テキストデータ作成に当たって
このデータは、『福祉タイムズ』 vol.832 2021年3月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
二重山カッコは作成者注記です。
P1
福祉タイムズ ふくしTIMES
2021.3 vol.832
編集・発行 社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会
特集…P2
利用者の生活を支える社会福祉従事者の学びの機会をつくり続けるために
NEWS&TOPICS…P4 介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定内容明らかにー感染症対策を踏まえ、全体的な引き上げへ
…P6 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 最終回 一度目の緊急事態宣言を越えて見えたこれからの課題
県社協のひろば…P10 「神奈川県社会福祉センター」ー地上8階建、反町駅前に8月オープン
→今月の表紙 おすすめパンはどれですか?【詳しくは12面へ】―(N)もくせい・ティールームもくせい
P2
特集
利用者の生活を支える社会福祉従事者の学びの機会をつくり続けるために
社会福祉従事者は専門職として、常に新しい課題や問題の解決に向けて学び続けることが求められます。しかしながら新型コロナウイルス感染症の影響により、従来から行ってきた集合対面型中心の研修方法では学ぶ機会を十分につくることが難しくなっています。
本会福祉研修センター(以下、研修センター)では、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策により令和2年2月末から研修を中止していましたが、7月からはオンラインを活用した研修を、また9月からは「感染症拡大防止に対応した研修運営ガイドライン」を策定し、それに沿って集合対面型研修を再開するなど、実施方法を多様化して行っています【表1】。本号では、多様な実施方法で見えてきた社会福祉従事者の専門性の向上のための研修の意義についてまとめます。
〈表1〉
【表1】研修実施方法の多様化
■集合対面型(例)福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程等
■オンデマンド型(研修動画の配信と職場実践、研修レポート)(例)接遇マナー、会計簿記研修
■オンラインライブ型(web会議システムの活用)
■ハイブリッド型(実施方法の組み合わせによる実施)(例)スーパーバイザー研修等
〈表1終わり〉
専門職の土台となる研修ニーズ
研修センターでは、法人・事業所における人材育成の状況を把握するために、令和2年5月に「新型コロナウイルス感染症の影響による職員研修状況アンケート」を実施しました。その結果からは多くの現場で、感染防止対策のうえ、新人職員に対するOJTや研修を工夫して実施していることが分かりました。さらに、実施する必要がある研修内容として、「階層別の役割」「福祉従事者の基本姿勢」が多くあげられ、無資格・未経験、セカンドキャリア等多様な背景のある職員が従事する福祉の現場において、専門職としての土台をつくるための研修ニーズが報告されました。【図1】
〈横棒グラフ〉
【図1】人材育成に特に必要な研修(複数回答)
(新型コロナウイルス感染症の影響による職員研修状況アンケート)
〈横棒グラフ終わり〉
オンデマンド研修を活用した職場内OJTの促進
研修センターでは対面による研修に先駆け、「介護に関する入門的研修(新任介護職員コース)」を、介護福祉の理念や基礎的な知識を学習するオンデマンド型研修(動画視聴と研修レポートの提出)として、令和2年7月から8月に実施しました。受講事業所の研修担当者から、「職員が研修動画で分からない専門用語を調べ、現場でのケアと研修内容を結び付け、仕事に生かしていた」という声が届きました。現場の人材不足や感染症対策により職場外研修への派遣が難しい法人・事業所が、こうした福祉・介護の基本理念や考え方を職場で振り返る機会を、オンデマンド型研修を活用し職場内OJTと結びつけて行うことで、職員の専門性を向上させる工夫がみられます。
オンデマンド型研修は、同一事業所から複数名受講することができ、多くの職員の学びの機会を確保することができます。また、指導的職員が初任者を対象とした研修に、新人指導のために学び直したいとの理由で、受講を希望する問合せも複数ありました。このように各階層で求められる専門性に対応し、職場内OJTと連携した研修プログラムの検証が必要となっています。
P3
安心して学べる職場での環境づくり
オンデマンドやオンラインライブ型研修では、研修会場までの移動距離や小規模事業所のため、集合型研修への派遣が難しかった法人・事業所も受講できる等、職場での人材育成にオンライン型研修の活用が広がっています。その一方で、職場でのオンライン環境の整備に関する課題も見えてきました。
一点目は、研修の受講時間や場所の確保です。オンデマンドで実施した研修の受講者アンケートでは、研修受講時間について、「業務時間外に職場で受講」「自宅等職場外で受講」が28・2%【図2】となり、「上司から業務時間内で受講を指示されたが、業務を優先し、時間外や自宅で視聴した」「職場内にいるため、視聴中に呼ばれ、集中した受講が難しい」などの声がありました。
職場内で行われるオンラインの研修が、職場外への派遣研修と同様に、業務の一環として位置づき、職員が安心して受講できるように、勤務時間内の研修時間や研修を受講するための個室の確保等が必要となります。
二点目はパソコン等の受講のための機器の整備です。オンデマンド型研修の受講者に視聴環境を聞いたところ、約半数の受講者が「個人のスマートフォンやパソコンを使用」しているなど、現場では職員育成に使用できる機器や通信環境の整備が十分とは言えない状況がありました。今後、現場での人材育成や情報の共有化にオンラインの活用が図られるためには、法人・事業所での環境整備が喫緊の課題といえます。
〈円グラフ〉
【図2】研修の受講時間
(新任福祉・介護施設等職員合同交流・研修会アンケート、受講者回答数:78)
〈円グラフ終わり〉
〈写真〉
①所属、立場を越えて学び合う受講者。対面型研修ではパーテーションをして、グループワークを行う。
②感染防止対策の協力案内、健康チェック票
③オンラインライブ配信による研修の一場面
〈写真終わり〉
組織を越えて出会い、学び合う意義
集合対面型研修の再開により、改めて受講者同士の交流による研修効果が実感されました。「福祉職員キャリアパス対応生涯研修課程(全国共通課程)」等の階層別の基幹研修は、主に受講者がグループワークを通じて学び合う研修プログラムとなっています。「様々な職種や法人との交流により、違う視点での物事の見方、価値観を知るとても良い機会だった」「支援について固定観念や先入観で判断しないことを理解した」など、受講者が自身の意見をまとめ、他者の意見を聞き共感し合うこと、職場から離れて組織の支援を見つめ直すことで、専門職としての新たな学びや気付きを得ていることが分かりました。
また、新卒新人や他業種から入職した社会人経験者が同期として出会い、交流を通じて、専門職としてキャリアを開始する機会として実施した「新任福祉・介護施設等職員合同交流・研修会」では、受講者から「支援の喜びや大変さが似ていて安心できた」「対人援助の専門性についてより深く学びたい」との声も聞かれました。
こうした分野を越えて同じ立場の職業人が共に学び、自身のキャリアを振り返る経験を持つことは、自組織だけでは難しいことも少なくありません。日常の職務から離れた交流により専門職として自己検証し、学び続ける姿勢をつくることが「対面研修」の大切な目的の一つとなっています。こうした機会が、各階層や職務での課題に対応する際に、必要に応じて職場研修として用意されることにより、人材の定着に結びつくことも期待されます。
法人・事業所とともにつくる学びの機会づくり
福祉サービスが、「人を相手として、人によって行われる専門的なサービス」であるからこそ、職員一人ひとりの専門性と、職場における人材育成の環境がサービスの質に直接結びつく特性があります。法人・事業所の人材育成として、職場内OJTや職員研修に、外部研修のOFF‐JTとしてのオンラインや職務を離れた場での特徴を生かし、専門性の向上のための学ぶ機会を作り続けることが必要です。
本年度は、法人・事業所からの声をもとに、講師との研修プログラムの再検討、受講者の研修での感染症拡大防止対策への理解や、現場での受講環境の準備等に対する法人・事業所の多くの協力のもと、多様な実施方法を通じて、オンラインの特徴を踏まえた活用の可能性、職務を離れた場での研修の意義を確認してきました。
令和3年度は、法人・事業所のキャリアパスの仕組みと連携し、階層別研修を軸に集合対面型研修にて実施します。また、オンラインを活用した研修により、社会福祉従事者の学びの機会の確保に向け、法人・事業所における人材育成の環境整備のあり方を確認していきます。県域の専門研修機関として、「新しい日常」を踏まえた研修のあり方が、今後の人材育成の常態となるよう事業を展開していきます。(福祉研修センター)
〈囲み〉
令和3年度の研修計画は、令和3年3月下旬に法人への案内を予定しています。
各研修情報は、福祉研修センターホームページにてご確認ください。
https://www.kfkc.jp/
〈囲み終わり〉
P4
NEWS&TOPICS
介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定内容明らかにー感染症対策を踏まえ、全体的な引き上げへ
令和3年4月の施行を目指し検討が進められている、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の改定内容が、厚生労働省からそれぞれ公表されています。
介護報酬、障害福祉サービス等報酬は、いわゆる、各種サービスの料金体系で、事業者にとっては収入の単価となるものです。3年に一度、改定を行うこととなっています。
今回の報酬改定は、いずれの種別においても、コロナ禍の影響を鑑みたものとなっています。基本報酬が上乗せとなる項目もあり、サービスの利用料が引き上げられる見込みです。
また、いずれも共通して、新型コロナウイルス感染症対策や災害時における対応力の強化が盛り込まれました。緊急時にあっても、利用者が必要とするサービスを安定して提供できるように、業務継続計画の作成や研修等の実施を、サービス事業者に義務づけることとしています。
介護報酬改定で注目されているのは、科学的介護の取り組み、またテクノロジーの活用等による業務効率化の推進です。「CHASE」と呼ばれる、高齢者の状態やケアの内容のデータを収集するシステムを活用して、より質の高いサービスの提供を目指すことや、テレビ電話を活用した各種会議の実施が認められる等、ICT化を推進する内容となっています。
障害福祉サービス等報酬改定では、医療的ケア児の基本報酬が新たに創設されることが大きなポイントです。自分で動けるが見守りが必要な医療的ケア児についても、見守りに関する評価項目を加えることや、事業所での受け入れを促進する為、「医療連携体制加算」によって単価の充実を図る等、大幅な改定が行われています。
現場におけるコロナ禍の影響を踏まえた内容になった一方で、利用者側にとっては、介護にかかる費用の負担が増すことになってしまいます。コロナ禍による利用控え等の問題もある中で、基本報酬引き上げの影響がどのように出てくるのか、今後の課題は多く残っていると言えます。
また、介護報酬においては、今回の改定とは別に、コロナ禍に伴う特例加算等の施策がなされています。感染症から回復した高齢者の受け入れに関する特例加算のほか、通所介護事業所には4月から、新たな措置を設ける方針が明らかにされています。混同しないよう、制度の動向を見ていく必要がありそうです。
〈囲み〉
改定内容は厚生労働省のホームページにて公開されています。
介護報酬改定 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho_126698.html
障害福祉サービス等報酬改定 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-syougai_446935_00001.html
〈囲み終わり〉
(企画調整・情報提供担当)
P5
福祉のうごき 1月26日~2月25日※新聞等掲載時点
●相談事業支援にAI試験導入
秦野市は、相談支援機関へAI相談支援サービスを試験導入した。相談内容の文書化する、相談内容から適切な福祉サービスを判断して画面に表示する等、相談員の負担軽減が期待されている。
●政府備蓄米の無償交付、子ども宅食にも
農林水産省は29日、学校給食用等政府備蓄米交付要領を改正したことを関係機関に通知した。コロナ禍で子ども食堂が開催しにくい状況を踏まえ、子ども宅食にも交付できるように変更されている。
●認知症カフェ、リモート開催指南
県は、コロナ禍で認知症の症状が悪化傾向になる等の課題を踏まえ、リモートで認知症カフェが開催できるよう支援する「リモート認知症カフェ応援事業」を開始。リモート開催マニュアルの公開等を行っている。
●総合支援資金、再貸付へ
厚生労働省は2月2日、コロナ禍に伴う特例貸付の総合支援資金について、再貸付を実施すると発表した。緊急小口資金については、住民税非課税世帯の償還を一括免除にすると、同日に公表している。
●第3次補正予算が成立
1月28日、第3次補正予算が可決、成立した。コロナ禍で未だにひっ迫している医療機関への支援と、福祉施設での感染拡大防止策への予算が内容を大きく占めている。
●親族の代理出金が可能に
全国銀行協会は、認知機能が低下した方の預金を親族が代わりに引き出すことについて、条件付きで認める見解を示した。あくまで運用の柔軟化を目指したもので、成年後見制度の利用を求めることが基本。
P6
連載 「緊急事態宣言」今、ふりかえって 最終回
一度目の緊急事態宣言を越えて見えたこれからの課題
本連載では、社会福祉施設、居場所実践者、市民活動者等、コロナ禍についてそれぞれの立場からお話をうかがい、掲載してきました。
前例のない緊急の事態に、さまざまな課題が噴出したり、以前のようにいかず活動がままならなくなったりと、コロナ禍の影響は、福祉分野においても大きかったと言えます。
こうした状況の中でも、活動を継続させるためのさまざまな工夫や、コロナ禍をきっかけにして生まれた活動のあり方、手法が出てくる等、「これから」につながる事例もありました。
連載最終回である今回は、これまでの取材等を通して、コロナ禍での課題を整理します。
※本紙は2月末時点で作成しています。
感染症対策とそれぞれの生活との両立
このコロナ禍において「どのように感染対策をしながら、福祉サービスの提供や地域福祉活動を継続するのか」が大きな課題となっていることが一貫して聞かれました。
一番のポイントは「3密」です。「密接」「密集」「密閉」の感染リスクが高い状況のことを指した言葉で、一度目の緊急事態宣言発令時には、これを回避することが特に強く呼びかけられていました。外出自粛、人との接触機会を減らす等の行動により感染者数の減少等の効果があった一方で、人と人とのつながりが途絶えてしまうのではないかと危惧する声がありました。
新型コロナウイルス感染症は高齢者や疾患のある方が感染すると重症化する恐れがあると言われています。一方で、福祉分野、特に介護や介助において、「3密」回避の対策だけでは、生活を維持することが困難になる人を生み出しかねません。つながりが途絶えることで、うまく支援を受けることができなくなるからです。
また、取材の中で、予防策の手段に配慮が必要となるケースも聞かれました。例えば、マスクの着用について、感覚過敏のため着用の難しい方がいたり、聴覚障害の方にとっては意思疎通を難しくしてしまう要因になるなど、マスク着用以外で予防できる方法を模索する必要がありました。
コロナ禍にあっても、個々人の状況に合った方法で、要支援者の生活を守ることが重要です。感染対策と生活維持の両面から、それぞれの立場でできる対策や工夫が必要となっていることがうかがえました。
P7
予防策の徹底にむけて
一度目の宣言発令時、明確な治療法や予防策が定まらない中で、特に徹底されたのが「標準予防策」です。もともと、O157をはじめとする感染症対策を講じてきた社会福祉施設等では、既に行っている衛生管理の業務を、清掃の回数を増やす、消毒の頻度をあげる等拡大し、徹底して取り組むよう工夫がされていました。
また、地域福祉活動などの現場や関係団体では、対面の必要な支援の際にはマスクの着用を徹底する、対面で会話する時間を短くするよう心掛ける等、対策を行っている様子が聞かれています。
こうした対策の徹底が進む中、衛生物品の安定した確保についてが大きな課題となりました。需要の増加による品薄状態が続いたことが要因です。社会福祉施設では、近隣の方からの寄附で補っていたところもありましたが、状況が長期化すれば、安定した供給は難しくなっていきます。また、在宅介護・療養の家庭においても、物品の不足は命にかかわる問題になりかねません。
本会部会・協議会や関係機関団体では、衛生物品の安定した供給を求め、県に要望書を提出しました。これを受け県は、必要に応じて調達の支援を行う等、安定した供給に向けた取り組みを行っています。
今後も、予防策を継続していくため、物品の不足によって生活が困難になる人をださないため、衛生物品の安定した供給を継続して行う仕組みが必要であると考えられます。
正しい情報の共有で進める対策
取材の中では、新しい手法の導入やさまざま工夫によって、福祉サービスや地域福祉活動を継続している様子をうかがうことができました。テレビ電話を用いて、利用者とその家族の面会を実施している社会福祉施設や、オンラインを用いて発達障害児の学習支援や療育相談を行っている団体等、「リモートワーク」もひとつの方法として注目されていました。
しかし、こうした取り組みを進めるうえでの課題も多く、コロナ禍によって苦しい状況におかれた現場も少なくありません。中でも、「どうやって対策すればいいか」の情報を求める声は特に大きかったと言えます。行政での政策はどうなっているのか、他の施設や関係機関ではどのような対策を行っているのか。これらを共有する体制を整えることも、重要な課題のひとつと考えられます。
現在では、一度目の宣言発令時の状況を踏まえ、感染症対策に関する情報が多く共有されるようになりました。本紙でも紹介したように、神奈川県看護協会から研修等を通じて感染対策に関する情報提供が行われているほか、最近では厚生労働省から感染症対策のガイドが公開される等、業務や活動を続けていく為の情報は広まりつつあります。
二度目の宣言発令や感染者数の増大等といった状況が続く今、コロナありきの生活様式が求められつつあります。以前のような混乱に陥らないためにも、業務や活動のあり方を見直す等、これからに向けた整備を継続して行いながら、正しい情報の共有を進めていく必要があるかもしれません。
これからの福祉とコロナありきのあり方
新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから一年。従来のやり方では通用しないことも多くあること、県民生活の変化に対応すべく制度・施策が目まぐるしく変わっていること、感染症対策にかかわる業務等負担が増加していることから、これからも課題や問題が大きな壁となる可能性があります。
コロナ禍での業務や活動の継続には、関係団体と広く連携していくことも必要です。取材の中では、それぞれの立場で役割を発揮しつつ、さまざまな機関、団体と連携している様子もうかがえました。
本会では、県から「社会福祉施設等応援職員派遣等調整事業」の一部業務を受託しています。感染者が出てしまった施設の運営を混乱なく継続させるため、施設間で福祉従事者の派遣を行う施策で、社会福祉法人・施設間での連携が広まるきっかけとして期待されるものになっています。連携・協働して取り組んでいくことは、ひとつのポイントになるかもしれません。
◆ ◆ ◆
連載としては今回で一旦終了しますが、本会では本紙やホームページ等を通して、これからの課題や対策、工夫等を共有できるよう、継続して、コロナ禍に関する情報の発信に努めていきたいと考えています。
(企画調整・情報提供担当)
P8
私のおすすめ
◎このコーナーでは、子育てや障害、認知症・介護当事者の目線から、普段の暮らしに役立つ「おすすめ」なものを紹介します。
ときには「密」な介護から逃げてみて
認知症の人のお世話には「よりそう」「ふれあう」「ほほえみあう」が大切になります。
でも、介護者の気持ちによって、どうしてもうまくいかない、解決できない問題に直面したら…。「密」を一度避けることも大切かもしれません。
今回は、会に所属する方に、どのように気持ちをリセットしたのか、体験談をお寄せいただきました。
今月は→認知症の人と家族の会神奈川県支部がお伝えします!
認知症の人と家族の会は1980年に、神奈川県支部は1981年に発足。家族のつどい、介護相談、会報の発行、啓発活動、調査研究、行政への要望などを行ってきました。
〈連絡先〉〒212ー0016川崎市幸区南幸町1ー31グレース川崎203号
TEL FAX 044ー522ー6801毎週(月)(水)(金)午前10時~午後4時
煮詰まる家族
妻が49歳の時に「若年性アルツハイマー病」と診断を受け、それから17年間、家庭での生活を中心に世話してきました。最期は我が家で亡くなったのですが、それがお正月だったものですから、家族が集まっていて、みんなに看取られてのお別れでした。
臨終の時は、集まっている皆に「静かに、声かけたりしないでね。今、三途の川を渡っている時だから。声かけたら、振りむいて戻ってきてしまうから」とお願いをして、静かな見送りになりました。最後まで笑いと涙のお世話ができたと思います。
あれからもう2年。あの時、現在のように、新型コロナウイルスの感染が危惧されている状況でしたら、「三密」を避けるために誰からも声をかけられず、淋しい看取りになっていたのかもしれません。
感染症予防対策として言われる「三密」ですが、認知症の人のお世話には重要なポイントだったりします。「よりそう」「ふれあう」「ほほえみあう」。そのように向き合い、関われたらすてきですよね。
しかし、認知症の進行に伴って、家族にとっては深刻な問題を抱えるようになることがあります。これまで穏やかに過ごしていたのに急に不穏になって、なだめても安静にならない。背中をさすっても、手を握っても、好きなプリンを差し出しても、怒りまくって、穏やかにならない。そうなると、家族も「煮詰まってしまう」究極の状況に陥ることがあります。
こらえ性のない私は、しょっちゅう、頭のてっぺんから煙が出ているように思えたり、妻に手をあげてしまいそうになったり、「煮詰まり状態」に陥ってしまいました。
さて、そんな時はどうしましょう?
アリツハイマーマップ-アリが歩くコースを地図に
私は、決まって妻の前から逃げることにしていました。「密」からの逃走です。私がいなくなったら、面倒を見てくれる人はいなくなるのですが、それでも、家から一歩出て、玄関先で耳をふさぐのです。
すると私の前をアリが一匹、よく見ると周りにも数匹のアリが見えてきます。ふさいでいた耳から手を離すと、アリたちの歌まで聞こえてきます。♪♪ぼくらはみんな生きている 生きているからハイマール(徘徊!)♪♪って歌っているのです。しばらくそうしていると、家の中で喚いている妻も静かになっていて、私も再び安寧な生活に戻ることができました。アルツハイマーの妻を「アリツハイマー」がサポートしてくれたのです。
「煮詰まり状態」になったら、一度外へ出て、アリたちを眺めます。時に画用紙と鉛筆を持ち出して、「アリツハイマーマップ」作りをしてみます。一匹のアリを目で追って、そのアリの歩くコースを地図にするという作業です。こうして観察してみると、命の強靭さに驚かされます。狭い地面やベランダのプランターの中の土でも、大きな命を育んでいることに感動するのです。
一歩外に出ただけでも、新たな発見につながるきっかけがあるのだなと感じます。そして、その感動のおかげで平常心を取り戻し、「煮詰まり状態」が解消されたのです。
行き詰ったら、一緒にアリを眺めてみませんか?結構おすすめです。
会からのインフォメーション-悩みを話して気分転換
日々の介護で悩んだり、疲れたりしたときは、一度介護から離れ、気分転換することもひとつの解決方法です。しかし、自分にあった気分転換の方法が見つからない、うまい逃げ方がわからない等、気持ちの整理の仕方に困ることもあるかと思います。
認知症の人と家族の会神奈川支部では、介護家族が介護のつらさや今後の不安を話し、他の介護経験者の話を聞くことのできる「家族懇談会」を開催しています。他の経験者がどのようにリフレッシュしているのか聞いてみることで、今後の介護生活のヒントにできるかもしれません。
この他、「看取った介護家族のつどい」や電話相談窓口等も行っています。認知症の人との向き合い方や介護の仕方に困ったり、「煮詰まり状態」から抜け出せなくなったりしたときは、会や相談窓口で、今のつらさを話してみてはいかがでしょうか。
◇開催日等の詳細はホームページをご覧ください
URL:https://sites.google.com/site/kazokukanagawa/home
P9
福祉最前線ー現場レポートー
◎このコーナーでは県内各地の福祉関連の当事者・職能団体等の方々から日ごろの取り組みをご寄稿いただきます。
KFP鵠沼おやじパトロール隊 名誉隊長
KFPおやじネットワーク代表
小林 昭二
子どもたちの安全・安心を守り、成長を見守りバックアップするために立ち上げた、藤沢市立鵠沼小、鵠沼中、鵠洋小の在校生及び卒業生を持つおやじ達による防犯ボランティア団体です。学校行事や登下校、地域の定期的なパトロール活動を中心に、交流・イベント活動、各種サークル活動も積極的に行っております。
URL:http://www.kfp-kugenuma.org
~地域で育てよう子どもたち~K(クゲヌマ)F(ファザーズ)P(パトロール)
平成16年春先、鵠沼小学区で児童に対する痴漢、不審者情報が多発していました。この時、平成13年に大阪で起きた児童殺傷事件が頭を過ぎり、「子どもたちを守ろう」「子どもたちのためにできることをやろう」と、当時の校長先生やPTA役員の皆さんにご協力をいただきながら、7月に「KFP鵠沼おやじパトロール隊」を発足しました。翌年4月に鵠沼中学校、その翌年には鵠洋小学校でもパトロール隊を結成。鵠沼小と鵠洋小の児童のほとんどが鵠沼中に行くこともあり、三校で連携できるよう「KFP三校連絡協議会」を結成しました。平成29年には小中学校OBによる「KFPおやじクラブ」を結成。「KFP三校連絡協議会」は「KFPおやじネットワーク」へ改名し、今日に至ります。
活動の目的は大きく分けて二つ。一つは、犯罪の抑止力になることです。オリジナルの黄色いベスト等を着用したおやじ達が通学路、学校周辺や地域イベント等さまざまな場所で活動することで「ここでは犯罪はできないぞ」と思わせ、子どもたちや地域の方に安全・安心をもたらします。また、定例会、SNSや一斉メール等で情報共有を行い、学校と連携することで、犯罪の抑止につなげています。
そしてもう一つは「おやじ達の交流」です。職種や年齢は違っても、同じ地域に住む者同士。パトロール以外でも交流することで、自身も楽しむことを目的としています。地引網やバーベキュー、お祭り等、子どもたちや家族とのイベントもそうですが、特筆すべきは、趣味や特技を生かしたサークル活動が盛んなこと。マラソン等のスポーツ、キャンプ等のレジャー、バンド活動等さまざまで、年1回行われているママチャリレースでは大活躍しています。現在はコロナ過で活動は限られていますが、それぞれのやり方で楽しんでいるようです。
結成して15年以上経ちました。大事なのは無理をせず「できるときにできることをする」そして「継続は力なり」だと思います。毎年新しい隊員が増え、おやじクラブには定年を迎える人も出てきます。「おはようパトロール」「おかえりパトロール」で子どもたちが安心して登下校できるよう、たくさんのKFPのおやじ達で見守っていけたらと思います。そして、これからも子どもたちと地域の安全・安心のお役にたてれば幸いです。
P10
県社協のひろば
「神奈川県社会福祉センター」ー地上8階建、反町駅前に8月オープン
本会では、県域の福祉推進の拠点となる「神奈川県社会福祉センター(以下、センター)」の整備に取り組んでいます。センターは地上8階建、東急東横線反町駅から徒歩1分の立地にあり、令和3年8月のオープンを予定しています。この整備計画が始まって約5年、完成を間近に控え、今後、多くの方にご利用いただけるよう、センターの概要を紹介します。
現在の拠点である神奈川県社会福祉会館は、開館から50年が経過、設備の老朽化が進み十分な機能を果たすことが困難になりました。そこで、本会が県の支援を受け、センターを建設することとなりました。
〈写真〉
建物外観(手前は国道1号線)
〈写真終わり〉
新拠点では、福祉関係者の連絡調整や交流、福祉・介護人材の養成、災害時の福祉的支援など、さまざまな形で県域の福祉推進に一層取り組んでまいります。
センターは、本会事務室の他、研修室(約60名定員)3部屋、会議室(約40名定員)3部屋、福祉関係団体の共同オフィスフロア、ともしびショップなど、福祉に携わる人々が交流し、協働して福祉推進を図ることを支援するための環境を備えます。また、センターを利用する方々が使いやすい設備となるよう努めております。
ご支援(協賛金)のお願い
センター整備にあたっては、これまで、会員をはじめ福祉関係者の皆様、企業の皆様、個人の方から多くのご支援(協賛金)を頂いております。皆様のご厚意に心より御礼申し上げます。協賛金は会議室、研修室の設備・備品のための費用等に充てることとし、目標額(3千万円)の達成を目指し、現在も募っております。
本会新拠点の整備事業への皆さまのご理解とご支援をお願いいたします。
(福祉拠点整備担当)
P11
information
役員会のうごき
◇理事会=2月1日(月)①正会員の入会申込み②民生委員児童委員協議会の会員の位置付け及び会費額の見直しの方向性③評議員会の招集
新会員紹介
【経営者部会】(福)慈母会、(福)川崎立正福祉会
本会への応援に感謝いたします
【賛助会員】本会事業の趣旨に賛同いただき、ご入会いただきました企業・団体等
▽神奈川県信用金庫協会▽富士産業(株)▽(一社)生命保険協会神奈川県協会▽(株)アレーテー▽八木時雄税理士事務所▽東洋羽毛首都圏販売(株)横浜営業所▽(株)安江設計研究所▽(株)トミヤ▽三井不動産レジデンシャル(株)横浜支店事業企画室▽(有)ナカマル商会▽第百ゼネラル(株)ホテル横浜キャメロットジャパン▽ニュートリー(株)▽東宝防災(株)▽(一社)神奈川県指定自動車教習所協会▽共和興業(株)▽かながわ信用金庫▽オール・レンタル(株)▽(株)タックルベリー▽(株)ホテル、ニューグランド
【部会事業協力者】各種招待行事・寄附等、本会部会事業にご協力いただきました企業・団体等
▽KCJ GROUP(株)▽(公財)資生堂社会福祉事業団▽(公財)ポーラ美術振興財団ポーラ美術館▽横浜西ロータリークラブ▽横浜戸塚西ロータリークラブ▽神奈川県民共済生活協同組合▽(公財)神奈川新聞厚生文化事業団▽(福)テレビ朝日福祉文化事業団▽(一社)神奈川県養豚協会▽(株)SL Creations▽(株)カレンズ▽三菱商事(株)社会貢献チーム▽ジョンソン(株)▽(一社)タイガーマスク後援会▽(株)ゼンショーホールディングス▽(N)ライツオン・チルドレン▽(株)ベルン▽(N)クロスワイズ▽(株)トレンドリンクス▽横浜幸銀信用組合▽夢ら丘実果▽関東アイスクリーム協会▽神奈川県労働者福祉協議会▽(一社)神奈川県自動車会議所▽神奈川トヨタ自動車(株)▽伊藤香苗▽(公財)報知社会福祉事業団▽(一社)生命保険協会神奈川県協会▽(株)龍角散
(いずれも順不同、敬称略)
寄付金品ありがとうございます
【交通遺児援護基金】神奈川県港南警察署、(株)エスホケン
【萬谷子ども福祉基金】神奈川県港南警察署、(株)タックルベリー、脇隆志、(株)エスホケン
【ともしび基金】県立総合教育センター、ともしびショップ青い鳥、(福)日本医療伝道会総合病院衣笠病院
(合計11件 365,844円)
【寄附物品】明治安田生命保険相互会社、神奈川日産自動車(株)
【ライフサポート事業】
〈寄附物品〉(公社)フードバンクかながわ、(N)セカンド・ハーベストジャパン
(いずれも順不同、敬称略)
神奈川県社会福祉センター整備事業
協賛ありがとうございました
富士屋ホテル(株)、(福)こやま社会福祉事業会、(福)泉心会、綾瀬市民生委員児童委員協議会、(福)清川村社会福祉協議会、(福)偕恵園、座間市民生委員児童委員協議会、(福)育生会、(福)真鶴町社会福祉協議会、藤沢障害福祉法人協議会、藤沢市民生委員児童委員協議会、久野保育園
(敬称略 R3.2.28時点)
福祉タイムズの感想をお寄せください!
お寄せいただいたご感想・ご意見は、以降の紙面作成の参考とさせていただきます。ぜひ、お聞かせください。
◇問い合わせ先=企画調整・情報提供担当
TEL 045-311-1423
FAX 045ー312ー6302
Mail:kikaku@knsyk.jp
〈広告〉
本紙の掲載広告を募集しています!
本県の福祉機関・団体等の活動や社会福祉の動向をタイムリーに発信し、幅広い福祉実践者を読者層とする「福祉タイムズ」を皆様の広報活動にぜひお役立てください!
<発行部数>毎月16,500部(令和3年度発行予定数)
<配布先>社会福祉法人・福祉施設、地域包括支援センター、相談支援事業者、民生委員児童委員、地区センター、行政福祉関係部署、福祉系学校等約4,000カ所
<掲載価格>カラー30,000円、白黒8,000円~21,000円 ※一回あたり、税抜
【問い合わせ先】企画調整・情報提供担当
TEL 045-311-1423 FAX 045-312-6302
〈広告終わり〉
P12
かながわほっと情報
焼き立てパンがうれしい気持ちをつないでくれる―(N)もくせい・ティールームもくせい(横浜市神奈川区)
目玉焼きパン、コロッケパン、あんパンにアップルデニッシュ。月2回の水曜日、県社会福祉会館には、障害者地域作業所型「ティールームもくせい(以下、もくせい)」のとびっきり美味しいパンが並びます。12時からのお昼休みには、県社協はじめ会館入居団体の職員や研修で来館しているケアマネさんたちなどで、すぐに行列。取材した日も10分足らずで売り切れました。
〈写真〉
会館でのパン販売の様子。次から次へとお客さんが並ぶ。根田さん(左)と河津さん(左から2番目)
〈写真終わり〉
もくせいで働く河津恵美子さんは、会館での販売歴がすでに7年。本会の職員とも顔なじみで、職員の好みも覚えてくれています。取材時、買いに来ていた職員からは「『メンチパン、ありますよ』と声をかけてくれるんだよね」とうれしそうな声が聞かれました。
河津さんは「持ってきたパンが全部売れるとうれしい」「今日の午後は、もくせいに戻ってバターロールの生地を仕込んで冷凍します」と、はにかみながら話してくれました。
一緒に販売に来ている職員の根田政秀さんは、もくせいに勤務して13年ほどになります。それまでにも同じ法人の神奈川区福祉活動ホームやパティスリーもくせいの勤務を経験してきたベテランです。
〈写真〉
どれも美味しい!一番人気は、コロッケパン
〈写真終わり〉
そんな根田さんに、仕事の中で大事にしていることをお聞きしたところ、「ティールームもくせいには、パンを販売する店舗とパンを作る作業場があります。利用者のみなさんそれぞれのペースを大事に、無理をしないように、と心がけています」と穏やかに語ってくれました。
もくせいは、開所してから20年経ち、利用者のみなさんも一緒に年を重ねています。中には、若い頃は出来ていたことが40代になり難しくなる人もいます。生地をこねたり成形作業が難しくなれば、焼きあがったパンの袋詰めを担当してもらう等、その人のペースや得意なことを大事にしています。「ここに通所したい、と要望がある間は受け入れていけるように、みなさんが作業をしやすい環境を作っていくのが仕事ですから」と、何の気負いもなく自然体で話す根田さん。「『今日はよく売れたね。よかったね』と、みんなで一緒に気持ちを共感して共有できる。うれしいことですね」とも話してくれました。
ティールームもくせいは、東急東横線白楽駅から歩いて8分のおいしい手作りパン屋さん。ぜひ、のぞいてみてください。
(企画調整・情報提供担当)
「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
ご意見・ご感想をお待ちしています!
バックナンバーはHPから
【発行日】2021(令和3)年3月15日(毎月1回15日発行)
【編集発行人】新井隆
【発行所】社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
〒221-0844 横浜市神奈川区沢渡4番地の2
TEL 045-311-1423
FAX 045-312-6302
Mail:kikaku@knsyk.jp
【印刷所】株式会社神奈川機関紙印刷所