福祉タイムズ
Vol.899(2026年10月号)
このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.899(2026年10月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。
テキストデータ作成に当たって
このデータは、『福祉タイムズ』 vol.899 2026年10月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
二重山カッコは作成者注記です。
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今月の表紙
大磯町にある子どもの居場所 ほとりで開催された「夏休みチクチクワークショップ」(撮影 後藤京子)詳細は次のページから
Contents
特集 「知る」からつながる かながわ福祉人材センターの人材確保・定着支援
NEWS&TOPICS 介護現場を支えるハラスメント対策-県高齢福祉課
県社協のひろば 「かながわの仲間」と原点に立ち返る 新任福祉・介護施設等職員 合同交流・研修会
連載/みんなの防災ノート 個別避難計画作成の推進に向けて-県地域福祉課
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かながわ ふくしのギャラリー
ゆるやかで心地よいみんなの居場所
ほとり(大磯町)
大磯町で、子どもや若者を中心とした居場所を作っている「ほとり」。地域のコミュニティスペースや福祉施設などを借りて週に3回開かれ、子育て世代や高齢の方なども含め、多様な世代が集います。
湖で出会った理想の空間
代表を務める小柴舞子さんは、2001年から15年ほど、東京都で中学校教員として勤めていました。登校することやクラスになじむことが難しい生徒と向き合う中で、学校以外にも子どもたちが安心して過ごせる場所の必要性を感じていた一方、教員の立場から関われる範囲には限界があったと言います。
そんな中、研修で滞在したフィンランドで目にしたのは、人々が湖のほとりで思い思いの時間を楽しむ光景でした。「コーヒーを飲んだり寝転がったり、それぞれが好きなように過ごしているのに、どこかゆるやかに同じ時間と空間を分かち合っているようでした。『こんな場所を地域にも作りたい』と強く感じたのを覚えています」と振り返ります。
その後、大磯町の温かい地域柄に惹かれ、子育てを機に移住。中学校での指導協力員の経験を経て、2023年10月に町民活動団体のほとりを立ち上げました。
安心できる場づくり
活動に決まったプログラムはなく、事前予約も不要。その日集まったメンバーに合わせて活動を用意しますが、実際に何をして過ごすかは、子どもたち自身が選ぶことを大切にしています。
小柴さんは「無理にみんなと同じことをせず、寝ているだけでもOKです。それぞれのペースで過ごせるよう、選択肢や環境は整えつつ、大人が強制しない関わりを心がけています」と語ります。
また、そうした自由な過ごし方を支えているのが、場全体に流れる”心地よい空気感”です。ほとりでは毎回、手作りの昼食を無料で用意し、みんなで食をともにすることを大事にしていますが、周囲と違う過ごし方をしている子どもにも、ボランティアスタッフがさりげなく「食べる?」と声をかけたり、程よい距離感で見守ったりしています。
こうした関わりの積み重ねによって、過度な干渉はせずとも「自分の存在が受け入れられている」と感じられる居心地のよさが生まれています。
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小柴さん(右)と、スタッフのひかりさん(左)。「ほとりの雰囲気が大好き。こんなに楽しくボランティア活動をできるのは初めてです」とにこやかに語る
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地域で支える選択肢に
そうした空間の中で子どもたちや家庭の困りごとに気付いた場合には、必要に応じて行政や専門機関、学校などへつなぐ「橋渡し役」も担っています。「どこか一つで抱え込まず、地域全体で支え合っていけたらと思います。気軽に来てご飯が食べられて、安心して過ごせる場の一つとして、ここを必要としている子たちに情報を届けたいです」と思いを口にする小柴さん。SNSでの発信のほか、学校の先生や民生委員・児童委員などと連携しながら、その存在を地道に、丁寧に伝え続けています。
ほとりはこれからも、誰もが肩の力を抜いて過ごせる地域の居場所として、湖畔のようにゆったりと穏やかな時間を紡いでいきます。
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〈写真7点〉
この日は地域のお寺「東光院」で和裁作家の方を迎えた手芸体験。それぞれが自分のペースで時間を過ごし、地域から寄せられた食材による温かな昼食を味わった
普段の居場所作りのほか、プロの音楽家との楽器演奏体験や遠足など、子どもたちの世界を広げる多彩な活動も行っている
〈写真7点終わり〉
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Info
ほとり
毎週月・水・金曜日9時30分~14時開室
活動詳細はこちら
Instagram
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特集
「知る」からつながる
かながわ福祉人材センターの人材確保・定着支援
福祉人材不足が深刻化する中、かながわ福祉人材センター(以下、福祉人材センター)では相談や職場見学など、個々のニーズに合った“適切なマッチング”により人材確保と定着のサポートを行っています。未経験者の参入促進や「介護助手」の普及、就職支援金貸付などの各種事業を展開する中で、求職者と事業所の双方を支える福祉人材センターの機能や取り組みを紹介します。
福祉人材センターによる就労支援
福祉・介護分野に限らず慢性的な人材不足が課題となる中、ハローワークや有料職業紹介所の利用、各種広告などさまざまな方法で求人募集が行われています。
福祉人材センターが実施した「令和7年度社会福祉施設等の人材確保に関する需要調査」(以下、需要調査)によると、高齢分野の正規職員の採用経路では、有料職業紹介所を介す割合が全体の約4割を占めています。自法人ホームページでの求人や広告掲載では募集につながりにくいことや、急な欠員時に人材確保をしやすいこと等が有料職業紹介所を利用している理由として挙げられる一方で、紹介料等の採用コストが高額であることが課題となっています。
都道府県福祉人材センターは、1992年に設置が法制化されて以降、無料職業紹介所としての役割を果たしています(本県では1991年開所)。本会は地域福祉を推進する県域の役割として、福祉人材の「確保・育成・定着」に向けた総合的・継続的な取り組みを担っています。
就労支援にあたっては、福祉・介護分野での従事経験のあるキャリア支援専門員が求職者との個別相談をはじめ、事業所への見学会の調整等を行い、求職者が長く働き続けられる職場と出会えるよう、適切なマッチングに努めています。
この〝適切なマッチング〟を行うにあたっては、事業所側のニーズを把握するため、事業所訪問を通じて必要とする人材についてヒアリングをしており、社協ならではの地域の法人・事業所とのつながりが大きな強みとなっています。
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福祉の仕事フェア就職相談会のようす
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「知ること」で働き方を考える
福祉人材センターでは福祉の仕事への興味・関心の度合いに応じ、初心者向けの「ミニセミナー」をはじめ、現場の職員から具体的な仕事内容ややりがい等について直接話を聞くことができる「知る懇談会」や「就職相談会」を各地域で開催しています。参加者はセカンドキャリアとして福祉・介護の仕事を検討している方も多く、50代の方が中心となっています。
需要調査によれば、高齢福祉分野における正規職員の約26%が無資格・未経験で採用されている実態があります。そのため、知る懇談会等においては、現場職員との直接的な対話を通して仕事への理解を深めながら、自分に合った働き方を考える機会の提供を大事にしています。
介護助手という働き方
介護現場では「介護助手」という働き方も選択肢の一つとして挙げられます。
介護助手とは有資格者が専門的なケアに専念できるよう、身体介護以外の清掃や食事の準備など介護の周辺の環境づくりを担い、ケアの質を高めるサポート役です。
介護の仕事に興味はあっても、経験や資格がない、体力に自信がない等の理由から一歩踏み出せずにいた方が、これまでの経験を生かし、介護助手として現場で活躍されているケースが多くあります。
福祉人材センターでは、介護助手の普及推進に向け、令和8年度新たにホームページを立ち上げました。情報発信や講座の地域展開を通じて、介護助手のなり手と事業所をつなげることで、求職者の働き方の幅を広げるとともに、現場の介護職の負担軽減や人材不足の緩和を目指しています。
貸付事業から見る多様な人材参入
2040年度には全国で57万人の介護人材が不足すると見込まれていますが、福祉人材センターでは、介護人材の確保・定着支援を目的として、他業種から介護職として働き始める方を対象に「介護分野就職支援金貸付事業」を実施しています。この事業では、介護保険事業所で介護職として2年間継続して従事することにより、貸付金の返還が免除されます。
過去3年間の借受者の特徴を見ると、40代・50代が全体の7割を占め、中高年層のセカンドキャリアとしての参入が多くなっています。
前職はサービス業(飲食サービス業やコンサルタント、広告、土木建築業などの専門・技術サービス業、美容師等の生活関連サービス業)が最も多いですが、 グラフ のとおり、幅広い業種から多様な人材が参入していることが分かります。
しかし、貸付事業開始以降、多くの方が介護現場で活躍している一方で、全体の14%程度は2年に満たず介護分野から離職しています。こうした現状から、未経験で他業種から参入した方が現場に定着するための支援は重要な課題の一つと考えられます。
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令和5年度〜7年度 介護分野就職支援金借受者の前職(83件)
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福祉人材センター機能の充実を目指して
福祉人材センターはこうした多方面からの支援を行っている一方で、認知度の低さが課題となっています。求職者・事業所の架け橋として支援を有効活用いただけるよう、多様な広報媒体を活用した福祉の仕事の魅力発信を継続するとともに、ハローワークとの連携強化や若い世代へのアプローチ、潜在的な求職者の発掘等について、社協の強みを生かして事業の展開を進めてまいります。
福祉人材の定着促進においては、マッチングだけでなく就職後までを見据え、本会福祉研修センターによる現任研修との両輪により、地域における福祉人材不足解消の一翼を担えるよう努めてまいります。(かながわ福祉人材センター)
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福祉・介護の魅力発信
かながわ福祉人材センターHP
当センター主催の講座やイベント情報などを掲載しています
介護助手普及促進HP
介護助手導入のインタビュー動画をはじめ、介護助手に関するさまざまな情報を掲載しています
かながわ福祉人材センターInstagram
事業所訪問のようすなど、求人事業所・求職者へ向けた情報発信を行っています
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NEWS&TOPICS
介護現場を支えるハラスメント対策
県高齢福祉課
背景
高齢化の進展に伴い、介護人材の確保が全国的な課題となっています。その中で、介護職員が利用者やその家族からの暴力、暴言、性的な言動など、いわゆる「ハラスメント」に直面し、介護離職を招く一因ともなっています。
令和4年度に(公財)介護労働安定センターが実施した介護事業所のハラスメントに関する調査によると、過去3年間に「身体的暴力」「精神的暴力」「セクシュアルハラスメント」のいずれかのハラスメントが発生したと認識している事業所は、居宅介護支援事業所で23・8%、訪問介護事業所で39・8%に達しています。
こうした状況を踏まえ、介護職員が安心して働ける職場環境の整備は、介護人材の確保・定着を図る上で非常に重要です。
国のこれまでの取り組み
令和3年度の介護報酬改定において、全ての介護サービス事業者に対し、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどに適切な対策をとることが義務付けられ、運営基準(省令)に必要な措置を講じることが規定されました。
また、留意事項通知では、カスタマーハラスメント防止に向けた取り組みを行うことが望ましいとされています。
これに合わせ、厚労省は平成30年度に作成・周知した「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を改訂し、介護現場の対策に役立つ資料を厚労省のウェブサイトで公開しています。
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厚労省HP
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事業所に求められる対応
令和8年10月1日から施行された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)により、全ての事業主に対して、カスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の必要な措置を講じることが義務付けられました。
具体的には、厚生労働大臣が定める指針の中で次の対応が求められています。
●事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
①職場におけるカスタマーハラスメントには毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること
②カスタマーハラスメントの内容及びあらかじめ定めた対処の内容を、労働者に周知すること
●相談体制の整備
③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること
④相談窓口対応者が、適切に対応できるようにすること
●事後の迅速かつ適切な対応
⑤事案の事実関係を迅速かつ正確に確認すること
⑥被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと
⑦再発防止に向けた措置を講ずること
●対応の実効性を確保するために必要なカスタマーハラスメントの抑止のための措置
⑧特に悪質と考えられるカスタマーハラスメントへの対処の方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備すること
そのほか、相談者のプライバシー保護や、相談を理由とした解雇や不利益取扱いの禁止についても、労働者に周知・啓発する必要があります。
なお、介護職員は、利用者の身体的・精神的なケアにあたる中で、時として利用者等からの理不尽な言動にさらされることがありますが、これらの言動が認知症等の病気または障がいの症状として現れた言動(BPSD等:認知症の行動症状・心理症状)である場合には、ハラスメントとしてではなく、医療的なケアによるアプローチ等が必要となります。
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県の介護現場におけるハラスメント対策の取り組み
オンライン研修
県では令和3年度から、介護サービス事業者を対象に利用者や家族からのハラスメント発生時の対応や再発防止策をテーマとしたオンライン研修を実施しており、多くの方に受講いただいています。令和8年度も秋頃に開催予定で、詳細は「介護サービス情報かながわ」や県ホームページで案内します。
法律相談
令和4年度からは、ハラスメントに関する難しい事例について、弁護士による無料の法律相談窓口を設けています。ハラスメント総合相談窓口に電話やメールで相談される際、必要に応じて予約が可能です。
ハラスメント総合相談窓
令和8年6月には新たに、介護サービス事業者および従業員からの電話・メール相談に対応するハラスメント総合相談窓口を開設しました。
この相談窓口にはカスタマーハラスメント対応に精通した専門相談員を配置し、県内(横浜市、川崎市、相模原市を除く)に所在する介護サービス事業者や従業員からの相談を受け付けています。
おわりに
県では、これらの施策を通じて、介護現場で働く皆様がハラスメントから身を守り、安心して働くことができる環境づくりを推進していきたいと考えています。
〈囲み〉
ハラスメント相談窓口
神奈川県
● 電話相談:0120-007-650( 平日9時~17時、土日祝・年末年始除く)
●メール相談: https://wcan-media.com/kanagawa-ksoudan/
※ 電話・メールとも無料で匿名相談も可能です。対面相談は行っていません。
各政令市
横浜市、川崎市、相模原市では、それぞれ独自にハラスメント相談窓口を設置しています。
●横 浜 市:0120-880-021
●川 崎 市:0120-028-018
●相模原市:0120-788-758
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福祉のうごき 2026年7月27日〜9月30日
横浜市 高齢者等終身サポート事業に独自の評価基準
横浜市は7月28日、高齢者等終身サポート事業者に関して、市独自の評価基準を策定し、基準を満たした事業者と連携協定を締結し、公表する制度を開始した。
市では頼れる親族がいない高齢者が約8.7万人(10人に1人)いると推計。評価基準は国のガイドラインと、利用者の意思尊重など市独自の視点を入れた計24項目を設定している。
県知的障害福祉協会等11団体
県に特別自治市構想に反対する要望を提出
県知的障害福祉協会、県身体障害施設協会、県高齢者福祉施設協議会など11団体は連名で8月26日、県知事に「特別自治市構想に反対する要望」を提出した。県は特別市制度について、住民目線から見て法制度化は妥当でないとの考えを示している。
逗子市社協、葉山町社協
逗子葉山青年会議所と災害VC支援で協定
逗子市社協と葉山町社協は9月14日、(一社)逗子葉山青年会議所と災害ボランティアセンターの運営支援に関わる協定を締結した。主な協力項目として、ボランティア活動への参加協力、運営への協力、備品や資機材の提供等が挙げられる。
逗子葉山青年会議所Instagram
令和8年版厚生労働白書 公表
厚労省は9月29日、『令和8年版厚生労働白書』を公表した。今年のテーマは「これからの医療・介護・福祉の現場で働くことを考える」。医療・介護・福祉は、誰もが受け手となり得るもので、2040年を見据えた課題と対応の方向性や、テクノロジー(ICT、AI、ロボット等)の活用による生産性向上の先進事例を紹介している。
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県社協のひろば
「かながわの仲間」と原点に立ち返る
新任福祉・介護施設等職員 合同交流・研修会
「期待を胸に入社した新任職員が、現場の悩みや孤立感から離職してしまう」―人材の「定着」が深刻な課題となる中、同じ悩みを抱える事業所も多いのではないでしょうか。福祉研修センターでは、単に知識や技術を学ぶだけでなく、忙しい日常から一歩立ち止まり「原点」を見つめ直す機会と、事業所を越えた「かながわの仲間」との交流を大切にしています。
今回は、そうした交流と学びの機会を提供する、県委託事業「令和8年度新任福祉・介護施設等職員 合同交流・研修会」のようすをご紹介します。
5月の記念講演では、ルーテル学院大学名誉教授の市川一宏さんが「これからの神奈川の福祉を担う皆さんに期待すること」と題して登壇しました。現代の福祉課題に触れつつ、支援の本質として「相手の下に立つこと」「靴に足を合わせるのではなく、足(当事者)に靴(支援)を合わせる姿勢」の重要性が示されました。また、被災地支援でのエピソードを交え「福祉は相手に寄り添い、自分も成長する仕事。なぜこの仕事をするのかという原点を忘れず歩んでほしい」と、温かなエールを伝えました。講演の最後には、先輩職員からも心の込もった応援メッセージが贈られました。これらの温かい言葉を受け止めた新任職員代表が「初心の志」を発表し、これからの活躍と成長を期待させる締めくくりとなりました。
〈写真〉
新任職員に熱く語りかける市川さん
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8月には、東海大学健康学部助教の島﨑由宇さんを講師に迎え「専門性とは職業倫理に基づく実践の積み重ねである」とし、根拠ある支援を行うために学び続ける意義が伝えられました。また、一人で抱え込まず外部にも仲間をつくること、葛藤に直面しても考えることを止めず、誠実であり続ける姿勢の大切さを、体感しながら確認する機会となりました。
今回の合同交流・研修会は、新任職員が業務から離れて立ち止まり、職業倫理や専門性の意味を深く見つめ直す貴重な場となるとともに「なぜこの仕事を選んだのか」という自らの原点に立ち返る機会となったのではないでしょうか。さらに、他事業所の仲間と思いや課題を共有し合うことで「自分だけではない」という安心感を得ると同時に、新たな視点や学びを得て「これからも専門職として歩んでいきたい」という前向きな意欲へとつながるようすがうかがえました。
日常の現場や業務から一度離れる職場外研修(OFF―JT)だからこそ、自身の立ち位置を客観的に見つめ、事業所を越えた「かながわの仲間」と心を通わせることができます。こうした研修の場での出会いやつながりを現場に持ち帰って生かせる環境を事業所として整えることが、職員が現場で安心して働き続けられる確かな糧の一つになると考えています。
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「かながわの仲間」と活発に意見を交わす参加者
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福祉研修センターでは、社会福祉従事者として共通の基盤となる価値・知識・専門性を各階層に応じて学ぶ「基幹研修」、組織内でのそれぞれの役割に応じた「階層別研修」、専門職としてのスキルアップを目指す「職務別研修」、介護支援専門員、サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者向けの法定研修など、多様な研修を開催しています。県域の研修実施機関としてこれからも「かながわの仲間」と学び合い、社会福祉従事者と事業所の成長を支える場を提供してまいります。(福祉研修センター)
〈囲み〉
受講者の声(アンケートより抜粋)
● 専門性や職業倫理の重要性を学び、現場でも振り返りの時間をつくって実践し、学び続けたいと感じた。
● 他施設の仲間と悩みを共有し意見を出し合うことで、孤独感が和らぎ、多角的な視点や支援のヒントを得ることができた。
● 自分一人では気づけなかった視点を知り、専門職として「まだまだこれから成長できる」と前向きになれた。
〈囲み終わり〉
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〈全面広告〉
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連載 みんなの防災ノート
個別避難計画作成の推進に向けて
県地域福祉課
個別避難計画について
個別避難計画とは、災害時に自力で避難することが難しく支援が必要な方(避難行動要支援者)を対象に、災害時に備えて「どの経路でどこに避難するか」「誰と避難するか」「どのような配慮が必要になるか」などをあらかじめ決めておくものです。
平成7年の阪神・淡路大震災では、倒壊した家屋などに閉じ込められた人のうち、自力での脱出や、家族、友人、隣人等によって救出された割合が9割超という調査結果もあり、発災直後は身近な方同士の助け合いが大切です。
特に、避難行動要支援者の方は、日頃から周りの人との関係を構築しておくことが、円滑な避難につながります。
個別避難計画の作成は、災害時に助かるためにどうしたらよいかを考えるきっかけとなり、計画の作成に市町村や福祉専門職、自治会・自主防災組織をはじめとする地域住民が関わることで、地域の助け合いの力を高めることができます。
個別避難計画の作成は災害対策基本法により、市町村の努力義務となっていますが、広域自治体として県も市町村と連携しながら、市町村における個別避難計画作成の取り組みを推進しています。
作成を進める上での課題
このように重要な役割を果たす個別避難計画ですが、作成がなかなか進んでいない市町村が多いのが実情です。作成が進みにくい主な理由としては、次の4つが挙げられます。
(1) 本人・家族の同意や協力を得にくいこと
災害時の避難について本人や家族が必要性を感じていない場合や、個人情報を地域に共有することへの抵抗感がある方もいます。
(2) 避難支援者の確保が困難なケースがあること
「誰が避難を手伝うのか」を具体的に決められないことが大きな課題です。避難支援者自身も被災する可能性があり、責任や負担から支援者となることをためらう方もいます。
(3)調整に時間を要すること
市町村内での福祉・防災部門等の部署間の連携や、地域の担い手となる方、福祉専門職等との調整も必要となるため、作成にかかる時間が長くなります。
(4)作成後も更新が必要なこと
計画は、転居、心身の状態の変化、支援者の変更などに応じて更新する必要があります。新規作成だけでなく維持・更新の負担も大きな課題です。
市町村に対する支援
県では、市町村が個別避難計画を作成するための委託費やシステム導入費等について、補助金を交付しています。
また、令和8年度から、個別避難計画についての県民向け防災カフェの開催と、計画作成のキーパーソンとなる福祉専門職向けの研修事業を実施します。
防災カフェでは、県民の方に防災について楽しみながら学んでいただき、個別避難計画の必要性や、身近に避難行動要支援者がいるということについて知ってもらいます。
キーパーソン養成研修では、ケアマネジャーや相談支援専門員を対象に、計画作成や関係者との調整に関する知識および技術の習得を目指します。
このほか、避難行動要支援者とその家族の方向けの個別避難計画作成に係るチラシをデザインし、各市町村に配架をお願いしています。
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今後に向けて
市町村における個別避難計画の作成を進めるには、市町村の庁内関係部局の連携をはじめ、ケアマネジャー・相談支援専門員等の福祉専門職、自治会・自主防災組織、民生委員・児童委員、社会福祉協議会等の庁外の関係者との連携が不可欠です。県は、市町村が実施する訓練への参加や計画作成についてのヒアリング、自治体間での意見交換の場などを通じて、関係者間の顔の見える関係を構築していきます。
また、実際に避難できる可能性を高めるため、計画作成を通じてできたつながりを生かして実際に避難先まで移動してみる「避難さんぽ(避難訓練)」などの実施を呼びかけていきます。
こうした取り組みにより、災害時に避難行動要支援者を取り残さない、地域全体で支える福祉支援体制の構築をより一層推進していきます。
〈コラム〉
逗子市では令和7年度から、障がいのある人の個別避難計画の作成を、指定特定相談支援事業所等と協力して進めています。
今回、市から委託を受けた(福)湘南の凪 支援センター凪 施設長の新井宏二さんにお話を伺いました。(本会企画課)
- 個別避難計画書にはどのようなことを書きますか
市から対象者名簿の提供を受けて自宅等にうかがい、計画書に記載のある、音が聞こえにくい、言葉や文字の理解が難しい、危険なことが判断できないといったことや、コミュニケーションに必要な手段、避難するときの介助の内容等を確認していきます。また、避難を支援するために「普段いる部屋」「寝室の位置」「避難場所までの経路(地図)」から、避難を支援する人の項目では、災害情報の連絡や安否確認ができるか、避難先まで一緒に行けるか、その支援の範囲までを聞き取り、記入しています。
- 作成から見えた、ご本人やご家族の状況を教えてください
重度の知的障がいや音・人混みなどの刺激に非常に敏感な障がいの特性から「集団になじめない、迷惑がかかるから避難所にはいけない」「マンションから車椅子で避難所へ移動するリスクがあるので、自宅にとどまりたい」といった切実な状況があり、避難先の環境への不安や避難行動の前の段階にも課題があることを痛感しました。
- 避難支援の協力者の確保が課題に挙げられています
ご本人の高齢化や障がいの重度化が進み、車両での送迎の増加等により、地域の中で障がいのある方の姿が見えにくくなっています。そういった普段からの関わりが少ない中で「もしもの時に頼みたい」ということを近隣の方にお願いすることは困難といえます。実際に避難に協力いただくには障がいのことを理解いただき、顔の見える関係を作る必要があります。より身近な人たちに「支援が必要な人がここにいる」「心配だから声をかけてみよう」と思ってもらうためには、計画作成が必要な当事者の方、避難協力者となり得る地域の方、双方への丁寧な説明が必要と感じています。
- 今後に向けて関係者と考えていきたいことは何でしょうか
自助や共助に頼りきるのではなく、仕組みづくりをどう進めるかが課題です。当事者の身近な存在に、例えばホームヘルパーやガイドヘルパーがいます。地域に住んでいる方が多いため、平常時の関係性を生かした支援の仕組みを考えられないでしょうか。また、避難したその先の支援体制も、同時に整備することが重要だと改めて気付かされました。災害時に福祉事業所が早急に再開できることや、事業所が連携して緊急の受入れ体制を整えること等、行政が市全体を見渡し、体制整備を進めていくことに期待したいです。
〈コラム終わり〉
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ありがとうございました!
寄附御礼
寄附の受付はこちら→かながわボランティアセンターHP
匿名含め、合計7件454,341円
●ともしび基金/KDDI(株)
●交通遺児等援護基金/藤尾はるみ、(株)エスホケン、(株)ホンダクリオ共立
●子ども福祉基金/脇隆志、(株)エスホケン
●ライフサポート事業〈寄附物品〉/
(N)セカンドハーベスト・ジャパン
(敬称省略)
〈写真〉
(株)ホンダクリオ共立より交通遺児等援護基金に寄附をいただき、令和8年9月14日、石﨑重光代表取締役(左)に感謝状を贈呈
〈写真終わり〉
News
おかげさまで創刊900号!
本会設立年(昭和26年)からともに歩んできた本紙は、2026年11月号でついに創刊900号を迎えます。
節目を記念した特別号を編集中ですので、どうぞご期待ください
特別企画内容をチラ見せ!
● これからの10年を考えよう 特別座談会
● 「ともしび基金」設置50年を迎えて
etc.
News
令和8年台風第25号の被災者支援に
県内災害ボランティアセンター開設
令和8年9月の台風第25号で被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
三浦市社協は9月24日、横須賀市社協は9月25日に災害ボランティアセンター(災害VC)を開設。自宅に流入した土砂や家財の片付け等の依頼に対し、ボランティア活動をつないでいます。
県災害救援ボランティア支援センター(9月21日に災害対策本部設置と併せて開設。県・県共同募金会・神奈川災害ボランティアネットワーク・本会による協働運営)では、両市の災害VCの運営支援を行っています。
Info
福祉従事者のためのレジリエンス向上研修
相談業務で直面する困難等からしなやかに立ち直り、回復する力(レジリエンス)について学びます。
●日時 12月11日(金)14時~16時30分
●場所 神奈川歯科大学付属横浜研修センター7階大会議室
●対象 相談業務従事者(ケアマネジャー、相談支援専門員等)
●定員 30名
●参加費 無料
●申込〆切 12月1日(火)
問合せ 福祉サービス推進課 TEL 045-534-5662 sisetu@knsyk.jp
福祉タイムズNo.899(2026.10.15発行)
「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
編集・発行/社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
〒221-0825 横浜市神奈川区反町3-17-2 TEL 045-534-3866
印刷/株式会社神奈川機関紙印刷所