信
 本会では、平成23年度より政策提言委員会(以下、委員会)を設置し、福祉現場が直面する課題や取り組みを福祉関係者から集め、提言として取りまとめています。
 提言の背景にある課題は、本会会員である社会福祉法人・施設・事業所、民生委員・児童委員、市町村社協、当事者団体等の福祉関係団体に向けたアンケート調査と、各代表者との意見交換を通じて把握します。そして、関係者の声から、現行の福祉制度・施策では対応しきれない課題や、分野を超えて連携して取り組むべき活動等が見えてきます。本号では、令和7年度にまとめた政策提言の概要についてご紹介します。

福祉従事者の処遇改善が急務
 福祉従事者の給与水準は全産業平均と比べると、いずれも月収で数万円の差があり、この差は年々拡大しています。図1 今後、福祉サービスの維持・確保をしていくためには、他産業と遜色のない給与水準の実現や処遇改善加算の拡充、物価高騰への対応などを通じて福祉従事者の処遇を改善することが不可欠となっていることから「全福祉従事者の処遇改善」を提言の内容の一つとしました。
 さらに、提言の内容には、外国人を含む多様な人材の参入促進や、福祉サービスだけでなく、将来の社会の担い手を育てるため、子どもの頃から高齢者や障害のある人との関わりを深めるインクルーシブな環境の整備や、小中学校で行われるキャリア教育に福祉の現場と交流を図りながら福祉の仕事を知る機会を充実させること等を含めました。

〈グラフ〉
図1 全産業平均給与と福祉従事者給与(月収)
〈グラフ終わり〉

〈囲み〉
令和7年度 政策提言集の内容
政策提言の経緯と主旨
第1部 政策提言
1 いのちと生活を支える福祉サービスの維持・確保
  全福祉従事者の処遇改善、社会保障制度の財政基盤強化、福祉人材の確保(将来の担い手へのアプローチ、仕事の魅力・やりがいの発信、多様な人材の参入促進)
2災害福祉支援活動の推進
  被災住民への支援活動の強化、大規模災害時の要支援者情報共有システムの構築、福祉施設の災害時対応の向上
3 身寄りのない高齢者・障害のある人等への支援
  総合的な権利擁護支援パッケージの構築、日常生活自立支援事業の安定的な運営基盤のための財源確保
4 地域共生社会の実現に向けたつながりづくり
  包括的支援体制の構築、民生委員・児童委員の確保

第2部  共通目標 これからの神奈川の福祉のあり方

第3部  各部会・協議会・連絡会の課題、制度・施策に求めること

政策提言集の詳細は本会HPよりご覧ください
https://knsyk.jp/proposal/seido_sesaku
〈囲み終わり〉

3P

平時から災害時に備えた福祉支援体制の強化
 令和6年1月の石川県能登半島地震や同年8月の本県内台風10号による被害などは記憶に新しく、被災された住民を支える福祉の役割がますます重要になっています。改正災害救助法では「福祉サービスの提供」が救助の種類の一つとして位置づけられましたが、具体的な対象や内容はいまだ不明瞭です。社協等が担う災害ボランティアセンターの安定的な運営、職員派遣など多様な支援を含め、明確な位置づけと財源措置が求められています。現在、災害ボランティアセンターの運営費は時間外の人件費や旅費の一部しか国の災害救助事務費の対象となりません。安定的な運営に向けて、平時から担当職員を配置するための財源や資機材の確保などが不可欠です。さらに、被災地の市町村社協への応援職員派遣や、災害派遣福祉チーム(DWAT)の派遣において、被害規模が大きく、都道府県を超える派遣が求められる場合、国や全社協が司令塔機能を発揮し、迅速な支援・受援体制を構築することも急務です。災害時に誰一人取り残さないために、支援のモレ・ムラをなくすための体制づくりが必要となることから、提言として「災害福祉支援活動」をテーマにまとめました。
 このほかの提言についてもぜひ本会HPからご覧下さい。

令和8年度に向けて
 より実効性のある提言活動とするため、令和8年度は、県の政策の方向性や主要課題の調整の検討時期に合わせ、5月に提言集の手交を目指します。
 本会では、今後も人々が社会的なつながりの中で、生き生きと生活することのできる社会のあり方を議論し、政策提言を通じて、ともに生きる社会づくりを進めていきます。(企画課)

〈写真〉
左から兵藤本会副会長、小泉本会会長、川名県福祉子どもみらい局長、三澤本会副会長
令和7年8月29日、政策提言集を県に手交し、提言内容について意見交換を行いました
〈写真終わり〉

P4
NEWS&TOPICS
成年後見制度の見直しに関する動向~法制審議会中間試案から見えてくるもの
 みなと横浜法律事務所 弁護士 内嶋順一
 現行の成年後見制度が施行されてからはや四半世紀が経ちました。その間、我が国では、さらなる超高齢社会や高齢者の孤立化が進むとともに、判断能力に課題がある障がい者の、家族支援が見込まれなくなった後の課題などが山積している状況です。成年後見制度は、財産管理や身上保護を柱として、判断能力に課題がある方の支援の一翼を担う制度として認知されてきました。

制度見直しの背景
 一方、全国で成年後見制度を利用している方は、令和6年12月末日時点で25万3941人に止まっています。成年後見制度の潜在的な利用者はもっといるはずなのに、制度の利用が進んでいない点が問題視されたことから、国は成年後見制度利用促進基本計画を定めて、中核機関の整備など成年後見制度の利用促進を図る施策を進めてきました。
 また、①法定後見では広範な同意権や取消権が認められやすく、後見類型では後見人に当然に包括的な代理権が与えられることから権利侵害的な制度(国連の障害者権利委員会の総括所見でも「意思決定を代行する制度を廃止する観点から、全ての差別的な法規定及び政策を廃止し、全ての障害者が法律の前にひとしく認められる権利を保障するために民法を改正すること」との勧告がなされています)であるとか、②たとえば判断能力に課題がある障がい者が、相続手続でやむなく成年後見制度の利用を開始したものの、相続手続が完了しても判断能力が回復しない限り引き続き成年後見制度の利用を強いられる(やめられない成年後見制度)とか、③後見人等の解任は後見人等の欠格事由に当たることから簡単に解任することができない(変えられない成年後見人)等の批判がありました。
 こういった現行成年後見制度へのさまざまな批判や同制度を取り巻く動向を踏まえ、国は制度の見直しに着手し、現在、法制審議会の民法(成年後見等関係)部会において、法改正の議論が行われています。そして本年6月、改正案の下案とも言える中間試案が明らかになりました。
 そこで本稿では、中間試案の中でも支援者がもっとも影響を受けるであろう論点に絞って、現行成年後見制度の改正動向について紹介いたします。なお、制度見直しがなされた後は「成年後見制度」や「後見人」という呼称も変更される見通しであることから、以下、従来の法定後見に変わる新たな制度を「新制度」、新制度の利用者を「本人」、新制度において本人を代理等する者を「代弁者」と仮称することにします。

新制度の開始要件・効果等
 まず、新制度で大きく変わる可能性があるのが、①新制度の開始要件と効果(同意権・取消権・代理権の付与)、それとリンクする②代弁者の職務範囲と③新制度の利用を終了する場合という、3つの論点についてです。
 この3つの論点の背景には、本人の自律を重視する観点から、現行法定後見制度は廃止し、本人の同意を前提に、本人に必要な範囲で個別の法律行為について代弁者に最小限の権限を付与すれば足りるという考え方(乙1案)と、乙1案の考え方に加え、現行法定後見の後見類型を一部残し、現行法定後見の後見類型に該当するような本人について、必要性がある場合、代弁者に一定範囲の準包括的な取消権、同意権、代理権を付与するという2類型を採る考え方(乙2案)があり、このどちらを選択するかによって、①~③の論点の結論も異なるという流れになっています(なお現行成年後見制度を基本的に維持するという考え方もあるのですが、ここでは割愛します)。
 まず乙1案の考え方を踏まえた場合、①新制度の開始要件と効果について、本人の判断能力に課題がある場合、請求により、家庭裁判所が必要であると認めた場合(必要性の要件)、特定の法律行為について(個別性の要件)、代弁者に同意権や代理権を付与する審判ができるとし、いずれも原則、本人の同意等を要し(本人同意等の要件)、極めて例外的に本人の同意等を要しないこととなります。また、②代弁者の職務範囲も、大幅に縮小され、基本的には必要と認められた特定の法律行為にしか職務の範囲は及びません。また③新制度利用の終了についても、本人の判断能力回復による終了の他、制度利用の必要性が失われた場合も制度の利用を終了させることが可能となります。
 乙2案の考え方を踏まえた場合、①新制度の開始要件と効果について、乙1案の考え方に準じた類型(これをA類型といいます)に加え、現行法定後見の後見類型に該当するような本人について、請求により、家庭裁判所が必要であると認めた場合(必要性の要件)、新制度を「開始する」旨の審判が可能(自動的に代弁者選任)とし、一定範囲で本人が行った行為は取り消し可能となり、代弁者に一定範囲の代理権が付与される類型(これをB類型といいます)も認めることになります。乙2案は、このA・B2類型で構成される制度なので、②代弁者の職務範囲や③新制度の利用を終了する場合についても、A類型では乙1案の考え方に準じ、B類型ではA類型よりは職務範囲が広がり、新制度の利用を終了する場面にも若干の違いが生じます。

P5

新制度の利用期間と代弁者の交代
 次に、新制度の期間についてですが、制度に何らかの期間制限を設ける趣旨から、①あらかじめ新制度の存続期間を定めておき、その期間が経過すると原則制度の利用が終了し、例外的に期間の更新も可能とする案と②新制度利用から一定期間経過後に代弁者に制度利用の必要性等について報告を義務付け、その他の事情も含め、家庭裁判所が制度利用が不要と判断した場合に制度利用を終了させるという立場が示されています。
 次に代弁者の解任事由・欠格事由についての論点ですが、代弁者が本人や支援者と上手く連携できない等、必ずしもその事務に問題がない場合でも必要に応じて柔軟に家庭裁判所が代弁者の交代(解任)ができるよう、現行条文より解任事由を拡大したり、後見事務に著しい問題がない解任については欠格事由に該当しない旨条文を改める等の工夫で対応する立場が示されています。
 以上、中間試案において支援者に大きな影響を及ぼす論点についてお話しをしましたが、これからいよいよ具体的な法律案が固まり、来年には改正法が成立する見通しであることから、後見実務に携わる支援者は、引き続き制度改正の動向に注目をすべきでしょう。

〈QR〉
法制審議会民法(成年後見等関係)部会 詳細
〈QR終わり〉

P6
みんなの防災ノート
災害時に誰ひとり取り残さない福祉を目指して
―県地域福祉課災害福祉グループ
◦はじめに
 我が国では地震、風水害、大規模火災、噴火などさまざまな災害が発生しています。これまでの災害発生時には、高齢者、障がい者などの要配慮者の方々の逃げ遅れや、長期の避難生活を余儀なくされ、必要な支援が行われない結果、体調悪化や要介護度の重度化、最悪の場合には「災害関連死」といった二次被害が多く発生し、大きな課題となってきました。
 神奈川県では、これまでもさまざまな取組を行ってきましたが、令和7年4月から福祉子どもみらい局福祉部地域福祉課内に「災害福祉グループ」を新設して、さらなる取組を進めています。
 今回は国の法律改正の動きと、本県における災害福祉の取組について、皆さまにご紹介いたします。

 ◦令和7年災害救助法の改正による「福祉サービスの提供」の追加
 国は災害発生前から発生後まで、国や地方自治体などの各機関の対応について「災害対策基本法」等の法律において定めています。
 一方「災害救助法」は災害発生後の被災者の「救助」と「生活支援」に焦点があてられており、救助の種類に避難所の設置や、医療および助産の提供などが定められていますが、令和6年1月に発生した能登半島地震から得られた教訓を今後に生かし、災害対策の強化を図るため、令和7年7月の法改正により、新たに「福祉サービスの提供」が位置付けられました。
 内閣府の災害救助事務取扱要領においては「福祉サービスの提供」の範囲として、災害時要配慮者に関する「情報の把握」「相談対応」「避難生活上の支援」「避難所への誘導」「福祉避難所の設置」と定められています。
 これまでも災害時には、国からの通知に基づいて、福祉支援が実施されてきましたが、今回の法改正により「福祉サービスの提供」が位置付けられるとともに、災害時に福祉サービスの提供を担う活動に対する経費も災害救助費として位置付けられました。法律に位置付けられたということは、被災地で福祉支援が円滑に行われるよう求められているということでもあります。

 ◦「かながわ災害福祉広域支援ネットワーク」と「神奈川DWAT」
 これまで県では、大規模災害の発生に備え、福祉関係団体等と協働し、大規模災害時に要配慮者を支援するため、平成28年7月に「かながわ災害福祉広域支援ネットワーク」を構築しました。連絡会を年3回程度開催し、構成団体・自治体(県、指定都市)・事務局(神奈川県社協)の間で情報共有や意見交換などを行っています。
 また、大規模災害時に、一般避難所等における要配慮者の福祉ニーズに的確に対応し、避難中の生活機能低下等の防止を図りつつ、一日でも早く安定的な日常生活へと移行できるよう、必要な支援を行う福祉専門職等で構成する「神奈川県災害派遣福祉チーム」(以下、神奈川DWAT)を設置しています。
 令和7年9月時点で、社会福祉士や介護福祉士、ケアマネジャー、理学療法士など330名の専門職がチーム員に登録しています。能登半島地震では、神奈川DWATとして初めて被災地での活動を行い、金沢市および輪島市に合計21名を派遣し、避難者のアセスメント、避難生活後の支援調整、なんでも相談窓口での対応などの支援を行いました。
 神奈川DWATでは発災に備えて訓練を重ねるとともに、多くの方にDWATを知っていただきたいと考えています。今年は川崎市、平塚市が主催する避難所の運営訓練において、神奈川DWATチーム員登録者が、避難者役への聞き取りを踏まえたアセスメントおよび支援検討を行う訓練を実施しました。
 また、DWATの重要な役割として、一般避難所での生活が困難な方を福祉避難所へ誘導するためのスクリーニングがあります。その際には、福祉避難所がどのような場所であり、どのような環境であるかを知っておくことが大切になります。そのため、今年度神奈川DWATは、県立茅ケ崎支援学校の福祉避難所資機材組立訓練に初めて参加し、教職員との情報交換を実施しました。

〈写真〉
茅ケ崎支援学校での訓練のようす
〈写真終わり〉

P7

◦避難行動要配慮者名簿と個別避難計画
 災害時に速やかに避難するためには、事前の備えが重要です。個別避難計画(以下、計画)は、例えば「どの経路でどこに避難するか」「誰が避難を支援するか」「どのような配慮が必要か」などをあらかじめ決めておき、スムーズに避難するための計画です。
 災害対策基本法により、市町村では地域防災計画において避難行動要支援者(災害時に自ら避難することが困難で、円滑かつ迅速な避難の確保を図るため、特に支援を要する方)の範囲を定めて、名簿を作成することが義務となっています。市町村によって避難行動要支援者の範囲は異なりますが「障害者手帳の等級/要介護度/1人暮らしをしている」などが基準になります。
 そして、避難行動要支援者名簿に載っている方のうち、計画作成に同意した方を対象に作成します。
 本県は令和7年4月時点で、県内市町村の計画作成率が2・2%と、全国最下位となっており、作成が進んでいないことが課題となっています。一方で、令和6年台風10号発生時には二宮町で計画を作成していた方が、速やかに避難をすることができたなど、計画作成が実際の避難行動に繋がった事例も生まれています。
 県では、これまで防災・福祉の担当職員による市町村の個別訪問、定期的な市町村担当者会議の開催など、市町村の計画作成を支援してきました。今後も、県と市町村との情報共有等を密に行いながら、課題の解決に向けて取組を進めていきます。
 県内ではケアマネジャーや相談支援専門員などの福祉専門職や民生委員・児童委員などが協力して計画作成のサポートを行っている自治体もあります。計画の作成に向けて、皆さまのご協力をお願いします。

◦福祉避難所
 福祉避難所は、高齢者や障がい者など、要配慮者のために、バリアフリー化され、多目的トイレなどが整備された社会福祉施設等を利用して開設される避難所です。
 一般の避難所は、段差や狭い空間、騒音など、要配慮者にとって生活が困難な環境となることがあります。県では市町村担当者会議を毎年開催するなど、市町村の福祉避難所の設置や体制整備を促進しています。
 市町村によって異なりますが、福祉避難所が、災害発生直後から開設される例は少なく、まずは地域の小中学校の体育館や公民館等の避難所に避難し、その後、要配慮者を福祉避難所へ誘導する流れを、多くの市町村が想定しています。
 令和6年11月時点で、県内の指定福祉避難所は156カ所、福祉施設等と協定を締結などしている福祉避難所が1647カ所あります。
 しかし、実際に福祉避難所の開設・運営訓練をしたことがないというところも多いのが実情です。県では今年度、福祉避難所の開設訓練を支援する事業を実施して、災害時に速やかに福祉避難所を開設・運営できるように支援しています。

〈写真〉
平塚市での福祉避難所訓練のようす
〈写真終わり〉

◦おわりに
 災害は、いつ起きるかわかりません。まずは、自らの命を守る「自助」が大切であり、自らの積極的な取組が不可欠です。そして「共助」として、平時から地域における互いの顔の見える関係づくりが、災害時の速やかな避難行動や助け合いに繋がっていきます。さらに「公助」として避難所の開設や福祉サービスの提供などが行われます。
 県地域福祉課災害福祉グループでは、さまざまな施策を庁内外で横断的に推進し、多様な方々と顔の見える関係をつくりながら、災害時に誰ひとり取り残さない福祉を目指して取組を進めていきます。(県地域福祉課災害福祉グループ)

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神奈川県災害時福祉支援ポータルサイト
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県社協のひろば
2040年を魅力的な福祉・介護の未来に変える―第22回かながわ高齢者福祉研究大会
 去る7月2日、パシフィコ横浜(横浜市西区)にて「第22回かながわ高齢者福祉研究大会」を開催しました。
 この大会は、高齢者福祉に関わる実践活動や取り組みの発表を通して、ともに学び合い、高齢者福祉の最前線の取り組みを社会に発信することを目的として、本会老人福祉施設協議会会員施設の参加と、実行委員会の運営により開催しています。
 当日は学生や教職員159名を含む、延べ700名以上が来場し、ともに研鑽を深める場となりました。

第22回大会の開催に向けて
 平成15年から始まった本大会ですが、第22回大会の開催に向けては、前回大会終了後「かながわ高齢者福祉研究大会 今後のあり方検討会」を5回開催し、1年にわたり議論を重ねました。
 本検討会により、大会は隔年実施とし、大会の目的・目標を再確認しました。第22回大会においては、今後の高齢者福祉の発展に必要な要素を考え、社会に高齢者福祉の取り組みを発信する「新たなカタチ」として再出発することとなりました。

新たなカタチでの開催
 第22回大会は「2040年を魅力的な福祉・介護の未来に変える」をテーマに、2040年はどのような時代になり、その時代に各施設はどう動いていくのかを各発表者に考えてもらい、各々が未来を見据えた演題を設定し、発表しました。
 本大会のプログラムは「研究発表」36題、「介護技術発表」9題、「協賛企業ブース」45ブース37企業(配布資料への広告掲載の協賛企業を含めると46企業)で構成されています。
 「研究発表」は、県域、横浜市、川崎市、相模原市の各ブロックからの推薦制とし、選抜された質の高い発表がされました。
 4会場(1会場9題)に分かれて発表が実施され、認知症ケアや排泄ケア、食事、地域連携、人材確保・育成やICTの活用、DX化等、15年後の未来を見据えたさまざまな研究発表がありました。
 また、新たな取り組みとして、当日の発表を聴講できなかった方に向けて、事前に各発表者が作成した動画を8月1日から31日までの期間限定でアーカイブ配信しました。
 各会場で最高得点を獲得した優秀賞の演題の中から、実行委員会にて最優秀賞(県知事賞)を選出し、11月1日開催の「介護フェアinかながわ」で表彰されることが決定しています。▽最優秀賞受賞「栗原ホーム」の実践は本紙12面をご覧ください

〈表〉
研究発表 テーマ一覧(36題) ◎最優秀賞、○優秀賞
発表テーマ→施設名
特別養護老人ホームにおける食品ロスゼロへの挑戦→特別養護老人ホーム栗原ホーム ◎
自立排泄の重要性→特別養護老人ホームシャローム ○
多様な人材登用のために必要なこと→(一社)相模原市高齢者福祉施設協議会 ○
わたしたちの“想い”をかなえる第1歩→横須賀老人ホーム ○
施設で最期を迎えることの意義→特別養護老人ホーム秦野陽光園
立てる!歩ける!転ばない!→介護老人福祉施設わかたけ都筑
褥瘡ゼロを目指して→特別養護老人ホーム弥生苑
摂食困難事例をふりかえって→特別養護老人ホーム芳徳の郷ほなみ
入浴・トイレ拒否の多い方への取り組み→特別養護老人ホームふれあいの泉
「入る入浴」から「入りたい入浴」へ→特別養護老人ホームレジデンシャル常盤台
心をつなぐバリデーション→特別養護老人ホーム新緑の郷
道具がなくても始められる→特別養護老人ホーム片平長寿の里
「思い出」を紡ぐ便り→特別養護老人ホームレジデンシャル常盤台
マクドナルドをもう一度食べたい!→特別養護老人ホーム第二森の里
ビアガーデン常盤台→特別養護老人ホームレジデンシャル常盤台
A Day In The Day→デイサービスセンター天王森の郷
従来型施設での排泄ケア改善の取り組み→介護老人福祉施設わかたけ富岡
ピンチをチャンスに変える→奉優デイサービスセンター北
『あつまれ!なみき』で紡ぐ未来→横浜市富岡東地域ケアプラザ
ケアプラザのつながりを活かした子ども支援→横浜市六角橋地域ケアプラザ
Let’sキャリア別教育!→特別養護老人ホームかりん
養護老人ホーム相談員の気づき→神奈川県高齢者福祉施設協議会 養護老人ホーム部会
若者が物申す!第2弾→特別養護老人ホーム白寿荘
働きがいのある魅力的な職場作りのために→介護老人福祉施設わかたけ鶴見
職員の力を最大限に引き出す組織構造改革!→特別養護老人ホーム夢見ヶ崎
参加型研修の継続によりチーム力アップ→かないばら苑ヘルパーステーション
人材確保に繋がるかもしれない妄想と考察→特別養護老人ホーム青根苑、中の郷
介護助手の雇用推進について→特別養護老人ホーム稲村ガ崎きしろ
社会福祉法人がすすめる「福祉DX」について→若竹大寿会法人本部
少人数オペレーションにより見えた介護の未来→介護老人福祉施設わかたけ南
未来に届け 縁JOY YouTube→特別養護老人ホーム縁JOY
特養利用者紹介事業者の導入→特別養護老人ホームモモ
外国人介護人材の活用→特別養護老人ホーム等々力
入所者様とともに非常災害を考えていく→特別養護老人ホーム高根台ホーム
給食事業直営化によるコスト削減と品質維持→特別養護老人ホームはあとぴあ
多様な仲間と共に創る未来→特別養護老人ホームカトレアホーム
〈表終わり〉

P9

動画活用で多様な発表が可能に
 「介護技術発表」は発表形式を改め、従来通りの介護技術の実演型、事前に撮影した動画やスライドを用いた動画型の2つから選択できるように工夫しました。動画型の発表により、会場での実演が難しいレクリエーションや研修内容等に関する発表も可能となり、表現の幅が広がりました。発表ごとに有識者より支援のポイントを解説いただき、さらなる介護技術向上につながる貴重な意見やアドバイスがありました。

〈表〉
介護技術発表 演題一覧(9題)
発表演題→施設名→発表方法
ICT化と効率UPの実践~人と機器、互いの強みを生かしたケア~→特別養護老人ホームカトレアホーム→実演
ICT・ロボット導入と効率アップの取り組み→特別養護老人ホーム新横浜さわやか苑→動画
帰宅願望があり、昼夜逆転傾向の方への接し方→寒川ホーム→実演
やり方を伝えない介護技術 地域施設合同で取り組む研修の意義とは→小田原足柄地区介護責任者連絡会→動画
持ちあげない介護~人の自然な動きに逆らわない介護→えびな南高齢者施設→実演
オムツセンサーによる排泄ケアの見直しとその先へ→寒川ホーム→実演
骨格の違いに着目した「GIFT式介護技術」を用いた移乗介助→特別養護老人ホーム夢見ヶ崎→実演
季節を感じ、運動機能も生かした、職員と一緒に楽しむレクリエーション→特別養護老人ホーム泉の郷→動画
重度認知症の利用者に、機能訓練を通し周辺症状の改善を図る。→ボーナビール二本松ケアセンター→実演
〈表終わり〉

協賛企業の広がりと交流の促進
 協賛企業ブースでは、最新の福祉用具や介護ロボットの展示、外国人材の相談、マッサージ器具の体験等のさまざまなブースが出展しており、発表会場と並んで、企業ブースにも多くの方が訪問し、大きな賑わいを見せていました。
 本大会からの新たな試みとして、発表の休憩時間および大会のSNSにて企業CMを放映することで、大会への協賛に新たな価値を付加しています。
 参加した企業の担当者からは「来場者や他の企業と知り合うことができ、大変勉強となった」といった声が聞かれました。

 今大会では高齢者福祉・介護分野における新たな知見と熱意を共有する貴重な機会となりました。
 老人福祉施設協議会では、ここで得られた経験と成果が、現場の「質」を高める確かな力となるよう、会員施設や関連機関・団体との連携をさらに強化し、大会の継続的な取り組みに活かしてまいります。
 第23回大会は2年後の令和9年7月7日に開催する予定です。より実りある大会となるよう準備を進め、高齢者福祉・介護分野の持続的な発展に貢献してまいります。
 大会についての最新情報は大会ホームページや各種大会SNSで発信いたします。ぜひご覧ください。(福祉サービス推進課)

〈写真〉
第22回大会 フォト・コレクション
研究発表
700名を超える方が参加し、学びを深める機会となりました

介護技術発表
座席の追加が必要になるほどの盛会となりました!

研究発表者・介護技術発表者に奨励賞を授与

協賛企業ブース
〈写真終わり〉

〈QR2種〉
大会の最新情報はHP、SNSで発信しています 大会ホームページ 大会Instagram
研究発表36題の抄録はこちらからご覧ください
〈QR2種終わり〉

P10
私のおすすめCHECK!
◎ このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者等の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。
トランポリンって、楽しいんです!
 トランポリンは足だけでなく腰・お尻・背中・お腹でも跳ねられるので楽しみ方は無限大!
 高く飛ぶのも爽快だし、寝転がって揺らしてもらうのも気持ちいい!
 歌いながら、踊りながら…自由に跳んでストレス発散できます。
 興味のある方はぜひ体験してみてください。

今月は→神奈川県自閉症協会 がお伝えします!
 1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内10地区の自閉症児・者親の会による連合会です。
 行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。
〈連絡先〉
Mail:info-kas@kas-yamabiko.jpn.org HP:https://kas-yamabiko.jpn.org

サークル誕生のきっかけと今の活動
 トランポリンサークル「クローバー」は、県立相模原養護学校(現相模原支援学校)で保護者が立ち上げた校内サークルとして始まりました。まだ「放課後等デイサービス」が制度化される前のこと、放課後の過ごし方は親にとって本当に悩ましい問題でした。
 そんな中、我が子も小学部の頃から参加させてもらい、気づけばもう19年。今では28歳になりました。ずっと指導してくださっている神奈川県トランポリン協会の永田敏雄先生には、感謝しかありません。
 現在は活動場所を座間市立市民体育館に移し、座間市を中心に、相模原市や海老名市から集まった知的障がいのある子ども・大人16名が所属。月に2〜3回、木曜の夕方に活動しています。
 「神奈川県スペシャルトランポリン交流大会」には第1回から昨年度の第13回まで毎年出場。今年ももちろん参加予定です。全国大会にも何度かチャレンジしています!

続けることで見えてきた成長
 最初は順番を守るのも一苦労、待ち時間に飽きてしまう子も多く、跳ぶときも自由気ままにピョンピョン。
 そんな中でも、先生の声に耳を傾けて、少しずつ技を覚えていく子もいました。我が子は空中で独特な動きをしながら大きな声を出して跳び続けるタイプで、「技なんて到底無理…でも楽しそうだし、まあいいか」と参加し続けました。
 それが4〜5年経ったある日、突然「座って立つ」「ひねる」などの技をやり始め、実は先生の指示も仲間の動きもちゃんと見ていたんだなと嬉しい驚きもありました。

〈写真〉
こんな技もできるようになりました!
〈写真終わり〉

 言葉でのコミュニケーションが難しい子も多いですが、先生の自然な指導のおかげで、時間はかかっても少しずつ技を覚えていきます。気づけば順番を守れるようになり、待ち時間も自分なりに過ごせるように。終わったら体育館のモップがけまで自主的にやるようになりました。
 大会ではハプニングもありましたが、10年も続けていると見通しが立てられるようになり、結果もついてきて入賞・優勝も!続けるモチベーションにもなっています。(とはいえ、今でも当日はハラハラドキドキですが…)
 クローバーが参加している「スペシャル交流大会」は、演技のレベルに応じたクラス分けがあります。宙返りを含む演技構成のクラスから、5つの技を披露するクラス、技ができなくても練習の成果を見せる「発表の部」まで、誰でも参加できるのが魅力です!

これからもずっと続けたい!
 クローバーの活動は「親子参加」が基本。準備や片付け、子どもの安全のための見守りもみんなでやります。跳ぶのは子どもたちですが、下で声をかけたり、ビデオを撮って見せたりと、親子一緒に楽しんでいます。
 親御さんの協力は欠かせませんが、今では、学校を卒業しても仲間と会って楽しめる場があることが、親子ともに大きな支えになっています。情報交換(という名のおしゃべり)も大事な時間です。
 年齢を重ねるとスポーツをする機会は減ってしまうので、余暇を楽しむためにもクローバーの活動はこれからもずっと続けていきたいと思っています。

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トランポリンサークル「クローバー」
連絡先 FAX 046-257-9029
代表 篠原明美
「クローバー」は(公財)神奈川心身障害児福祉基金財団の助成を受けています
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information
福祉タイムズ・リニューアルへのアンケートにご協力をお願いします!
 「さらに読みやすく、役立つ」紙面を作るため、福祉タイムズ・リニューアルに向けたアンケートを行います。
 次の二次元コードより簡単にご回答いただけます。ぜひお気軽にご参加ください。
 ご回答いただいた方の中から抽選で30名様に、Amazonギフトカード(500円分)をプレゼントいたし ます。
 回答時間(目安)=約3分
 回答期限=2025年12月26日(金)予定

ついに次号は創刊888号!
 本会設立年(昭和26年)から発行を続けてきた本紙は、2025年11月号で創刊888号を迎えます。記念号として、全ページフルカラーの特別号を編集中です!どうぞご期待ください!
◇特別インタビュー
 8年前(2017年)の表紙を飾った方の“今”を取材しました。
◇クイズに挑戦してプレゼントゲット!
 神奈川の地域や福祉にまつわるクイズを出題。正解された方の中から抽選で素敵なプレゼントも!

役員会の動き
◇理事会=9月2日(火)①理事候補者の推薦②顧問の選任③令和7年度県社協会長顕彰候補者の審査④育児介護規程の一部を改正する規程(案)⑤資金運用計画にかかる投資有価証券の買替⑥評議員会の決議の省略の実施

本会主催の催し
令和7年度経営支援研修会(高齢分野)(対面・グループワーク)
◇テーマ=自法人の安定的・永続的経営に向けた課題を考える~組織として取り組むべき「中長期計画」について~
◇日時=11月25日(火)14時~17時
◇対象=本会経営者部会会員(理事長・事務長・施設長の経営管理者等)
◇参加費=会員8,000円(1分野、施設毎)※共通研修【基礎】をご受講いただいた方は、参加費6,000円
◇申込期限=11月11日(火)
詳細はHPを確認
HP: http://knsyk.jp/service/keieishien/kensyu
◇問合せ=福祉サービス推進課
TEL 045-534-5662 Mail:sisetu@knsyk.jp

地域生活施設協議会主催
地域づくりに携わる福祉従事者のための“かたりば”
◇日時=令和7年12月2日(火)13時30分~16時30分
◇会場=TKPガーデンシティ横浜
◇対象・定員=福祉従事者・20名
◇参加費=無料
◇申込期限=11月10日(月)
◇内容=日々の実践の悩みや考えていることを持ち寄って、分かち合うことから、明日の実践のヒントを探します。
詳細はHPを確認
HP:  https://knsyk.jp/service/keieisha-bukai/about/chiiki-seikatu
◇問合せ=福祉サービス推進課
TEL 045-534-5662 Mail:sisetu@knsyk.jp

関係機関・団体主催の催し
AA(アルコホーリクス・アノニマス)広報フォーラム
 地域における社会資源としてのAAの活用「アルコール依存症からの回復」
◇日時=令和7年11月19日(水)13時30分~16時30分
◇場所=横浜市開港記念会館 1号室
◇参加費=無料(申込不要)
詳細はURLから確認
HP:https://knvc.jp/activities_event/7518/
◇問合せ=AA横浜地区メッセージ委員会(広報活動実行委員会)
TEL 03-5957-3506

寄附金品ありがとうございました
【ともしび基金】神奈川県立鎌倉支援学校、(一社)タカナシ食と人を育む会、葛の湯、栗田航伎、古口玲斗
【交通遺児等援護基金】(株)エスホケン、藤尾はるみ、(一社)タカナシ食と人を育む会
【子ども福祉基金】(株)エスホケン、脇隆志、(一社)タカナシ食と人を育む会
以上、合計11件224,501円
【寄附物品】(公財)オリックス宮内財団、(公財)報知社会福祉事業団、田村武司
【ライフサポート事業】〈寄附物品〉(N)セカンドハーベスト・ジャパン

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かながわほっと情報
みんなで挑む、栄養満点・おいしい「食品ロスゼロ」革命
特別養護老人ホーム栗原ホーム(座間市)
第22回かながわ高齢者福祉研究大会 最優秀賞(県知事賞)受賞
 2025年7月2日に開催された「第22回かながわ高齢者福祉研究大会」(関連記事:本紙8-9面)にて、特別養護老人ホーム「栗原ホーム」が「特別養護老人ホームにおける食品ロスゼロへの挑戦」をテーマに研究発表を行い、最優秀賞(県知事賞)を受賞しました。今回は、発表を行った栗原ホーム 管理栄養士の増田真希子さんにお話を伺いました。

“もったいない”を“安全・おいしい”に
 栗原ホームの食事・おやつはすべてホーム内の直営厨房で手作り。地元農家から仕入れる新鮮な野菜を使い、既製品や冷凍食品の使用は極力控えるなど、安心しておいしく食べられる工夫を続けています。
 手作りの良さは、栄養バランスや飲み込みやすさなどを調整しながら提供できることにあります。一方で、調理の過程で野菜の皮や芯、葉や、食パンの耳といった食品廃棄物が多く出てしまう課題もありました。
 「廃棄品がゴミ箱に山積みになっているのを見て、『もったいないよね』『何かに活用できたら良いのに』といった声が挙がっていました。近年食材費が高騰していることもあり、使えるものはできる限り活用して、食材費や廃棄量を少しでも抑えたいという想いから、2年ほど前に食品ロスゼロに向けた取り組みを始めました。高齢の方向けに、噛みやすさや飲み込みやすさなど安全面に配慮しながら、廃棄していた部分をいかに活用できるかが大きな課題でした」と増田さんは語ります。

みんなの工夫で、栄養まるごと
 廃棄していた食材を有効活用するため、厨房職員だけでなく他部署の職員からもアイデアを募ったそうです。
 増田さんは「みかんの皮は細かく刻んでミカンピールにし、パン生地に練り込み(写真①)、食パンの耳は細かくしてマーガリンや牛乳などと混ぜ、タルト生地に活用しました。通常の生地よりも柔らかくて噛みやすく、見栄えも良いので、ご利用者様から特に人気のメニューになりました(写真②)。さらに、野菜の廃棄部分を活用して、お好み焼きやご飯のお供などの新メニューを開発しました。調べてみると、その部分には高齢者に不足しがちな栄養が多く含まれていることが分かり、活用の重要性を強く感じました」と話してくださいました。

〈写真3点〉
栗原ホームのインスタグラムでは、日々の食事やおやつの写真を投稿しています!
「農家さんから、傷んで市場へは出荷できない野菜をいただいて、調理に活用することもあります」と話す増田さん
〈写真3点終わり〉

力を合わせて、思い込みの先へ
 「以前は『廃棄して当たり前』という思い込みがあり、諦めてしまっている部分もありました。ですが、視点を変え、廃棄していた食材をどうすれば活用できるかを多職種で話し合うことで、職員の意識も少しずつ変わっていきました。法人全体で問題解決に対する取り組みの意識が高いので、今後も職員一丸となって挑戦していきたいです」と、増田さんは未来へ向けた想いを語ってくださいました。

〈囲み〉
最優秀賞(県知事賞)の表彰は、11月1日に新都市ホール(そごう横浜店)で開催される「介護フェアinかながわ」にて行われる予定です。
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「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
バックナンバーはHPから
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【発行日】2025(令和7)年10月15日(毎月1回15日発行)
【編集・発行】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
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【印刷】株式会社神奈川機関紙印刷所


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