テキストデータ作成に当たって
このデータは、『福祉タイムズ』 vol.829 2020年12月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
二重山カッコは作成者注記です。
P1
福祉タイムズ ふくしTIMES
2020.12 vol.829
編集・発行 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会
特集…P2 受審事業者自らの課題等の気づきを促す~福祉サービス第三者評価を受審してみませんか~
NEWS&TOPICS…P4 権利擁護支援体制全国ネット開設/令和2年厚生労働白書公表
連載…P6~P7 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第6回 きっかけは「コロナ」新たな連携・つながり
県社協のひろば…P10 令和2年度神奈川県社会福祉協議会会長顕彰・神奈川県共同募金会会長顕彰合同授与式/「令和3年度地域福祉活動支援事業」のご案内
▶今月の表紙 コロナの中、助け合って元気な生活を!【詳しくは12面へ】撮影・菊地信夫(きくちのぶお)〉
P2
特集
受審事業者自らの課題等の気づきを促す~福祉サービス第三者評価を受審してみませんか~
福祉サービスを提供する事業者(以下、事業者)自らが、第三者の客観的な視点を踏まえ福祉サービスの「質」の向上を目指し、事業者の主体的な取り組みとして導入された「福祉サービス第三者評価事業」(以下、第三者評価)。一度受審すれば、その効果が実感できて定期的な受審につながっていきますが、県内では事業種別や地域によって受審率に偏りがあります。
本号では平成30年度に県・横浜市・川崎市・本会かながわ福祉サービス第三者評価推進機構(以下、推進機構)が協働で実施した第三者評価事業見直しの趣旨を踏まえ、第三者評価の意味や目的を再確認するとともに、第三者評価受審促進に向けた支援策、県内評価機関の活動状況等を紹介しながら、第三者評価受審促進について考えていきたいと思います。
福祉分野の第三者評価
福祉分野の第三者評価とは社会的により望ましい福祉サービスを目指して、第三者の客観的な視点で福祉サービスの「質」を評価して、その結果を公表することです。
平成16年に厚生労働省が都道府県に通知した「福祉サービス第三者評価事業に関する指針(以下、指針)」に基づき実施されています。
任意の制度として始まった第三者評価ですが、各分野における位置づけは異なり、平成30年に行われた指針の改正によって、評価の実施や公表が義務化された分野もあります。
児童養護施設等の社会的養護施設においては、平成24年度から措置費の加算が入り、3年に1回以上の第三者評価の実施と評価結果の公表が義務づけられました。
認可保育所では、5年に1回の受審が努力義務化され、公定価格への加算により受審料が補助されます。高齢・障害分野では、事業者の自主性を重視した任意の仕組みという位置付けから補助はありません。
また、厚生労働省は、福祉サービス提供開始時の重要事項説明に第三者評価の実施に関する項目を追加しました。対象となる介護保険サービス事業所、障害福祉等サービス事業所にはサービス提供の開始にあたり「第三者評価実施の有無」「実施した直近の年月日」「実施した評価機関の名称」「評価結果の開示状況」の説明が義務付けられました。
第三者評価の意味・目的
第三者評価の意味・目的は、次の三つになります。
一つ目は、事業者自身では気づき得なかった課題等の気づきを促すこと。二つ目は、日常業務の振り返りと課題解決・改善に向けたきっかけをつくること。そして三つ目は、福祉サービスの質の向上と、利用者の福祉サービスの選択支援です。
第三者の専門性・客観的な視点により社会的に期待される「より望ましい水準」を目指して、福祉サービスの「質」を評価するところが大きな特徴です(第三者評価受審の流れは図を参照)。
〈図〉
第三者評価受審の流れ
評価機関の選定(評価機関の情報収集、比較、選定)
↓
受審申込・事前説明・契約(評価機関との契約、スケジュール調整)
↓
評価調査活動の実施(書面調査・自己評価・利用者調査)
↓
訪問調査(現地での職員、利用者ヒアリング、観察等)
↓
評価結果の確認(評価決定委員会の開催、評価結果の内示)
↓
評価結果報告書の確定、公表(ホームページ等で公表)
〈図終わり〉
県内での受審促進支援
県内の受審促進に関して、保育分野では、従前から横浜市が単独の加算制度を設け、5年に1回の受審を義務化。川崎市でも定員に応じた単独の受審加算制度を設けて5年に1回の受審を後押ししています。
県・本会・横浜市・川崎市の協働で昨年度に実施した事業見直しに伴い、横浜市では保育分野以外の助成制度を導入しています。また、本会でも、会員(経営者部会と一部の種別協議会)に向け、法人・施設での主体的な取り組みを後押しすることを目的に、第三者評価受審料助成制度を導入しています。昨年度は高齢分野を中心に5件、今年度は障害分野を中心に15件に対して助成いたしました。
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県内評価機関と評価結果公表状況
現在、県内では21の評価機関が推進機構の認証を受け活動しています。
昨年度は18の評価機関で294件の評価結果を公表しました。うち保育分野が219件(74%)、障害分野54件(18%)のうち21件が障害者グループホーム、高齢分野19件(6%)の9割が特別養護老人ホームでした。年間の実施件数が多く全分野で活動する評価機関、実施件数が少ないながらも得意分野に限定して活動する評価機関とさまざまで、受審料についても評価機関ごとに異なります。
利用定員の少ない障害者グループホームから入所定員の規模が大きく通所機能が併設されている施設まで約20万円から60万円まで幅があります。受審の契約にあたり、①評価機関の理念や方針、②評価機関や所属する評価調査者の実績、③自己評価・利用者調査・訪問調査等の手法、④評価調査活動の実働期間(スケジュール)、⑤評価結果のまとめ方、⑥受審料といった点に着目し、それぞれの希望に沿った評価機関を選定します。
評価機関情報は、推進機構ホームページ等をご参照ください。
〈表〉
令和元年度 評価機関別評価結果公表件数
№ 評価機関名 件数 高齢 障害 児童 保護
1 (N)市民セクターよこはま 15 1 14
2 (株)R-CORPORATION 37 4 3 30
3 (株)フィールズ 76 2 33 39 2
4 (N)ニッポン・アクティブライフ・クラブナルク神奈川福祉サービス第三者評価事業部 47 47
5 (株)学研データサービス 33 4 29
6 (公社)神奈川県社会福祉士会 9 3 2 4
7 (公社)けいしん神奈川 8 8
8 (一社)アクティブケアアンドサポート 6 1 5
9 (N)介護の会まつなみ 1 1
10 (N)NPO中小企業再生支援 8 3 5
11 (公社)神奈川県介護福祉士会 5 3 2
12 (株)ケアシステムズ 21 4 3 14
13 (N)よこはま地域福祉研究センター 23 1 5 17
14 日本会計コンサルティング(株) 1 1
15 ソキウスコンサルテーションズ(株) 0
16 横浜サステナビリティ研究センター有限責任事業組合 1 1
17 (一社)日本保育者未来通信 1 1
18 (一社)かわさき福祉相談センター 1 1
19 (公社)長寿社会文化協会 1 1 (令和元年度廃止)
20 (株)ミライ・シア 令和2年3月認証
21 シーズ・クリエーション合資会社 令和2年3月認証
22 (株)第三者評価機構 令和2年3月認証
合計 294 19 54 219 2
〈表終わり〉
〈円グラフ〉
受審の効果(n=469件・複数回答)
〈円グラフ終わり〉
〈横棒グラフ〉
評価機関への総合的な満足度(n=190件)
〈横棒グラフ終わり〉
受審の効果と事業者の満足度
推進機構では、受審事業者に対し受審の効果や満足度について、毎年アンケート調査(公表件数294件・回答190件)を実施しています。
受審の効果としては、「サービス向上のための気づきを得た」「利用者及び保護者の考え方を知ることができた」「職員の意識向上につながった」の3つの回答が全体の約9割を占めています。また、「支援の振り返りに客観的な視点が加わり、組織で今後の目標を共有することができた」「事業者の強みと弱みが明確となって改善の機運となった」など、多くの声をいただきました。
満足度については、「非常に満足」「概ね満足」と回答した事業者が9割を超えています。中には評価機関や評価調査者に対して「訪問調査での聞き取りの内容が評価結果に反映されていない」「施設の特性を理解してもらえないのは残念」等、不満の声も寄せられています。
推進機構としては、評価機関の特長や持ち味を生かしながら推進機構と評価機関の役割・責任を明確にし、相互における研修等を充実させていけるよう努めていきますので、第三者評価に関心を深めていただき、受審についてご検討ください。
(福祉サービス第三者評価推進機構)
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NEWS&TOPICS
各地域での権利擁護支援の体制づくりを支援ー権利擁護支援体制全国ネット 相談窓口開設
認知症や知的障害等によって、福祉サービスの選択や契約、財産管理が難しい方を支えるため、各地域で権利擁護支援の体制づくりが進められています。
平成29年に閣議決定された「成年後見制度利用促進基本計画」では、全国どの地域においても、必要な人が成年後見制度を利用できるよう、地域の支援体制づくりを進めていくことが挙げられました。制度利用者は増加傾向にあり、体制整備はより重要なものとなっています。
今後、市区町村域で権利擁護支援の体制づくりを進めるにあたっては、専門人材の確保や、専門職団体や家庭裁判所との連携の他、多様化・複雑化する利用者への対応を踏まえながら、中核となる機関の設置を含め、さまざまな課題があります。本会かながわ成年後見推進センターでは、体制整備アドバイザーの派遣等を通じて、県内市町村の権利擁護支援の体制づくりを支援しているところです。
こうした中、全社協では、自治体や中核機関から権利擁護支援体制づくりに関する相談を受ける「権利擁護支援体制全国ネット(K―ねっと)」を、10月27日に開設しました。
日本弁護士連合会や成年後見センター・リーガルサポート等の専門職団体や厚生労働省の成年後見制度利用促進室と連携しながら、受けた相談に対して事例紹介や実践を踏まえた助言等を行うとしています。
今回の相談窓口開設によって、年々増すニーズへ対応するために必要な、全国的な相談体制の強化・推進の一助となることが期待されています。
〈囲み〉
権利擁護支援体制全国
ネット(K―ねっと)
相談受付時間 月~金 午前9時30分~午後5時30分
TEL 03-3580-1755
URL:https://www.shakyo.or.jp/knet/
〈囲み終わり〉
(企画調整・情報提供担当)
「令和時代の社会保障と働き方を考える」ー令和2年版厚生労働白書
10月23日、厚生労働省は「令和2年版厚生労働白書」を公表しました。白書は厚生労働行政の現状や今後の見通し等を国民に伝えることを目的に例年発行されているもので、令和2年版で19冊目となります。
白書は2部構成で、メインとなる第1部では、平成30年間の社会の変容を振り返り、2040年にかけて起こりうる変化の見通しについて分析を掲載。そのうえで、「令和時代の社会保障と働き方を考える」をテーマに、新型コロナウイルス感染症の影響も含めた、厚生労働行政の今後の対応についてが示されています。
方向性は大きく4つ。「人生100年時代」「担い手不足・人口減少の克服」「新たなつながり・支え合い」「生活を支える社会保障制度の維持・発展」となっており、高齢化のピークを見据えた取り組みが提示されました。また、これらの取り組みは、IT・デジタル化を上手く取り入れながら行っていくことや、コロナ禍への対応として日常生活のオンライン化、テレワーク等の新しい働き方の提案と併せて行っていくこととしています。
第2部は「現下の施策課題への対応」がテーマになっています。平成30年度から令和2年度にかけて行われた厚生労働行政の各分野における施策やうごきがとりまとめられており、子育てや雇用、医療、介護等の現状を知ることができます。
コロナ禍の影響もあり、国民の生活は大きく、急激に変化しつつあります。現状を知ること、これからのあり方を考えていくために、大いに活用できる一冊となっています。
〈囲み〉
「令和2年版厚生労働白書」は厚生労働省ホームページにデータ版が掲載されています。
URL:https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/
〈囲み終わり〉
(企画調整・情報提供担当)
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福祉のうごき 2020年10月26日~11月25日※新聞掲載日
●過齢児の特例再び延長、厚生労働省「446人が移行先未定」
厚生労働省は10月19日、障害児入所施設で暮らす18歳以上の「過齢児」について2021年3月末までとしていたサービス費支給の経過措置(特例)を少なくとも1年間延長する方針を明らかにした。2021年夏までに対応を決める予定としている。
●介護職員の平均月給36万6,900円、勤続10年以上特定処遇加算で
「介護職員等特定処遇改善加算」の取得事業所で、介護福祉士の資格を持ち、10年以上働く常勤介護職員の平均月給が、今年2月時点で36万6,900円となったことが10月30日、厚生労働省の調査でわかった。
●コロナ禍での民生委員活動調査、7割が電話で安否確認実施
全国民生委員児童委員連合会は、
10月22日全国大会で、新型コロナウイルス感染症を踏まえた単位民児協活動環境調査の概要を報告した。訪問・相談活動について、7割以上が電話で安否確認を実施するなど工夫をしていることがわかった。
●県内医療・介護労働者、コロナでストレス7割
県内の医療、介護労働者が加盟する県医療労働組合連合会は11月5日、県庁で職場実態の調査結果を発表し、新型コロナウイルス感染症で約7割がストレスを感じたと現場の窮状を訴え、国に財政支援を求めた。
●厚生労働省、総合事業の対象拡大で要介護者も利用可能に
厚生労働省は10月22日、介護保険の要支援者が要介護者になっても、総合事業の訪問型、通所型サービス等を引き続き利用できるよう省令を改正した。施行は来年4月1日。現行では要支援者等に限定しており、一部の自治体から要件見直しの要望があった。
●大和市、コロナ禍で世間話の電話窓口開設へ
大和市は11月19日、コロナ禍で外出が減り人と話す機会が減っているとして、電話で気軽に話ができる窓口「ちょっと話そう『もしもし電話』」を12月1日に開設すると発表。ストレス軽減や孤立による健康被害の防止が期待される。
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連載 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 第6回
きっかけは「コロナ」 新たな連携・つながり
本紙ではこれまで、社会福祉施設の従事者や利用者、福祉関係団体や当事者の目線から、新型コロナウイルス感染症の影響から見えた課題について掲載してきました。人と人とのつながりの分断から生まれた課題に対し、さまざまな工夫によって取り組む関係者の姿が見えてきています。
一方で、福祉サービスを必要としてこなかった人と関わる機会も増えました。本紙11月号「特集」で取り上げた生活困窮者自立支援事業の事例のように、コロナ禍をきっかけに社協の存在を知った人や福祉サービスの利用を検討した人がいる等、生活への影響の大きさがうかがえます。
今回は、自立相談支援の活動を行っている(N)ワンエイドに、寄せられた相談等を通して見えた、コロナ禍で変化した住民の生活やそれにより生まれた新たな課題についてうかがいました。
住まいと生活のサポート
これまでの相談支援
住まいや生活の困りごとを持つ人への支援を行っている(N)ワンエイド。2019年に県の住宅支援法人の指定を受けており、高齢や病気を理由に転居が難しい方、アパート等の契約がしづらい低所得の方への住まいに関する相談や支援を行っています。
また、住まいの確保等に困っている方の多くは、食にも困っていることが多いとし、フードバンク事業による食の支援、生活に関することの相談やアドバイスを行う等、相談者の自立に向けた支援も行っている団体です。
活動拠点としている座間市では、行政、社協、専門知識を持つ関係機関等と連携して相談者の自立支援を行う「チーム座間」の一団体として関わっており、「自立支援相談補助員」の立ち位置で、相談者に必要な支援や制度へつないでいくパイプ役を主に担っています。
今回は、平時より生活困窮者への支援を行っているワンエイドで理事長を務めている松本篝さんに、コロナ禍で対応した相談者の様子についてうかがいました。
増える「多人数世帯」の相談者
ワンエイドでは、相談受付に条件等は設けていないため、高齢者、障害者、ひとり親等、さまざまな背景を持つ相談者の支援を行ってきました。特に単身世帯からの相談が多い傾向にあったと言います。
しかし、緊急事態宣言の発令後、ワンエイドにやってくる相談者に変化があったと松本さん。「ネットカフェ等の休業で滞在場所を失った人や派遣社員で契約を切られた人等の相談もありましたが、特に変化を感じたのは、一般の家庭や多人数世帯の方からの相談が増えたことでした。」
両親が共働きで子どものいる家庭では、パート等非正規職員の契約切り、勤務時間の減少等によって収入が大きく減ったこと、学校の休校で食費の負担が増えたこと等、さまざまな部分で生活に大きな影響があったと考えられます。
「これまでぎりぎりの状況で生活をつなげていた家庭が、このコロナ禍でいきなり弾き飛ばされてしまったのだろうなと思います。」
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変わった生活 対応する難しさ
「生活費を切り詰めるため、今より安い家賃にしたい」「失業と同時に住まいを失ったが、再就職のために住所が必要だ」と、住まいに関する相談が増えたことも、コロナ禍での変化です。こうした相談に対してワンエイドでは、これまでの支援でかかわった不動産屋や大家と連携しながら、相談者の生活事情や収入に合わせた物件の情報を提供しています。
一方で、相談者の中には「通勤がしやすいよう、駅近くの物件がいい」等、希望にあった物件を求める方が多いのが実情と言います。実際は、条件によって家賃が高額になる場合が多く、住まい確保を困難にする要因となっています。多人数世帯の場合には、家賃を下げることで今までより狭い収納スペースになってしまうため、持っていく家財の取捨選択を迫られるケースもあります。
他にも、転居には契約や引っ越しに費用がかかる場合や、契約が完了して実際に住めるようになるまで、手続きに時間がかかる場合もあります。必要な費用を想定していなかった人や、現在の住まいからすぐに立ち退かなければならないため、契約を急ぐ人も少なくなく、住まいの確保に至るまでが難しい状況だと言います。
「転居にはどうしても『新生活』のイメージが付きまとう。家賃を切り詰めることは、今までの生活から少し我慢しなければならない部分が出てくるのですが、そうした現実とイメージが離れていて、妥協することが難しい人もいました。今までできたことができなくなる。コロナ禍で発生した生活の変化に対応することが難しい人が多い、という印象を受けました。」
見通しの立たない不安とこの状況だから得た希望
相談者の中には、コロナ禍以前より生活に困っていた様子の方も少なくなかったと松本さん。コロナを理由にすることで困りごとを口にしやすくなったのではと指摘します。メディア等で相談機関に関する情報が報じられるようになったことで、窓口を知る機会が増えたことも相談につながった要因のひとつです。
これに加え、これからは、住居確保給付金の支給や生活福祉資金の貸件期間が終了する方、償還に入る方が増えてくる時期に差し掛かります。こうした方の中には、未だに仕事が見つからず、安定した収入を得られない方もいて、相談者は増える一方だろうと考えられています。ワンエイドでは、フードバンク事業で、相談者が仕事や住まいを見つけるまでの間を支援していますが、この状況が続くと、これまで通り活動を続けていけるか不安が残ると言います。
厳しい状況で、課題が残るものの、追い風も生まれつつあります。コロナ禍をきっかけにフードバンクの存在を知り、食料の寄附をしてくれた地域の方や、子ども達の様子から家庭の困りごとを知り、相談を持ち掛けた地域の学校の先生ともつながる等、新たな連携の輪も広がっています。
「相談者も、相談の内容も、さらに多様になりました。対応していくためにも、さまざまなところと連携していくことが一層重要だと感じます。相談者に対して、お住まいの地域にある関係機関につなげる機会も増えていて、コロナで生まれたのは、悪い影響ばかりではないと思います。」
いつになれば経済状況がよくなるのかという不安と、新たなつながりが見せる希望が、相談支援の現場で交錯しています。
(企画調整・情報提供担当)
※本稿は11月末時点に作成したものです。
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私のおすすめ
◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。
親子でアート&歴史をオンラインで楽しもう!
コロナ禍の影響で以前のように外出するのが難しい日が続いています。家で過ごすことが多く、時間を持て余しぎみの家庭もあるかもしれません。そんな時は文化施設のWebサイトで公開中の親子で楽しめるコンテンツに注目してはいかが。
今回は川崎市岡本太郎美術館と神奈川県立歴史博物館のWebサイトをご紹介。気軽にアクセスでき、家にいながらにして世界が広がります。
今月は→NPO法人 ままとんきっずがお伝えします!
今年で子育て支援活動27年目。お母さんたちが主体となって、親子が集うサロン、グループ保育、一時保育、各種講座、産後サポート、子育て支援センター、小学校での寺子屋事業、中学校での赤ちゃんふれあい体験事業などを運営。情報誌・単行本の発行物は45冊を超え、一部は海外でも翻訳出版。乳幼児から小中学生まで幅広い子育て支援により、地域の活性化を目指し、活動の場を広げている。
〈連絡先〉〒214-0011 川崎市多摩区布田24-26
TEL 044-945-8662 FAX 044-944-3009 URL:http://www.mamaton.jpn.org/
◆岡本太郎の絵を自由に塗って貼って自分だけの作品に
川崎市岡本太郎美術館のWebサイトにあるコンテンツ「どこでもTAROアトリエ」では、美術館で好評だったワークショップの中から、パワフルな岡本太郎の絵を塗り絵にしたり、代表作《太陽の塔》を版画にしたり、家でも楽しめるプログラムを公開。作品の画像を印刷して使用でき、楽しみ方も説明されています。
おすすめは、渋谷区青山にあった「こどもの城」のシンボルモニュメント《こどもの樹》のオリジナル版を作ることができるプログラム。四方八方に伸びた枝の先にいろいろな表情の顔がついたこの作品は、子どもたちが周りをぐるぐる歩きながら自分に似た顔を探したり、にらめっこをしたり、人気だったのだそう。印刷した《こどもの樹》の顔でお気に入りを選んで自由に色を塗り、枝の先に貼り付ければ、自分だけの《こどもの樹》のできあがりです。
〈写真〉
《こどもの樹》の顔は笑ったり舌を出したり。色や表情のバランスを考えながら枝の先に貼り付けて完成!
〈写真終わり〉
◆一枚の布をまとって衣装の構造がわかる仏像体験
県立歴史博物館のWebサイトにあるコンテンツ「おうちでかながわけんぱく」では、歴史に触れながら遊べる収蔵資料の塗り絵や工作などのプログラムを公開。資料の画像を印刷し、キャラクターによる楽しい解説を読みながら手を動かすと、子どもたちは笑顔に。西洋人来航が描かれた日本画「南蛮屏風」に色を塗ったり、黒船が描かれた「横浜浮世絵」のペーパークラフトを組み立てることで、昔の服装や船の造りがわかります。
特に親子で楽しんでほしいのは、仏像の気分を体験できるプログラム「ぶつぞうになってみよう」。見るだけだとわかりづらいのですが、仏像が身につけている衣装は一枚の大きな布。実際に一枚の布を使って説明どおりに身にまとってみると、仏像の衣装の構造がわかります。次に仏像を見る時にはその見方が変わり、歴史に興味を持つきっかけになるかもしれません。この機会に親子でさまざまなことに目を向けたいですね。
〈写真4点〉
背中に垂れた布を右の脇腹にもっていくぞ
親子で協力して毛布やシーツを体にまとわせて仏像に。手のひらを正面に向けてポーズをとると、より仏像の気分アップ
〈写真4点終わり〉
インフォメーション
■川崎市岡本太郎美術館「どこでもTAROアトリエ」
https://www.taromuseum.jp/taroatelier.html
■神奈川県立歴史博物館「おうちでかながわけんぱく」
http://ch.kanagawa-museum.jp/ouchi
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福祉最前線ー現場レポートー
◎このコーナーでは県内各地の福祉関連の当事者・職能団体等の方々から日ごろの取り組みをご寄稿いただきます。
LGBT法連合会
西山 朗
性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備を目指し、政策提言や研修、調査活動等をしています。
Mail:info@lgbtetc.jp TEL 03-5802-6650
すべての人が平等に扱われる社会に向けて
皆さんは性的指向と性自認という言葉を聞いたことはありますか?性的指向は「恋愛感情や性的な関心がどの性に向かうか、あるいは向かないか」等を表し、性自認は「自分がどの性別であるか、または、どの性別ではないかなどといった自己認識」を意味します。そして、これら二つの言葉の英語の頭文字をつなげて、SOGI(ソジ)と呼びます。
当会は、SOGIに基づく困難の解決のために、差別を禁止する法律の制定を目指して活動しています。具体的にどのような困難があるかというと、「上司にトランスジェンダー※1であることを伝えたら、解雇された」「レズビアン※2であることを同期に伝えたら、社内全体に広まっており、精神的に傷ついた」といった事例があります。ただ、このような事例が生じても、日本にはSOGIによる差別を禁止する法律がないため、法的に救済を求めることのハードルが高く、多くの当事者がさまざまな困難に直面しています。
これまで当会は、差別禁止法の市民案策定や政策提言、企業等向けの研修、各党の政策に関する調査活動などを実施してきましたが、その成果の一つとして、昨年5月に成立した改正労働施策総合推進法(いわゆる、パワハラ防止法)が挙げられます。今回の改正で事業主や行政機関等にパワハラを防止するための措置を義務づける規定が新設され、パワハラに含まれる内容として、SOGIに基づくハラスメントとアウティング(労働者のSOGI等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること)が含まれるとされました。
さらに法整備を進めるため、当会は10月15日に国際NGOと共に、差別禁止法の制定を求める署名キャンペーン「EqualityActJapan 日本にもLGBT平等法を」を始めました。今年始めた理由は、東京オリンピック・パラリンピックのホスト国である日本は、"性的指向による差別"を含めたさまざまな差別を禁止するオリンピック憲章に基づいて行動しなければならず、差別禁止法の制定に向けた政府の対応について例年以上に注目を浴びているからです。
当会は署名や常日頃の活動を通じて、誰もが差別を受けることなく、平等に扱われる社会を目指して、今後もまい進していきたいと思います。
※1 出生時に割り当てられた性と性自認が一致しない人や、どちらの性別にも違和を感じる人のこと
※2 性自認が女性で、恋愛対象が女性の人。女性同性愛者
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県社協のひろば
つながり支え合いともに生きる社会を目指して~令和2年度神奈川県社会福祉協議会会長顕彰・神奈川県共同募金会会長顕彰合同授与式~
本会では、11月4日、県社会福祉会館(横浜市神奈川区)にて、「令和2年度神奈川県社会福祉協議会会長顕彰・神奈川県共同募金会会長顕彰合同授与式」を開催しました。
本年度は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、県社会福祉大会は中止としたため、受賞者を代表して4名の方に出席いただき、県福祉子どもみらい局副局長の川名勝義さんを来賓に迎え、和やかな雰囲気のもと、両会長より受賞者に表彰状をお渡ししました。
本会会長表彰受賞者の逗葉地区保護司会会長の冨田邦衛さんは、コロナ禍により福祉現場では非常に厳しい状況が続いていることについて、「面談機会が減り、思うように支援ができず、もどかしさを感じている」としながらも「困難を抱えている人が気軽にSOSを出せるよう、身近な相談相手となり、多機関との連携をより一層大切にしたい」と当事者に寄り添った地域生活支援を進めていく決意を語りました。
同じく、会長感謝受賞者の(福)横須賀基督教社会館田浦・逸見地域包括支援センター施設長の大澤愛子さんは、新しい生活様式を踏まえた民生委員児童委員等の地域と専門機関との連携による支援の様子を紹介し、「地域の人々がお互いに支え合い幸せに暮らせる地域を、地域のみんなで創っていきたい」と一人ひとりが主役の地域づくりに向けた抱負を優しいまなざしで語りました。
今回受賞されました895人、140団体の皆様、誠におめでとうございます。今後のますますのご活躍をお祈り申し上げます。
(総務担当)
〈写真〉
前列が受賞者代表の皆さん。前列左から、県社協会長顕彰受賞者の大澤愛子さん、冨田邦衛さん。県共募会長顕彰受賞者の小泉芳子さん、神奈川県更生保護女性連盟事務局長池田英津子さん。
〈写真終わり〉
「令和3年度地域福祉活動支援事業」のご案内
本事業は、県内の地域づくり、福祉課題の解決等に取り組む事業や活動に対し、ともしび基金の寄附金並びに果実を活用して助成を行うものです。県内で活動するセルフヘルプグループ、ボランティアグループ、市町村社協やNPO法人等の地域福祉活動に取り組む団体を対象として、事業に係る経費の一部を助成し、地域福祉の一層の推進を図ることを目的としています。
助成区分及び対象となる活動等は、下表の通りです。詳細は本会ホームページをご確認ください。
◇申請期間=令和2年12月1日(火)~令和3年1月29日(金)
※持参もしくは郵送。郵送の場合は1月29日(金)の消印有効。
※窓口での受付時間 月曜日~金曜日 10時~16時(12月29日~1月3日までの期間及び1月11日は除く)事前連絡の上来所して下さい。
【問合せ先】地域福祉推進担当
045-312-4815
(地域福祉推進担当)
〈表〉
区分 助成金額・要件等 対象とする活動・募集テーマ
一般助成 ・地域福祉推進に寄与する団体等に対して助成金を交付し、事業・活動への支援を行います。・助成金額は、対象経費総額の5分の4以内、20万円を上限とします。 1.地域福祉ニーズ(課題)に対応する先駆的な活動
2.広域的かつ公益性の高い活動
協働モデル助成 ・記載の募集テーマに沿った提案を受け付けます。・本会と事業・活動を協働することが前提となります。・助成金額は対象経費総額の5分の4以内(例外あり)、200万円を上限とします。・本会と申請団体との具体的な協働の内容、役割分担については、申請団体の自主性、自立性を基本に、担当部所と相談のうえ決定します。 1.人との関係づくりやコミュニケーションが苦手な人の「参加支援」〜多様な形でのボランティア参加の可能性について~(地域福祉推進部 かながわボランティアセンター)
2.外国にルーツをもつ住民の高齢化にともなう生活課題への対応(地域福祉推進部 かながわボランティアセンター)
3.社会福祉法人の協働による「地域のおひとり様の暮らしを支える身元保証と終活支援」(権利擁護推進部)
〈表終わり〉
P11
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寄附金品ありがとうございました
【交通遺児援護基金】(株)エスホケン
【子ども福祉基金】(株)エスホケン、脇隆志、渡部勲
【ともしび基金】(財)光之村代表理事岡崎芳子
【寄附金】広瀬公子
(合計10件 128,673円)
【寄附物品】(一社)日本塗装工業会神奈川県支部、神奈川昭和会、(一社)神奈川県自動車会議所
【ライフサポート事業】
〈寄附物品〉 (N)セカンドハーベスト・ジャパン(いずれも順不同、敬称略)
〈写真2点〉
(一社)神奈川県自動車会議所より障害福祉施設協議会等へ介護車両を寄贈いただき、御代田晃一理事長(左)に感謝状を贈呈
医療福祉施設協議会へアルコール消毒液を寄贈いただき、(一社)日本塗装工業会神奈川県支部、神奈川昭和会に感謝状を贈呈
〈写真2点終わり〉
〈囲み〉
神奈川県社会福祉センター整備事業 ご協力お願いいたします
本会ではセンター整備事業を進めるにあたり、広くご支援、ご協力をいただけるよう協賛金制度を設けております。
趣旨にご理解、ご賛同いただき、ぜひともご協賛を賜りますようよろしくお願いいたします。
新センターの概要はHPにて紹介しております。
URL:http://www.knsyk.jp/s/global_syakyou/r1center.html
P12
かながわほっと情報
地域のつながりを生かす「野菜の日」―花みずきの会(大和市)
大和市シニアクラブ連合会に加盟している「花みずきの会」は平成14年に鶴間地区の分譲団地(245世帯)で集会所を拠点に活動を始めました。団地の入居者の高齢化が進み、助け合いを必要とする住民が増えてきたのが始まりです。現在会員数は75名。楽しく、仲良く元気で明るい活動をモットーに取り組んでいます。中でも、花みずき友愛チームでは、①野菜の日(野菜販売会)②みんなの居場所いろどり・相談等、さまざまな活動を定期的に行っています。
花みずきの会の会長、大竹芳秋さんは「長生きをしていると人はできなくなることが増えるので、お互い助け合いが大事」と語ります。
〈写真〉
▲火曜日の野菜販売会で、コミュニケーションをとる姿
〈写真終わり〉
「野菜の日」の取り組みもその一環です。始めたきっかけは、近所にあったスーパーが閉店してしまい、買い物困難者が増えたこと。解決策を相談していたところ、地元の農園の方が新鮮なものを駅近で販売していたことを知り、協力をお願いしたそうです。値段は百円で、美味しく新鮮なものが食べられると評判も良く、毎回30~40人程の方々が足を運んでいます。
買い物難民というと過疎地域が注目されますが、この活動を通じ、花みずきの会のメンバーは「自分の身近にも困っている人がいるということを改めて認識しました」と言います。コロナ禍では販売を3ヶ月中止しましたが、買い物が大変な方のために、野菜のお任せパックで対応しました。その際、健康や困ったことの相談、安否確認も行ってきました。7月から販売会の再開をしており、「少しでも外に出る機会や人と会話することで元気になれるよう、また、長く楽しい生活を送るために協力し合っていきたいと思います」と会長は意気込みを語ります。
花みずきの会の活動中心メンバーは70歳を超えていますが、元気に楽しく活動しています。長寿国の日本では、長い人生を謳歌するために支えあえるつながりが必要であると取材を通じ感じました。
(企画調整・情報提供担当)
〈写真〉
▲花みずきの会の活動を中心で行っている会員の皆さん
〈写真終わり〉
〈コラム〉
豆知識◇友愛活動とは?
全国の老人クラブで取り組んでいる「全国三大運動」の1つ。各地域での見守り・居場所づくり・健康づくり等地域のつながりを支え合いで行う活動。
〈コラム終わり〉
「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
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【発行日】2020(令和2)年12月15日(毎月1回15日発行)
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