福祉タイムズ

Vol.827(2020年10月号)

このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.827(2020年10月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。

テキストデータ作成に当たって
 このデータは、『福祉タイムズ』 vol.827 2020年10月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
 二重山カッコは作成者注記です。

P1
福祉タイムズ ふくしTIMES
2020.10 vol.827
編集・発行 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会

特集…P2
地域共生社会の実現、包括的支援体制の構築に向けて
社協の視点で「地域共生社会」をとらえなおす-「かながわの社協指針2020」から
NEWS & TOPICS …P4 住民活動と専門職で目指す「みんなで参加して共につくる社会」
 …P6 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第4回 利用者の生活を守るために 施設間の連携
県社協のひろば…P10 コロナ禍における課題、地域共生社会に向けた課題 共有に向け

◆今月の表紙 介助犬。お仕事で靴を脱がす!【詳しくは12面へ】撮影・菊地信夫(きくちのぶお)〉

P2
特集
地域共生社会の実現、包括的支援体制の構築に向けて
社協の視点で「地域共生社会」をとらえなおす-「かながわの社協指針2020」から
 地域共生社会の実現、包括的支援体制の構築にむけた動きが本格的に始まろうとしています。本会市町村社協部会では、こうした動きの中で、市町村社協が住民と地域の福祉関係者の協働による地域福祉推進の中核的組織として、その使命・役割を十分に発揮していくため、今年3月にこれからの社協の事業・活動の方向性を「かながわの社協指針2020」としてまとめました。
 今回は、この指針策定の背景等に触れながら、市町村を主体とする包括的支援体制の構築に向けて、住民や地域の福祉関係者との協働による社協事業・活動のこれからの方向性についてお伝えします。

「地域共生社会」の必要性
 個人や家族が抱える生きづらさや生活課題の多くは、これまで家族や親族、近隣住民を中心に対応されてきました。しかし、少子・高齢化や人口減少、血縁や地縁、住民同士の関係性の希薄化や、地域社会の共同体としての機能低下が進み、今、私たちの暮らす地域社会では、社会的孤立など関係性の貧困による課題や、8050問題、ダブルケアなど、課題が複合的に存在しており、複雑化する状況が深刻となっています。
 こうした中、すべての住民が支え合い、制度や分野の領域を超えてつながり、「我が事・丸ごと」で進める「地域共生社会」の必要性と、この実現に向けた具体策の検討やモデル事業の実践、関連法の改正などが進められてきました。今年6月に成立した社会福祉法改正は、地域共生社会の実現に向けた中心的な政策であり、複雑化・複合化する福祉課題に対応した「包括的支援体制」の構築が主眼となっています。

「包括的支援体制」とは
 「包括的支援体制」は、誰をも排除しない「ソーシャルインクルージョン」(社会的包摂)の概念を取り入れたもので、社会福祉法改正の前段となった「地域共生社会推進検討会」で示された考え方です。福祉課題の複雑化・複合化を受け、これからの対人支援には図のように「具体的な課題解決をめざす」支援と「つながり続ける」支援の両方が必要で、また、「伴走型支援」と「地域住民の気にかけ合う関係性」によるセーフティネットが必要であること。また、これらの実現に向けた「断らない相談」「参加支援」「地域づくり」を市町村域で一体的に推進する「包括的支援体制」の必要性が示されています。

〈資料〉
資料:「地域共生社会推進検討会最終とりまとめ」(2019年,厚労省)をもとに加工
〈資料終わり〉

「包括的支援体制」と社協
 社協は従来から支え合いや見守り、相談活動などを通して地域の相談支援機関や民生委員児童委員と連携して個別支援を行い、住民とともにボランティア活動や地区社協活動等、地域づくりを進めてきています。「かながわの社協からの提案2014」では、こうした「個別支援」「地域支援」の2つの機能の存在を社協の特徴としてあげています。また、この2つの機能を一体的に動かして、住民のさまざまな生活課題に対し、目の前の問題解決から、予防を含めた地域づくりまで、住民や地域の福祉関係者とともに総合的に展開する取り組みを「社協の総合相談」と整理し、これにより地域福祉の推進をはかる必要性を伝えています。(図参照)
 今般の政策としての「包括的支援体制」の考え方は、この「社協の総合相談」の展開による地域福祉の方向性と重なるものがあります。基本的な考え方や方向性を行政と社協が共有し、既存のものを生かしながら、地域の実情に即したしくみを再構築し、関係機関と協働の取り組みを進める必要があると言えます。

〈資料〉
資料:「かながわの社協からの提案2014」(2014年,神奈川県社協市町村社協部会)をもとに加工
〈資料終わり〉

P3

事例―伴走型支援と継続したつながりづくりの実践から
 小田原市社協(以下、「市社協」)は、今般の法改正に向けて実施された国のモデル事業を受け、「福祉まるごと相談」(以下、「まるごと相談」)を平成29年から始めました。
 市社協は古くから地区社協を組織化し、住民による見守りや助け合い活動、地域の担い手づくりを進め、地域密着の、住民に寄り添う活動を育んできました。同時に生活福祉資金、在宅福祉サービス等を通して個別課題に対応し、相談支援を行ってきましたが、モデル事業を受け、事業の枠組みを超えてより幅広く相談を受け止める必要性と、住民や関係者へのわかりやすい発信という観点から、「福祉まるごと相談」の看板を掲げ、事業をスタートさせました。
 まるごと相談に寄せられる相談は、住民のほか、民生委員児童委員、地域包括支援センター、ケアマネジャー、行政とさまざまで、それぞれの立場から対象者に関わる中で、家族や周囲の人の生活問題を把握することとなったケースが多くあります。
 民生委員児童委員Aさんからの相談は、80代の両親と同居する50代の息子に関するものでした。もともとは高齢夫婦の見守りのため世帯訪問していましたが、ある日、母親から息子に関する悩みを打ち明けられました。「仕事が長続きせず、父親との関係も悪化、親亡き後を考えるとどうしたら…」。まるごと相談では、Aさんと一緒に母親の話を聞き、息子自身が相談窓口に行く気になるよう、働きかけを進めました。
 しばらくたってAさんから連絡があり、息子との面談を自宅で実施。生活状況の改善や就労について本人の意思が確認できたため、就労支援の窓口(生活困窮者自立支援事業)と調整し、まるごと相談のスタッフも同行して就労支援の相談員と面談を重ね、就労につなげていきました。
 しかし、継続的に働いた経験なく50代まで過ごしてきた人が、安定した就労生活を送るには、この先も見守りや、時として専門職の支援の必要性が想定されます。大切なのは、この世帯とのつながりを切らせないこと。Aさんには引き続き母の相談相手として世帯全体を見守る支援をお願いし、まるごと相談では、Aさんと就労支援の相談員と連携をとりながら、息子の就労継続に向けた支援と世帯全体の生活安定に向けた支援を続けています。

「かながわの社協指針2020」が目指すもの
 コロナ禍の影響が長引く中、医療や経済的側面だけでなく、さまざまな生活課題を抱える世帯がさらに増加します。事例にあるような伴走型支援、個別支援にあたっての多様な関係者の協働、地域の見守りなど住民による活動、それぞれの取り組みが総合的に展開されることが、これから一層大切になってきます。
 「かながわの社協指針2020」では住民ニーズへの立脚、住民および地域関係者との協働による事業・活動の推進等、社協の原点に立ち返りつつ、
①あらゆる相談をまず受け止める
②問題の早期発見と必要な支援につなぐ力をもつ人を地域に増やす
③複雑化・複合化する福祉課題に対し、より多くの関係者とつながり地域に重層的なネットワークをつくる
などの必要性をあげています。

〈囲み〉
「かながわの社協指針2020」の5つの指針
指針1 「地域共生社会」「包括的支援体制」に対する社協のビジョンの確立
指針2 「個別支援」と「地域支援」の2つの機能をつなぐしくみ・体制の確立
指針3 「断らない相談支援」の推進
指針4 地域共生社会における「地域支援」の充実
指針5 県社協(市町村社協部会)の取り組みの充実
〈囲み終わり〉

 社協は、「住民および地域の福祉関係者の参加により地域福祉を推進する組織」と法律で位置づけられていますが、それは、社協が行政とともに地域福祉推進の中核を担うこと。言い換えれば、住民主体の地域福祉を進め続ける役割と責任があることを意味しています。
 今回の指針は、社協がその使命・役割を果たすために取り組むべきことを示していますが、これらは住民の方々、民生委員児童委員、地区社協、社会福祉施設、ケアマネジャー、各種相談支援機関等々、関係者との協働なくしてはなりたちません。一人の不幸も見逃さないまちづくり、だれもが支え合い「ここに住んでいてよかった」と思えるまちづくりを、地域の関係者とともに進めていくために、本会市町村社協部会では、この指針をもとに各市町村社協の事業・活動、組織運営の強化・充実に取り組んでいきます。
(地域福祉推進担当)

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NEWS&TOPICS
住民活動と専門職で目指す「みんなで参加して共につくる社会」ー(福)横須賀基督教社会館の取り組みから
 社会的孤立や生活困窮など、複合的な生活課題を抱える世帯が増えています。一つの制度だけで対応することは難しく、住民活動と制度を組み合わせて、生活しやすい地域をつくり対応することが求められています。
 では、住民活動と専門職の関りで目指す地域づくりとは、どのようなものなのか。(福)横須賀基督教社会館(以下、社会館)の取り組みから考えます。

 社会館のある横須賀市田浦地域は、自然が豊かで人口約1万8千人、高齢者が多く、住民活動が大変盛んです。その場所で障害者、高齢者、子ども、地域福祉の分野と、多岐に渡る事業を実施しています。
 社会館が大事にしていることは、地域の社会福祉施設としての「地域活動」であり、「子どもも高齢者も障害者も、さまざまな人が共に暮らす地域社会をつくることが大切」という福祉の理念を理解してくれる人を増やすため活動しています。住民が福祉サービスの利用やボランティアなどの住民活動に参加することを通じ、長い時間をかけ住民と共に、福祉の土壌づくりを進めています。

◆住民主体の活動と専門職の協働
 50年にわたる町ぐるみの福祉バザーも住民活動のひとつです。自治会や学校、民生委員児童委員、保護者会など15団体で構成される実行委員会が主催。当日は、デイサービス利用の高齢者や子どもたち、学生ボランティア、保育園の現役保護者や卒園児保護者など、利用者や住民が一堂に会して交流する場を地域と協働でつくり出しています。
 また、地域の子どもたちが福祉にふれ、福祉の良さを知り、理解者、協力者となっていくことを目的に、福祉教育にも力を入れています。社会館が持っている福祉の価値と理念を生かし、地元の小中学校と共に子どもを育てていく取り組みを行っています。地域にさまざまな人が暮らし、多様な価値観があると知ることは、子どもたち自身の考えを広げることにつながっていきます。

〈写真〉
50年間続く地域ぐるみの福祉バザー
〈写真終わり〉

 その他、地域育児センター事業では、職員とボランティアが親子に関わり、街中で出会ったときに声を掛け合える関係性が自然に生まれています。地域の中で見守り、声をかけてくれる人の存在は、子どもにも親にもうれしいこと。そして支え合う地域づくりにもつながります。

◆個別支援から地域づくりへー今後の課題
 社会館の総合相談窓口に寄せられる相談の中には、地域の課題として考え、対応していく必要があるものもあります。例えば、高齢者のごみ捨てなどの仕組みづくりは、なかなか難しく、どこの地域でも課題のひとつです。
 「生活課題の解決に向けた取り組みは、住民同士の助け合い、その関係作りや直接支援をする専門職、そして行政とが、それぞれの責任に基づき役割を分担し協働することが必要です。これらを丁寧につなげていくことが、地域の総合相談支援における個別支援と地域活動の連携であり、住民と専門職で共に地域の福祉を高めていくことにつながります」と社会館地域福祉センター施設長の松澤拓也さんは語ります。

◆地域づくりに向けて
 住民の困りごとや、地域が直面している状況に応じて、柔軟に活動を展開できることが住民活動の強みです。そこに専門職が関わり、住民と共に生活しやすい地域をつくっていく。その土台には福祉の土壌づくりがあることが、社会館の実践から見えてきます。
 それぞれの地域の事情や関係性などの特長を生かし、地域づくりをするためには、住民主体の活動を専門職が支援する方法やそれを担う職員の人材育成などが必要になります。
 本会は、さまざまな分野の会員をもつ協議会であること生かし、専門職が住民と共に地域づくりをしている事例の共有や情報交換、地域でコーディネートを担う人材の育成などを検討し実施していきたいと考えています。
(企画調整・情報提供担当)

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福祉のうごき 2020年8月26日~9月25日
●災害ボラセン、人件費の一部国庫負担へ
 政府は28日、災害ボランティアセンターで働く職員の人件費の一部を災害救助法における国庫負担の対象とすると発表した。2020年7月の豪雨災害から適用する。対象は、被災地の災害ボラセンで働く社協職員の残業代や他の地域から派遣される社協職員の旅費など。

●緊急小口資金・総合支援資金の申請期間を12月末まで延長
 厚生労働省は、個人向け緊急小口資金及び総合支援資金の特例貸付について、令和2年9月までとしていた申請期間を12月末までに延長する方針を固めた。予算は予備費から支出するとのこと。

●待機児童1万2,439人、調査開始以来最小に
 厚生労働省は4日、認可保育所に入所できない待機児童が昨年より4,333人減り、1994年の調査開始以来最小の1万2,439人になったと発表。保育所の箇所数と定員数の増加が減少につながったとみられる。

●県内100歳以上の高齢者、4,362人
 県内の100歳以上の高齢者は前年に比べ429人増の4,362人となり、過去最多を更新した。最高齢は大和市在住の女性で111歳。男性は平塚市在住の109歳。人口10万人当たりの高齢数は47.42人であった。

●雇用主、上司による障害者虐待は771人
 厚生労働省は28日、「2019年度使用者による障害者虐待の状況等」を発表。虐待の通報、届出の対象となったのは771人で、このうち知的障害の方が最も多かった。受けた虐待の種類は「経済的虐待」が、業種では「製造業」が多かった。

●横須賀市、助産師を派遣し母子支援。訪問型産後ケア開始
 横須賀市は、生後4カ月までの乳児がいる家庭に助産師を派遣し、母親の体のケアや乳児の健康観察などの支援を行う「訪問型産後ケア」事業を1日から開始した。利用料は、2時間までで1回4,000円。7回まで利用できる。

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連載 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第4回
利用者の生活を守るために 施設間の連携
 社会福祉施設では、コロナ禍にあっても、感染症予防策の徹底やさまざまな工夫によって、福祉サービスを維持し、利用者の生活を守っています。しかし、対面での援助・介護が基本となる施設現場において、感染リスクは依然としてあります。
 施設職員で感染者が発生した場合には、入院や自宅待機等により職務にあたることができなくなります。感染者本人のみでなく、濃厚接触者として勤務できなくなる職員が出ると、人手が足りず、従来の施設運営が難しくなることが懸念されます。このような事態を避けるとともに、サービスの提供が途切れることで施設利用者の生活が困難になることを防ぐため、県では、支援体制の整備を進めています。
 連載第4回目の本紙では、本会が県から受託している、「社会福祉施設等応援職員派遣等調整事業」の取り組みから、社会福祉施設間の連携について考えます。

利用者の生活を守る社会福祉法人が発揮すべき役割
 社会福祉は、古くは慈善事業や救済事業等、困窮者の生活を支援する取り組みから発展して生まれたものであり、現在では高齢者や障害がある方、また生活困窮者の生活を支援することも社会福祉事業のひとつとしてあります。
 本会では、これまでに「かながわライフサポート事業」にて、本会会員を中心とした県内社会福祉法人と連携しながら、生活相談支援事業を行い、社会的責務を果たすべく、実践を行ってきました。
 このコロナ禍においても、社会福祉法人が担う役割は変わりません。社会福祉事業の取り組みを行い、要支援者の生活を守ること。役割、使命を変わらず果たして行くためにも、感染症対策を行いながら、どのように福祉サービスを維持していくのか。連載第2回では、制度等の整備や工夫した取り組みが進められている社会福祉施設現場の様子を紹介しました。
 しかし、施設現場での感染リスクは依然としてあり、新型コロナウイルス感染症の感染者や濃厚接触者が出た場合、該当者の入院、自宅待機によって、勤務可能な施設職員が不足することが考えられます。このことから、従来の福祉サービスの提供、施設の運営が難しい状況になってしまうのではないかと懸念されています。

施設間での「職員派遣」
 県では、この課題に対し、現場職員が対応に追われることで起こりうる混乱や、施設利用者の生活が損なわれることを防ぐため、「社会福祉施設等応援職員派遣等調整事業」を立ち上げ、社会福祉施設への支援体制整備を進めています。
 これは、施設利用者や職員が感染したことにより、利用者支援の継続が困難となる施設に対し、派遣可能な施設あるいは短期雇用が可能な方が登録された名簿の中からマッチングを実施し、応援職員を派遣するというものです。また、県では応援職員の派遣にかかる経費の一部を負担し、県内の社会福祉施設同士で新型コロナウイルス感染により不足した人手を補えるように体制を整えています。(図を参照)
 本会では5月より、本事業における派遣可能施設及び短期雇用可能者の名簿作成と派遣実施時の派遣職員のマッチング等の業務を受託しており、要請に応じて派遣調整を実施しています。
 派遣可能施設及び短期雇用可能者については、ホームページや文書による依頼等を通じて名簿登録への協力を依頼しており、現在、派遣可能施設45法人・施設123名、短期雇用可能者16名の登録があります。
(9月24日現在)

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施設同士での連携その土台として
 今日では「ウィズコロナ」や「新しい生活様式」といった感染症ありきの生活のあり方が提唱されています。社会福祉施設においても、感染防止ばかりでなく、感染があった場合に備えていく必要があると言えます。
 令和2年6月に改正された社会福祉法の中には「社会福祉連携推進制度」が新たに盛り込まれています。今後多様化・複雑化していく福祉ニーズへ対応していくことに加え、災害などの非常時においても福祉サービスの提供が継続できるよう、複数の法人間で協力関係を築いていくことを推進するもので、「法人間連携」はより一層重要なものとなってきています。
 派遣可能施設として登録した施設からは、派遣による応援を行う仕組みについて「困ったときはお互い様。互いに助け合いたい」と協力していただいています。実際に派遣を要請した施設からは、派遣期間が終了した後に、派遣可能施設として名簿の登録を申し出たところもありました。
 コロナ禍にありながらも、福祉サービスの提供を維持していくために、施設同士の助け合いによって、神奈川の福祉を守っていけるよう、連携への土台としてこの事業が根付きつつあるように思います。
 応援職員として派遣先の施設で勤務にあたった職員の中には、「他施設での勤務は、自分の職場とはまた違うものがあり、勉強になった」と感想を述べる方もいました。福祉サービスの質の維持としての事業ではありますが、法人・施設を越えての交流や関わりによって新たな発見が生まれ、質の向上につながる可能性も秘めているかもしれません。
 本事業の取り組みによって、これからの福祉に向けて、社会福祉施設や社会福祉法人が自施設・自法人の枠を越えた連携・協働のあり方を考えていく、そのきっかけになることが期待されています。
(企画調整・情報提供担当)

〈囲み〉
派遣可能施設名簿へ登録をお願いいたします
本事業の詳細、登録様式等の資料はホームページをご覧ください。
URL:http://www.knsyk.jp/s/shiru/ouennbosyuu_corona2.html

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私のおすすめ
◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。

4/2世界自閉症啓発デー 小田原城ブルーライトアップ
 国連が定めた「世界自閉症啓発デー」の4月2日、小田原城が鮮やかなブルーにライトアップされました。
 小田原城のカラーライトアップの取り組みは、実はこの日が初めて!
 ちょうど桜も満開の中、通常のライトから城がブルーに変わった瞬間は幻想的でした。夜桜見物に訪れた人達も青い羽衣をまとったようなお城にむけてシャッターをきっていました。

今月は→神奈川県自閉症協会がお伝えします!
 1968年設立。横浜市・川崎市を除く県内11地区の自閉症児・者親の会による連合会です。
 行政施策の研究・提言、当事者・家族のためのミーティング運営、療育者等に向けた勉強会・セミナー運営等、自閉症児・者と家族の支援や、自閉症スペクトラムの理解を進めるための活動を各市町村及び県に向けて展開しています。
〈連絡先〉Mail:info-kas@kas-yamabiko.jpn.org URL:http://kas-yamabiko.jpn.org

 ライトアップは啓発デーのシンボルカラー・青色で建物などを照らし、自閉症への関心を高め啓発していく試みで、県内では日産スタジアム、コスモクロック、八景島シーパラダイス、江の島シーキャンドル、大磯プリンスホテルなどで実施されています。全国的にも展開されており、大阪城や通天閣、和歌山城など年々広がりを見せてきました。
 神奈川県で唯一の天守閣、“小田原城もブルーにライトアップして欲しい!!”私たち県西地区自閉症児・者親の会(県西やまびこ会)でもそのような思いが高まっていましたが、小田原市から「カラーにできる装置がない」と聞いていたので「あぁ、残念…」と諦めていました。
 そんな折、市の障がい福祉課の方から連絡をいただきました。令和元年度に照明の改修工事をし、LEDに変えたことで、4月1日からさまざまな色を出すカラーライトアップが可能になったとのこと。「自閉症啓発デーにどうでしょう」と、ご提案いただきました。
 そこで、まずはトップバッターとして4月2日の世界自閉症啓発デーのブルーライトアップとなったわけです。
 日没からライトアップが始まりますが、カラーになるのは基本的には20時から30分間と決まっているそうです。その時間の前後に行けば通常のライトアップとカラーライトアップの両方が見られるという訳ですね。
 「世界自閉症啓発デー」のブルーライトアップの日は、桜の満開と相まって、本当に“日本の美”という感じでした。
 ライトアップを見た人たちに「今日はなぜ青色なの?」「それは自閉症啓発デーだから」ということが浸透していってくれるよう、来年度以降も継続していきたいです。そして、多くの人に自閉症や発達障害への理解が広がることを願っています。

インフォメーション
 今後のライトアップスケジュールは、小田原城のホームページからご覧になれます。
URL:https://odawaracastle.com/news/color-raitoappu.html

※この記事は、6月号への掲載を予定しておりましたが、コロナウイルス感染症の拡大により、今号に掲載しています

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福祉最前線ー現場レポートー
◎このコーナーでは県内各地の福祉関連の当事者・職能団体等の方々から日ごろの取り組みをご寄稿いただきます。

里親センターひこばえ
担当責任者 矢内陽子
 県内の里親支援機関の統括的役割を担い、総合的かつ広域的な調整を行う支援拠点として、「普及啓発」や「里親支援」などの活動をしています。
〈連絡先〉 海老名市国分南1-28-12 MSビル301
TEL 046-205-6092 URL:http://www.sato-hikobae.org
開所日:月・水・金・土 午前10時~午後4時

「子どもたちのしあわせのために」
 里親センターひこばえは県の委託を受け平成27年6月に海老名市で開所しました。
 主に行っている「里親制度普及促進事業」では、里親になってくれる方だけでなく、里親制度を理解してくれる方を増やすために、商業施設や地域のイベントでのパネル展示や、民生委員向けに制度説明を行う等の普及活動を行っています。里親家庭が生活している地域の中で、里親制度を理解し、応援してくれる方々の存在は里親家庭を支える大きな力になります。
 また「里親支援強化事業」では、里親向けの研修やサロンを開催しています。里親養育は「途中からの養育」である難しさがあり、里親同士で話し合い、相談できる場所が必要になります。
 その他にも、児童相談所等と連携しながら里親委託の推進に取り組む「里親委託推進事業」や、養子縁組に関する相談対応等を行う「養子縁組対応事業」の活動があります。

〈写真〉
▷地域のおまつりでの普及活動の様子
〈写真終わり〉

 これらの活動を通して課題に感じていることは「里親制度」の理解が社会に広まっていないということです。「里親」という言葉の認知度は上がってきていると感じますが、「里親制度」と「養子縁組制度(※)」を混同している方が多いのが現状です。里親を必要としている子どものニーズは多様化していて、さまざまな活動ができる里親が求められていることを1人でも多くの方に理解していただけるよう、普及活動を充実させていきたいです。
 また、里親家庭への支援が足りていないという課題もあります。十数年前に比べ、里親支援機関や里親支援をする職種等、里親が相談できる窓口は増えてきていますが、里子が相談できる支援体制は整っていません。当事者の声をきちんと聞くことのできる体制作りが必要だと考えます。
 現在、国ではさまざまな事情により親元で暮らすことのできない子どもたちが、家庭環境で生活できるよう里親委託の推進に力を入れています。そのためには里親の数を増やしていく事と同時に、里親家庭を支える仕組みを強化していく必要があります。1人でも多くの子どもたちのしあわせのために、ひこばえができることを1つ1つ積み重ねていきたいと思います。
※民法に基づいて法的な親子関係を成立させる制度。里親制度は一時的に子どもを預かり養育する制度。その点で養子縁組制度とは大きく違いがある

P10
県社協のひろば
コロナ禍における課題、地域共生社会に向けた課題 共有に向け-令和2年度政策提言集発行
 本会では、平成23年より政策提言委員会を設置し、社会状況の変化や社会福祉の課題に対し、日頃から社会福祉の現場で活動している本会会員の声を施策に反映されることを目指して、取り組みを行ってきました。
 本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響により、部会・協議会代表者へのヒアリングを中止する等、例年通りには活動できませんでした。しかし、コロナ禍における課題は多く、県へ発信し、会員間で共有すべきと考え、正副委員長の了承のもと、提言集を発行しました。
 本提言集は、大きく二つの項目に分けて課題等を整理し、まとめています。
 ひとつは「新型コロナウイルス感染症に関する提言」とし、本会部会・協議会等で実施したアンケート調査や届けられた提言等の内容を基に課題をまとめ、コロナ禍においても社会福祉事業や活動が行えるよう、支援を求める提言をしました。
 もうひとつは、「地域共生社会の実現に向けた提言」とし、社会福祉課題把握調査を基に取り組みに際しての課題をまとめました。社会福祉法の改正により、包括的支援体制づくりや地域での連携・協働の推進が、より一層重要な課題となってきました。このことで、体制整備への支援をはじめ、広域的な課題に対し役割を発揮していただくよう、特に県に求める内容となっています。
 提言集は印刷製本後、県への提出の他、本会会員へ配布を通じて課題共有を図っていきます。また、本会ホームページへの掲載も予定しております。
 コロナ禍で生活様式に大きな変化が出つつありますが、事業展開や地域共生社会への活動に向け、公私協働で取り組む際の一助とすべく、本提言集にて課題の共有を図っていきます。
(企画調整・情報提供担当)

やさしさのおくりもの
ともしび基金の果実を活用した活動支援~ココロはずむアート展実行委員会~
 ココロはずむアート展実行委員会は、横浜市北部に所在する11か所の障害者通所事業所の利用者(作家)が制作したアート作品を展示する企画を行っています。平成23年に第1回を開催してから今回の開催で10回目を迎えました。
 年々参加する作家の人数や会場も増え、今年度は90人程の作家が参加。青葉区のスペースナナを皮切りに、5か所の会場で開催されます。
 ともしび基金では今年度、この展示にかかる経費の一部を助成しています。
 コロナ禍で自宅待機をしていた方の中には、普段事業所で使っている弁当の帯や商品を入れる袋などに絵を描いて、自宅での時間を過ごされた方がいました。出来上がった作品集には、その時の様子を振り返って「わたしたちのちかくには いつでもアートがありました」という言葉が添えられ、前例のない状況の中でも、制作に打ち込む時間が心の支えになった様子が伺えました。
 既成概念にとらわれない自由な作品を通し、障害と共に生きる作家たちを身近に感じてもらえるようにと、展示期間中にはイベントも企画しています。

〈写真〉
展示された作品例
〈写真終わり〉

 11月14日(土)には「作家を語る・作家が語る」と題し、アートが生まれるその時を、施設職員と作家が語る報告会があります。
 人と人との接触が難しい状況が続く中ですが、展示作品を通して作家の息遣いを感じてみるのはいかがでしょうか。
 (地域福祉推進担当)

〈囲み〉
●今後の展示予定(一部開催済)
・カプカプ竹山 9/30(水)~10/16(金)
・カプカプ川和 10/21(木)~11/6(金)
・アート屋わんど 11/11(水)~11/27(金)
・えだ福祉ホーム 1/12(水)~1/29(金)
※期間中定休日あり。
問い合わせは実行委員会代表石井将隆さん宛にカプカプ川和(045-938-5801)へ。
〈囲み終わり〉

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information
本会主催主催
令和2年度 苦情解決研修会
◇テーマ=「苦情を生まない支援を考えてみよう」
◇日時=11月24日(火)午後1時~午後4時
◇開催方法=Zoomミーティングによるオンライン研修
◇内容=苦情につながらないための組織的な対応について、講義と演習を通して学ぶ。
[講師]行實志都子氏(県立保健福祉大学准教授/かながわ福祉サービス運営適正化委員会苦情解決委員会委員)
◇費用=1名 3,000円(税込)
◇対象=県内社会福祉事業者の苦情受付担当者または苦情解決責任者など、苦情対応に携わっている職員
◇定員=50名
◇申込方法=10月30日(金)午後3時までに所定の様式にてメールにて申込。申込書はホームページよりダウンロード
◇問い合わせ先=かながわ福祉サービス
 運営適正化委員会事務局
 TEL 045-312-1121(代) Mail:tekisei@knsyk.jp URL:http://www.knsyk.jp/c/tekiseika/6acc08c531b05a23bfae8ce33
6876827

〈囲み〉
福祉研修センターのHPを開設!
県社協実施の研修等の情報はこちらから→ https://www.kfkc.jp/
〈囲み終わり〉

寄附金品ありがとうございました
【交通遺児援護基金】(株)エスホケン
【子ども福祉基金】(株)エスホケン、脇隆志
【ともしび基金】広瀬公子、石田隆
【寄附金】福田勝樹
 合計9件 91,698円)
【ライフサポート事業】
<寄附物品>(N)セカンドハーベスト・ジャパン
(いずれも順不同、敬称略)

神奈川県社会福祉センター整備事業
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かながわほっと情報
「ほじょ犬」は自立と社会参加のための大切なパートナー―(福)日本介助犬協会(横浜市港北区)
 身体障害者補助犬法は平成14年10月1日に施行されました。
 補助犬とは、「盲導犬」「介助犬」「聴導犬」の総称です。
 今回は「補助犬」の1つである「介助犬」について横浜市にある(福)日本介助犬協会でお話を伺いました。
 「介助犬」は、手足に障害がある人の日常生活動作をサポートする役割を果たしています。物を拾ったり、渡したり、指示したものを持ってきたり、脱衣介助等を行います。仕事中は「介助犬」と表示されたビブスを着るのが決まりです。
 介助犬について障害のある方々と話をすると、「高齢者になってから」「自分よりも重度の障害のある人が必要としているのであれば、そちらの方を優先してください」と躊躇する方が多いといいます。
 専務理事・医学博士の高栁友子さんは、「遠慮などはせず、介助犬に興味が沸いたら、ぜひ、介助犬との暮らしをイメージしてみてください。自分の生活が大きく変わるきっかけになるかもしれません」と呼びかけます。
 ユーザーからは、介助犬が生活に加わったことで、今まで引きこもり気味だったり、マイナス思考だったけれど、「この子を不幸にしてはいけない」と思うようになり、「規則正しい生活をすることになった」「健康になった」「充実した生活が送れるようになった」という声も多く聞かれるようになったといいます。
 しかし、介助犬の認知度はまだ低く、さらに、コロナ禍の影響で今年はPR活動ができず、新規のユーザーとマッチングすることが難しい状況といいます。その中でも、介助犬を知ってもらおうとリモート説明会を開始すると、参加者から「自宅で説明が受けられ、話しているうちに介助犬が自宅で共にいる姿を想像しやすい」という意見があり、今後も継続していくことにしたそうです。
 最後に「皆さんへお願いがあります」と高栁さん。「介助犬を見かけたら、よく『かわいいねー』『お仕事大変ねー』等の声掛けや、じっと見つめてくる方がいますが、介助犬は人とふれあうことが好きなので反応してしまいます。なので、できれば『いるけどいない存在』として扱ってほしい」とのことでした。
 介助犬に対する理解が深まり、彼らが活躍できる場が広がり、利用している人の自立と社会参加に繋がってほしいと思います。
(企画調整・情報担当)

〈写真2点〉
▲飲み物を運ぶ介助犬
▲携帯電話を探して持ってきた様子
〈写真2点終わり〉

〈コラム〉
まめ知識
◆盲導犬…目が不自由な方への介助
◆聴導犬…耳の不自由な方への介助
〈コラム終わり〉

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【発行日】2020(令和2)年10月15日(毎月1回15日発行)
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