福祉タイムズ

Vol.826(2020年9月号)

このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.826(2020年9月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。

テキストデータ作成に当たって
 このデータは、『福祉タイムズ』 vol.826 2020年09月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
 二重山カッコは作成者注記です。

P1
福祉タイムズ ふくしTIMES
2020.09 vol.826
編集・発行 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会

特集…P2
今の状況だからこそ届けたい、福祉・介護現場の声-新たな生活様式を視野に、さまざまな人と福祉のしごとをつなぐ-
NEWS & TOPICS …P4
外国籍の方と共に地域で生活する住民として
連載…P6
「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第3回 自宅だけじゃない こんな時こそ安心できる「居場所」
県社協のひろば …P10
オンライン研修でいつでも受講-日常生活自立支援事業初任者研修開催

◆今月の表紙 アートで幸せの共有を!【詳しくは12面へ】撮影・菊地信夫(きくちのぶお)〉

P2
特集
今の状況だからこそ届けたい、福祉・介護現場の声-新たな生活様式を視野に、さまざまな人と福祉のしごとをつなぐ-
 新型コロナウイルス感染症拡大防止のためさまざまな自粛措置が講じられる中、福祉・介護現場では利用者や自分たちの安全を守るための工夫を重ねながら、サービス提供を続けています。
 対面形式や集合型の会議、イベント等の開催に制約がある状況で、現場の“思い”を多くの関係者と共有し、ともに福祉・介護をどのように前進させていくことができるか。採用活動もこれまでのようにできない中、「安心して仲間に入ってきてほしい」というメッセージをいかに求職者に届けるか。求人事業者との出会いの機会を創出し、つながりを作っていけるか。福祉人材センターとして何が発信していけるかと、試行した取り組みを通して、今後の新しい生活様式に向けた事業展開について考えていきます。

 かながわ福祉人材センター(以下、人材センター)では、県の要請等に基づき、予定していた集合型による会議やイベント、窓口での専門相談等を中止することを余儀なくされました(現在、専門相談は完全予約制で行っています)。
 この事態を受け、人材センターではすぐに求職者の電話や電子メールによる相談体制を拡充しました。5月には登録求人事業所を対象にインターネットを通してマンパワー確保状況のアンケートを実施。調査結果からは、多くの事業所で求人ニーズは変わらず高いこと、オンラインによる採用活動に関心はあるものの、着手に踏み込めずにいる状況等が見えてきました。

福祉・介護の仕事に興味のある方と現場をつなぐ
 人材センターでは、インターネットやホームページ等を活用したオンラインによる事業に取り組みました。

福祉のしごとWEBミニセミナー
 より多くの人に福祉の仕事の内容を知ってもらおうと、これまで対面・集合型で実施してきたセミナーの内容を動画にまとめ、6月から7月にかけて動画共有サイトYou Tubeで限定配信しました。
 内容は「資格がなくても働けるの?」など全4テーマ。1本につき15分程度にまとめた動画は、のべ622人に視聴いただき、「都合の良い時間に閲覧出来るので良かった」「分かりやすく何度も見直す事も出来るので、これからも活用していきたい」といった声がアンケートを通して聞かれました。

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動画配信したWEBミニセミナーの画面
〈写真終わり〉

オンライン地域出張相談会
 次に、福祉・介護の現場からの発信として、3週にわたり、オンラインミーティングアプリを用いて相談会を開催しました。
 参加した福祉・介護等の法人は、相模原、湘南西、横須賀・三浦の3地域から各8法人。現場で活躍する職員から自法人の特徴や働き方、仕事の魅力などを特設サイト上で直接配信し、1法人あたり40人ほどの参加を得ることができました。

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オンライン相談会の様子。参加者はチャット機能を使って出展法人に随時質問した
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対面とWEBを組み合わせた多様な参加の提案
 福祉のしごとを知る懇談会は、他職種から福祉業界に飛び込んだ職員等から、福祉・介護の魅力ややりがいなど採用面接では聞くことができない現場の実際を聞ける場として開催しています。
 これまでは対面式で開催していましたが、この9月からは会場での参加とWEBでの視聴を選択できる形で実施していきます。

〈写真〉
詳細はこちらから URL: http://www.kfjc.jp/
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次世代の担い手とつなぐ
〝推進会議〟からの発信
 これから福祉・介護業界で学び、働こうと思う人たちにとって、「現場感」を得ることはとても大切な要素のひとつです。県の委託により人材センターが運営している神奈川県介護人材確保対策推進会議(以下、推進会議)では、ポータルサイト上で現場感を知ってもらえるように、施設・事業者への直接の取材を通して現場で大切にしていること、介護福祉の実践の中での〝思い〟を発信してきました。
 現在、このコロナ禍でその現場感を体感する機会が大幅に減っています。県内の教育現場からも見学、体験の機会が減少していることを憂う声が聞こえてきています。
 人材センターでは、施設・事業者の皆さんに見学会・体験会の情報を登録してもらうページを開設しており、ポータルサイトからも閲覧・登録することができます。それらの情報発信を通して、学生やこれから福祉・介護業界へ飛び込もうとしている人たちとを「つなぐ」役割が人材センターにあると考えています。

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ポータルサイトでは福祉・介護現場で働く人たちのインタビューを発信
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この緊急事態をきっかけに
 推進会議では、6月に臨時の委員会をオンライン形式で開催。その中で、臼井正樹委員長(県立保健福祉大学名誉教授)は、高卒で就職した人の約4割が3年後に離職している状況に対し、介護を学ぶ高校生の介護施設等での離職率は約1割強に留まるとする調査結果を「高校で目的をもって学んだ生徒は、その後の就職先でもしっかり定着していくことができるエビデンスであり、就職後も本人の思いをしっかり受け止め、学びの機会を提供していくことが大切で、その機会は個々の施設だけで取り組むのではく、連携しながら業界全体で対応していくこと」と提起されています。
 教育現場からも、今の高校生がどういう専門教育を受けているかを事業者の方々にもっと知っていただきたいという声が届いています。
 私たちはさまざまな機会を通して、福祉・介護の現場感を伝える方策を模索しつつ、教育現場と連携し、高校生のみでなく、大学・専門学校を卒業し入職した従事者が働きながら学び続けられる環境を、業界全体で整えていく必要があると考えます。

これからの人材センター事業
 誰もが経験したことのない緊急事態の中、新たな求職・求人活動を巡る課題への取り組みは始まったばかりです。この数カ月、試行錯誤しながら実施した前述の取り組みからは、いくつかの知見を得ることができました。
 オンラインや動画はその気軽さから、福祉・介護の仕事に興味のある方が就職活動に向けた一歩を踏み出せる機会として、効果を発揮できると考えます。
 一方で、対面方式であれば会話のなかで熱量が伝えやすく、感じとるものが大きいことは否めません。就職相談会の場合、相談ブースに訪れた求職者が自分の関心や疑問をもとに会話をすることができ、そのやりとりを複数のブースで重ねていくことで本当に自身が望む働き方に気づくことも少なくありません。
 場所や時間、人数などの制約が少ないといったオンラインの強味を生かしながら、対面を重視し、人と人が直接関わる取り組みと両立させていきたいと考えています。
(かながわ福祉人材センター)

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神奈川県介護人材確保対策推進
フォーラム開催
 7月1日、「今、この状況だからこそ、伝えたいこと、伝えなければならないことがある。」と、推進会議のメンバーを中心にWebでのフォーラムを開催しました。
 基調提案では、臼井正樹委員長(県立保健福祉大学名誉教授)から、〝介護福祉〟とは何か、その奥深さと介護福祉に携わる者の役割などをお話しいただきました。
 リレーメッセージでは、コロナ禍でも利用者や家族の思いに寄り添い、現場でのサービス提供を続ける介護施設、在宅介護事業所それぞれの立場からの感染症予防等の工夫や、そこにある思いが語られるとともに、関係者間の応援・協働についてもメッセージが発信されています。
 ポータルサイトで本編を配信しておりますので、ぜひご視聴ください。

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推進会議「トライ!福祉・介護ポータルサイト」 URL:http://www.kaigoportal.jp/
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NEWS&TOPICS
外国籍の方と共に地域で生活する住民として
 多様化する生活課題、地域のつながりによる連携・協働によって対応していこうと進められている「地域共生社会」への取り組み。
 高齢者や単身世帯、障害のある方の課題はもちろんのこと、増加しつつある外国籍の方との共生のあり方も課題が多くあると考えられています。

◆外国籍県民の高齢化の課題
 法務省「在留外国人統計表2019年」からの試算では、本県には、約23万5千人の外国籍県民が生活し、約1万2千5百人が65歳以上の高齢者です。外国籍の方の高齢化の課題について、ユッカの会(※)代表の中和子さんにお話を伺いました。
 日本語で仕事や日常生活を送ってきた人でも、高齢化や認知症などにより母語を口にする機会が増えることは、どの国の人でもありえるようです。福祉サービスを利用するときに、母語が通じる職員のいるところがよい、生まれ育ったところの言葉で会話したい、そう思う方が増えることは自然なことです。
 ユッカの会の活動でも、中国帰国者や在日コリアン、日系人など、さまざまな背景の外国籍県民の高齢化を把握しています。その中で、「日本語が話せない高齢者の対応ができる福祉サービス事業所を教えてほしい」という相談が、地域包括支援センターなどから寄せられるようになりました。
 「長年活動をしている私たちでもそのような情報は持っていないので、つなぎ先を見つけることが難しい」と中さん。外国語で対応できる職員がいる事業所の情報を把握している機関はなく、ユッカの会では県域でのデータベースの必要性を感じています。

◆多言語による情報提供
 外国籍の方の生活課題は、言語が大きな壁となる場合があります。日本語が分からない方でも、行政への手続きや生活に関する相談等ができるよう、多言語ややさしい日本語による情報提供が行われるようになってきています。本県においては、去年、横浜市と川崎市に「多文化共生総合相談センター」が設置されるなど、外国籍県民への支援や取り組みは広がりつつあります。
 昨今では、新型コロナウイルス感染症に関する情報を外国籍の方に向け、やさしい日本語等で表記し、ホームページやSNSで情報発信が行われています。感染症対策によって変わりつつある生活。これについて、言語が壁となり、困ってしまうケースも考えられます。多言語等を用いて情報発信していくことも、今後さらに重要になると考えられます。

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○神奈川県ホームページ
 生活支援総合相談窓口等、新型コロナウイルス感染症に関する相談等の窓口を8つの言語とやさしい日本語で案内しています。
URL:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/k2w/covid19/ja.html
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◆地域でチカラ合わせて
 同じ地域で生活していても課題は見えづらいものです。住民と共に生活を支えることは、課題の解決へ向けた動きであるとともに、住民自身が課題について学ぶ機会でもあり、その積み重ねは誰もが安心して生活できる地域づくりにつながっていきます。
 例えば、ユッカの会では、在宅ケアを利用しながら生活している人の相談で、地域の人の協力を得ることで、課題となっていた夜間の対応ができるようになる事例がありました。「地域には、『退職したので自分にも何かできないか』という人が大勢います。通訳としてではなく母語が話せる隣人として、寄り添い役として地域のチカラを借りて、制度と組み合わせて生活を支えられるとよいと思う」と中さんは語ります。
 共に地域で生活する住民の課題に対し、本会も対応を模索していきます。

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※ユッカの会:中国残留邦人帰国者家族および外国につながる人々の教科補習、日本語学習、生活上の問題や進学・就職の相談などを行っているボランティア団体。
URL:http://yukkanokai2014.web.fc2.com/
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(企画調整・情報提供担当)

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福祉のうごき 2020年7月26日~8月25日
●厚労省調査、児相と配偶者暴力相談センターとの連携進まず
 厚生労働省が全国の児童相談所と、配偶者暴力相談支援センターに2018年度の連携状況を尋ねた調査で、児相の4割超、センターの3割超が連携した事案はないと報告したことが27日までに分かった。同省は調査結果を踏まえ、連携強化の指針を策定し、自治体に通知した。

●知的障害者親らの団体、大手損保と連携、所得補償保険開発
 全国手をつなぐ育成会(東京)が大手保険会社と協力し、障害者やその親が病気等で就労できなくなった時の所得を補償する団体保険の販売を始めた。障害者を対象とした所得補償保険は国内初で、将来の経済的不安を解消するのが狙い。

●厚労省、社会福祉法人合併でガイドライン策定
 厚生労働省は、社会福祉法人が合併、事業譲渡・譲受、法人間連携を行う際のガイドライン案と、実務者向けマニュアルを策定した。期待される効果としては、地域の生活課題に対する総合相談支援体制の強化、新たなサービスの創出などがある。

●神奈川県を含む16県が福祉施設への応援派遣を整備
 特別養護老人ホームなどの福祉施設で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生し、職員が不足する事態に備え、他の施設から応援職員を派遣する態勢を16県が整備したことが、共同通信の調査でわかった。応援態勢が組まれるのは主に介護と障害の入所施設。

●ホームレス相談窓口を、支援団体が横浜市に要請
 横浜・寿地区の支援団体は30日、横浜市に対し、特別定額給付金を住民登録がなくても申請ができるよう求めたが、市側は難しいと回答。支援団体は、給付金を最も必要とする生活困窮者に対し、市の職員による相談会を設定するよう求めた。

●横須賀市、認知症者捜索にLINEを活用、全国初
 横須賀市は、LINE(ライン)で認知症者の行方不明情報を発信する「よこすかオレンジLINE」を9月1日から始める。市内の認知症サポーターと「オレンジパートナー」に行方不明者の情報を発信する。こうした取り組みは、全国初。

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連載 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第3回
自宅だけじゃない  こんな時こそ安心できる「居場所」
 不要な外出を控え、人の密集や接触機会を減らすことが、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止策のひとつとして挙げられました。なるべく自宅で過ごす「ステイホーム」のあり方が示され、在宅での勤務や余暇の過ごし方等、「新しい生活様式」が定着しつつあるところです。しかし、在宅時間が長くなることによるストレスの増加等、感染症以外でよくない影響を受けるケースも聞かれました。
 こうした中で、居場所活動の実践者たちは、居場所を開くか閉じるかのジレンマに悩みつつも、自宅だけで過ごすことに不安を感じる人達が安心してひと時を過ごせる場所を作るため、工夫しながら活動を行っています。
 連載第3回目の本紙では、居場所活動について実践者たちの声を紹介していきます。

変わっていく生活への不安
 在宅時間が長引くことの影響は、本会に寄せられた情報の中にもありました。認知症当事者の症状悪化や、介護サービスが休止された場合に家族で行う在宅介護の困難さ等、当事者やその家族の苦労が寄せられ、深刻なケースになり得る事例等、課題も寄せられていました。
 中でも、学校の休校や就労支援事業所の休止により、日中の時間を自宅で過ごすことになった子どもや障害当事者へのケアや支援に関する課題や意見は多く見られました。
 例えば、留守番をお願いするのは難しい。マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保等をすぐに理解してもらうのも難しい。本人たちも、様変わりした生活に不安や戸惑いを感じてしまう。
 特に、緊急事態宣言の発出時には、こうしたことが障害当事者と家族への負担としてのしかかり、トラブルにつながることや深刻な事例に発展すること等、さまざまな課題が浮かび上がりました。

不安な一日を満足な一日へ
 障害のある方が働き、仲間や地域の人とふれあう場として本会が認定している売店や喫茶店「ともしびショップ」の中には、通常の営業は休止していても、感染症対策を行いながら「居場所」として開いていた店舗もありました。
 「ふさぎこんでしまったらいけないと思い、お店を開けることにしました」と語る「ともしびショップもっこす」(鎌倉市)の店長に、緊急事態宣言時の様子についてお話しを伺いました。
 普段は精神・知的障害の方を含め7〜8人のスタッフで営業している喫茶店ですが、緊急事態宣言時には営業を休止。しかし、店長の心配だけでなくスタッフの家族から「一日数時間だけでも、様子を見ていて欲しい」と相談があったことから、お店を開きました。
 スタッフへは交通機関の状況を調べ、空いている時間や路線を使用するよう案内し、店舗内での作業等は少人数に分け、時間をずらしながら行う等、「3密」回避への工夫を行いました。しかし、スタッフの中には「なぜ皆で一緒に作業できないのか?」等、かえって不安になってしまう人もいました。
 この時、店長が心掛けたことは「居場所に来たスタッフが一日を満足した気持ちで帰ってもらうこと」でした。その日一日の目標を設定し、その日の終わりに進捗を報告しあうようにしました。店長からスタッフへ感謝を伝えることで達成感が増し、不安な気持ちが和らいだのではないかと言います。

お互いの顔が見える安心と発見
 「対策をしながらの開所は大変なこともありましたが、こんな状況だからこその工夫やスタッフとの間にも発見がありました。」
 お店で使用する食材を作る畑での作業等、通常にない業務を行ったり、料理番組を見て勉強し、スキルアップに向けた取り組みに時間を使ったりすることができたと言います。また、じっくり時間がとれたことで、改めてスタッフそれぞれの向き不向きを知ることができる等、交流の機会にもつながったと、当時の様子を振り返ります。
 「不安が残る中での取り組みでしたが、お互いの顔をよく見ることができた時間になり、仲間とつながる安心を感じれたり、新たな日常への可能性に気付けました。」
(企画調整・情報提供担当)

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休校中の子ども達  つながり途切れないように―子どもの未来サポートオフィス代表 米田 佐知子
子どもたちへの影響
 新型コロナウイルス感染症の広がりは、臨時休校という事態を生み出しました。子どもは家で長時間、親と一緒に過ごすことになり、在宅ワークの親に気を使い、外に遊びに出ると地域住民から学校へ苦情が入ったり、のびのびと過ごしにくい期間でした。親子共々イライラがつのり、普段おとなしい子が親にあたるようになったなど、子どもの変化が聞かれました。
 虐待を受けたり、家族との関係が良好でない子どもにとっては、学校は居場所でもありました。休校と不要不急の外出自粛による、家での巣ごもり生活は、感染とは別のリスクが高まる状況でした。
 コロナ禍で家計が急変した子育て世帯は多く、特にシングル世帯は、臨時休校で親が仕事を休まざるを得ず収入が更に激減、給食がないので食費が増えて、一層厳しい状況に追い込まれました。

居場所を開くか閉じるか
 子どもに安心安全な空間と関係をつくり、人のつながりを生み出してきた居場所活動は、コロナ禍で「3密」を避けることを求められ、公的な補助を受けていた活動は要請を受けて休止、他の団体も休止か継続か判断に迫られました。
 居場所活動のひとつ「こども食堂」は、運営の中心メンバーが高齢者という団体が多く、公共施設の休館で会場確保も困難となり、8割近くが苦渋の決断で活動休止を余儀なくされました。
 しかし、貧困や虐待など子どもが抱える困難を把握していた団体をはじめ一部の団体は、臨時休校決定後、子どもとのつながりが切れることの持つ危険性を考え、消毒などの感染予防に対応しながら、さまざまな形態での活動継続を決めました。月1の食堂形態は休止しても「気になる子ども」だけに個別に声をかけ、週3日の少人数の居場所を開いた団体や、自粛期間中も感染予防に気を付けながら常設スペースを開き続けた団体がありました。

新たな形態で活動するこども食堂
 「集まって一緒に食べる活動は難しい、どうしたら子どもたちとつながり続けられるか」と考えて、各地で始まったのが「パントリー活動」と呼ばれるお弁当や食品の配布でした。食品を受け取るという外出理由をつくり、マスク顔ではあるけれど顔を合わせ、距離をとりながら、ひと時おしゃべり。つながりを切らさない機会になりました。4月以降は毎月、休止中も含めた県内のこども食堂がオンライン情報交換を行い、お互いの状況を共有、コロナ関連の支援活動助成金や食品寄付などの情報もあり、一度休止したものの動き始める団体が出てきました。
 アウトリーチ型の活動も行われています。食品を届けに訪問したシングル家庭で、男性ボランティアが子どもと近くの公園でサッカーをする間、女性ボランティアが精神的に差し詰まっている母親の話を聞き、支援情報を提供したり、外国につながる子どもの家庭へ訪問し、言葉の課題からコロナに関する情報や学校からの連絡内容の把握が十分できていない状況を把握、消毒液を届けながらサポートしていました。
 この間も活動してきた団体は、コロナ以前は出会えていなかった困窮世帯との新たな接点がうまれ、支援世帯数は数か月で倍増しています。5月末の緊急事態宣言解除後は、新しい生活様式が求められる中で、キッチンカーを活用した屋外での活動など、新しいスタイルの活動の模索を続けてます。

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私のおすすめ
◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。

障害者IT支援ボランティアになってみませんか?
 買い物をしたいときや、どこかへ出かける時、また家にいながら友人とコミュニケーションを取りたいときにも、スマホやパソコンなどのIT機器が役立ちます。今回は、障害のある人がIT機器を活用できるよう支援するボランティアに関心がある方のために、当法人も運営に関わっている研修を2つご紹介します。

今月は→(N)神奈川県障害者自立生活支援センターがお伝えします!
 通称KILC(キルク)。1997年4月設立。障害者の自立生活を目指してピアカウンセリング(障害者による相談事業)や各種情報提供、障害者施策の研究・提言など障害当事者の目線で共生社会の実現を目指した活動を展開。現在、厚木・平塚等3カ所の事業所で活動中。
〈連絡先〉 〔法人本部〕〒243-0035 厚木市愛甲1-7-6
TEL 046-247-7503 FAX  046-247-7508
URL:http://www.kilc.org Mail:info@kilc.org

◆障害者IT支援ボランティア養成研修
 障害者IT支援ボランティア養成研修は、障害者のIT利活用を支援するボランティア活動を始めたい方や、ボランティアに関心をお持ちの方を対象に実施しています。
 平成25年度より行われ、昨年度までに160名ほどの方が受講されており、障害者IT支援ボランティアの活動内容や登録方法の説明、障害のある人へのIT支援に際し役立つ機器やアプリなどが紹介されます。昨年度は、神奈川県ライトセンター職員による、視覚障害者への支援の方法も詳しく紹介されました。希望される方は、研修の最後に障害者ITボランティアに登録することもできます。なお、今年度は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンラインビデオ会議システムのZoomを使用した研修が10月に予定されています。

◆障害者IT利活用支援 スキルアップセミナー
 障害者IT支援ボランティア養成研修をすでに受講した方で、さらに支援スキルを向上させたい方に向けて、平成28年度より、スキルアップセミナーが開講されています。
 昨年度は、障害のある人が便利に使えるようにiPhoneやiPadに標準で入っているものの、意外と知られていないアクセシビリティ機能や、役立つアプリの紹介が行われました。加えて、意思伝達装置のデモンストレーションや、海老名市で活動する「えびなパソコンサポートボランティア」のスタッフによるIT支援の現状についての話などを通して、支援スキルの向上を図りました。
 今年度は、障害者ITボランティア養成研修同様、Zoomを使用してのセミナーが10月に予定されています。今年度行われる障害者IT支援ボランティア養成研修とスキルアップセミナーの詳しい日程と内容につきましては、かながわ障害者IT支援ネットワークのFacebookをご参照ください。
 Facebookでは、研修のお知らせの他にも、障害のある人にとって役立つ支援機器やスマホのアプリの紹介や、障害者IT支援に関するイベントやニュースのお知らせも載せられています。ぜひご覧ください。

インフォメーション
■かながわ障害者IT支援ネットワーク
TEL 045-680-5686
URL:https://shien-network.kanafuku.jp
Facebook:https://www.facebook.com/shien.network/

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福祉最前線ー現場レポートー
◎このコーナーでは県内各地の福祉関連の当事者・職能団体等の方々から日ごろの取り組みをご寄稿いただきます。

『めづるくらし』研究会
副会長/制作ディレクター 柳谷  廣之
 出版等さまざまなメディアの制作者を中心に、ボランティア集団として2016年に結成。高齢者・障がい者への健康的生活改善、生き甲斐作りへの情報提供、支援サポートや地域活性化等幅広く活動を行なっています。
〈連絡先〉〒230-0031 横浜市鶴見区平安町1-36-11
URL:http://meduru.webcrow.jp Mail:medurukurashi@gmail.com

〈旅サポーター〉とともに「旅や外出を楽しむ」
 研究会では、専門の人的支援サポート〈旅サポーター〉と共に、県内在住の「高齢者・障がいのある人」が自由に楽しく「お出かけ・旅行」ができるように外出サポート等の支援活動を中心に行なっています。
 〈旅サポーター〉とは、「旅の同行者」です。利用者の個々にあわせた快適な移動から、食事介助や入浴等、旅先で必要となるさまざまなお手伝いをするというところが大きな特徴です。また、近場への散歩や病院への通院、百貨店や美術館、お祭りやイベントへの参加等、安全で安心して「行きたい時に、行きたい場所へ」ご一緒していくものです。
 現在、全国24ヶ所にある日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワークとの連携により、着地サポートの利用も可能です(図参照)。研究会はこの窓口を担っており「県内から県外へ、全国から神奈川へ」の旅等のお手伝いをしています。
 同時に、より広く知っていただくために、サポーターとの交流会や勉強会の実施等を行い、多くの人に参加していただいています。このサポート利用者が増え、認知度が高まり定着していくことによって、外出や旅を可能にする「高齢者や障がいのある人」の積極的行動の促進と社会参加できる環境作りが、地域活性化にもつながるものと考えています。
 また、来年予定の東京オリンピック等、さらに〈旅サポーター〉の需要が増えていくことが見込まれています。そのために現在不足している人材確保として、県内の一般の人や介護経験者まで多くの人が参加できる専門のサポーター育成プログラムの推進と講座の実施、認定を目指しています。将来的には県内に、地域に密着した〈ユニバーサルツーリズム専門組織〉の確立へと続いていくことを望んで、今後も活動を進めていきたいと思っています。

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「お出かけ・旅行、暮しの知恵」の情報誌『切り撮る・ミニマガジン/めづるくらし』を発行
〈写真終わり〉

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県社協のひろば
オンライン研修でいつでも受講-日常生活自立支援事業初任者研修開催
 日常生活自立支援事業は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等、判断能力が十分でないために、福祉サービスの利用等に困難を抱えている方々を対象に、社会福祉協議会が金銭管理等のサポートを行う事業です。本事業の利用にあたっては、本人との契約が前提となり、支援者として、困り事や悩み事について相談を受付け、本人の希望に寄り添い、支援計画を作成する専門員と、契約後、支援計画に基づき定期的に訪問する生活支援員がいます。
 権利擁護推進部では、新たに本事業の担当となった専門員、生活支援員等を対象として、事業の制度理解や、本人の権利擁護を図るための視点を学ぶため、年度初めの早い時期に初任者研修を開催しています。
 本年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を鑑み、グーグルクラスルームとYou Tubeを使用した、動画視聴によるオンライン研修として実施したところ、新任の専門員、生活支援員の他、経験の長い方や管理監督者など、昨年度よりも多い、約90名の参加がありました。
 研修は、本会職員が作成した音声付資料の動画の他、講師として、弁護士の千木良正さんが登壇。「日常生活自立支援事業における法律基礎知識」として、本事業おける「契約」とは何か、本人の意思確認を通じて自立を支援すること等について講義をしていただきました。

〈写真〉
▶動画配信の様子
〈写真終わり〉

 参加者からは、「〝本人の意思を大切にすること〟が記憶に残った」「本人の思いを汲み取るためには信頼関係を築いていかなければならないと感じた」などの感想が寄せられました。
 また、新任の方以外にも、事業理解や自身の振り返りなどのために受講したとの声もあり、柔軟に参加が出来るオンライン研修のメリットを実感できました。
(権利擁護推進担当)

やさしさのおくりもの
母子生活支援施設協議会の全施設に『竹の水鉄砲キット』を寄贈いただきました~短い夏休みにたくさんの笑顔をありがとう~
 児童福祉施設で唯一母子が一緒に生活できる、母子生活支援施設をご存知ですか?県内に10か所あります。
 三菱商事(株)では45年間継続して「母と子の自然教室」を開催しており、県内の施設やひとり親家庭の母子を夏のキャンプに招待いただいています。
 今年度は新型コロナウイルスの影響で開催を見送りましたが、この自然教室で作成する竹の水鉄砲の制作キットを、全施設に寄贈していただきました。
 各施設では職員と一緒に子どもたちが細い竹にスポンジを巻きつけ、自分たちで制作に取り組みました。ある施設では、8月にバスの日帰り旅行に行き、川で水鉄砲遊びを楽しみました。
 施設の年間行事が少なくなっている中、貴重で楽しいひと時を過ごすことができました。
 たくさんの企業・団体から本会会員施設に対して様々な形でご支援をいただきありがとうございます。
(福祉サービス推進部)

〈写真〉
三菱商事㈱のスタッフの皆さんで手作りで竹を切り、水鉄砲キットを作ってくださいました。

川遊び!みんなと水鉄砲で遊んだよ!
〈写真終わり〉

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information
関係機関主催
社会福祉会計簿記認定試験
◇日時=12月6日(日)
◇会場=リロの会議室 関内横浜スタジアム前(横浜市中区山下町252グランベル横浜ビル4階)
◇費用=初級6,600円、中級8,800円、上級(2科目)17,600円※上級の単科目受験は11,000円
◇申込期間=9月14日(月)~11月9日(月)
◇問い合わせ先=(一社)神奈川県福祉研究会
 TEL 042-773-9266 FAX  042-773-0834

寄附金品ありがとうございました
【交通遺児援護基金】(一社)神奈川県指定自動車教習所協会、(株)エスホケン
【子ども福祉基金】脇隆志、(株)エスホケン
【ともしび基金】(福)進和学園しんわ本人自治会連合会、(福)日本医療伝道会総合病院衣笠病院
(合計8件 732,485円)
【寄附物品】神奈川県労働者福祉協議会
【ライフサポート事業】
<寄附物品>(N)セカンドハーベスト・ジャパン
(いずれも順不同、敬称略)

〈写真〉
神奈川県労働者福祉協議会より母子生活支援施設協議会へタオルが寄贈され、吉坂義正会長(右)へ感謝状を贈呈
〈写真終わり〉

神奈川県社会福祉センター整備事業協賛ありがとうございました
◆お詫び◆
 8月号11面掲載「神奈川県社会福祉センター整備事業協賛ありがとうございました」コーナーにて、協賛者の氏名を誤って掲載しておりました。
 お詫びを申し上げますと共に、改めて掲載をいたします。
【7月「神奈川県社会福祉センター整備事業」協賛者】 御薗生和彦
(敬称略 R2.7.26時点)

〈囲み〉
 本会ではセンター整備事業を進めるにあたり、広くご支援、ご協力をいただけるよう協賛金制度を設けております。
 趣旨にご理解、ご賛同いただき、ぜひともご協賛を賜りますようよろしくお願いいたします。
〈囲み終わり〉

福祉タイムズの感想をお寄せください!
 お寄せいただいたご感想・ご意見は、以降の紙面作成の参考とさせていただきます。ぜひ、お聞かせください。
◇問い合わせ先=企画調整・情報提供担当
TEL 045-311-1423
Mail:kikaku@knsyk.jp

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かながわほっと情報
幸せを共有できる場所を目指す
生活介護事業所FLAT(川崎市幸区)
 FLATは、今年の1月、川崎市にあるコトニアガーデン新川崎にギャラリーを持った生活介護事業所としてオープンしました。
 以前から市内でアートを教えていたという理事長の大平暁さんは「障害のある方で、支援学校を卒業したばかりの人や絵を描きたいと思っている人たちがいても、働く施設として行くところが作業所しかない。障害者の人がクリエーターになれる場所があってもいいのではないか」とオープンへの想いを語ります。

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大平さんは、「障害がある・なしにかかわらず、その人のアートで作成者・地域住民もみんなが幸せを共有できる場所を目指したい」と語ってくれました
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 普段は、ギャラリーに展示スペースを設けていました。近隣の高齢者施設の方や地域住民にも来所頂き、展示作品にコメントをもらったり、来場者のリクエストに応えて利用者がイラストを描いたりと、利用者と近隣の方との交流の場となっていました。
 しかし、コロナ感染対策のためギャラリー公開は中止。現地での交流が難しくなってしまいました。その為、You Tube等のオンラインを使った、WEBギャラリーの開設を試みたそうです。最初は不安の中、試行錯誤しながらのスタートだったと言います。その中で「認知症になりいろんなことに反応を示さなかった母が、FLATで描かれた作品に突然反応した」という感想が寄せられ、大平さんは「自分たちも元気をもらった」と話します。
 最近では、レジ袋有料化を受けて、利用者のアート作品をプリントし、エコバックの販売を始めました。多くの方に購入をして頂くことで、評価や利用者のモチベーション上昇につながっています。今までの作品では描かなかったような絵を描き始めた方や、一般企業と提携しデザインを発案されている方もいるそうです。

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FLATで手掛けているアートやエコバッグ・Tシャツ
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 取材で訪れたギャラリーには絵画や動物の絵など、繊細で魅力的な作品が多くありました。想いを込めて、描かれた絵には心動かされるものがあると、あらためて感じ、アートは誰もがチャレンジでき、人の心を豊かにするものだと教えて頂きました。
(企画調整・情報提供担当)

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◆いきいきとした制作の様子はこちら!
活動の様子やWEBギャラリーの更新情報は「studioFLAT」のホームページに掲載されています
URL:https://studioflat2016.wixsite.com/studioflat

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