福祉タイムズ
Vol.894(2026年5月号)
このデータは、『福祉タイムズ』 Vol.894(2026年5月号)(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。データは、下記リンクからダウンロードが行えます。
テキストデータ作成に当たって
このデータは、『福祉タイムズ』 vol.894 2026年5月号(発行:神奈川県社会福祉協議会)をテキスト化したものです。
二重山カッコは作成者注記です。
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福祉タイムズふくしTIMES
2026.5 vol.894
編集・発行社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
今月の表紙
綾瀬市寺尾地区民生委員児童委員協議会 会長の二ノ宮要子さん(撮影 菊地史)
詳細は次のページから
Contents
特集 生きづらさがある社会での「セルフヘルプ・グループ」の価値
NEWS&TOPICS DV・ストーカー被害者への支援に向けた県の取り組みについて | 県共生推進本部室
県社協のひろば 社会的養護の新たな指針『養育ブック第3版』
連載/みんなの防災ノート いつか来る日に備えて 災害ボランティアセンターを住民の力で ―鵠沼地区社会福祉協議会 災害ボランティアセンター運営委員会
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かながわ ふくしのギャラリー
「みまもる」ということ
綾瀬市寺尾地区民生委員児童委員協議会 会長 二ノ宮要子さん(綾瀬市民児協会長、神奈川県民児協副会長)
私たちの住む地域には、同じ住民としての目線を大切に、高齢者や障がいのある方の見守り、子どもたちへの声かけのほか、子育ての不安や生活上の心配ごとなどを聞き、必要に応じて専門機関等への「つなぎ役」を担う民生委員・児童委員(以下、民生委員)がいます。
今回は、綾瀬市寺尾地区で民生委員活動11期目(33年目)を迎え、会長を務める二ノ宮要子さんに、活動のやりがいや魅力についてお話を伺いました。
主任児童委員制度創設時に就任
民生委員は名前のとおり児童委員も兼ねていますが、少子高齢化や児童虐待などを背景に、平成6年に児童福祉に関する支援を専門に担当する「主任児童委員制度」が創設されました。
制度創設時に委嘱を受けた二ノ宮さんは、民生委員としての経験もありませんでした。「主任児童委員としての活動は前例や土台がなく、何をしたらよいか分からなかった」と当時を振り返ります。
手探りの中でも、同期委員と密に連携しながら、地域の乳幼児健診を手伝うなど、できることから少しずつ取り組んでいきました。当時、共に歩みを進めた同期委員とは、今でも定期的に顔を合わせるなど、試行錯誤の日々を乗り越えてきた深い絆で結ばれています。
自分らしさを生かした民生委員活動
高校卒業後はバスガイドや結婚式の司会者などの仕事に就き、そこで培ったさまざまな経験は住民との会話の引き出しとなり、訪問活動にも生かされています。
また、大きな声であいさつをすることや笑顔を意識し、民生委員活動を通して出会う人、さらにはそこからのつながりを大事にしています。
それは、例えば、住民への年賀状に手書きで一言コメントを必ず添えるなど、手間を惜しまず、一人ひとりに心を寄せたこうした取り組みが、住民とのつながりを育んでいます。
続けながら見つける「みまもりかた」
二ノ宮さんが地区民児協の会長となってから、変わらず続けている取り組みの一つに〝手縫い雑巾の配布〟があります。民生委員が役割分担し、ひとつの雑巾を丁寧に縫っていきます。「雑巾は買うこともできるけど、手縫い雑巾をお渡しすることで、住民の方が手にした時の気持ちが違うと思っています」と約18年続けてきた想いを語ります。
民生委員活動は、訪問活動における「見守り」が基本となりますが、「みまもりかた」は人それぞれであり、少しずつ自分のやり方を見つけていくことができることも、魅力の一つとのこと。
決して真っすぐとは言い難い手縫い雑巾の糸の列から、言葉だけでは伝えることのできない人の優しさやあたたかさが伝わり、暮らしにそっと寄り添う、そんな「みまもり」の形を大事にしています。
「私は委員会活動そのものに楽しさを求めるものではないと考えています。しかしながら、続けていくことによって、楽しさややりがいが生まれ、自分にとっての財産になっています」―民生委員として背筋を伸ばすことを常に意識していると話す二ノ宮さんの立ち姿からは、一歩ずつ積み上げてきた民生委員活動への誇りと自信が感じられました。
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〈写真5点〉
①凛とした姿勢からは、33年という年月をかけて積み上げられた自信や、周囲に安心感を与える人柄を感じた
②会長として大事にしていることは「皆が明るくなる雰囲気づくり」と笑顔で話す二ノ宮さん
③④委員で手分けして雑巾を縫う作業は、委員同士のつながりづくりにもなっている。完成後は想いを込めてリボンを結び、住民へ届けている
⑤「長い時間をかけることで、住民の方と関係性をつくることができる。活動の中で辛い経験をするかもしれないが、諦めないでほしい」と期の浅い委員へのメッセージを熱く伝える
〈写真5点終わり〉
〈コラム〉
5月12日は民生委員・児童委員の日
民生委員制度は、第一次世界大戦末期、大正6(1917)年5月12日に防貧対策として岡山県で創設された済世顧問制度が源になっています。
全国民生委員児童委員連合会では、この制度が公布された5月12日を「民生委員・児童委員の日」と定めました。
〈コラム終わり〉
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特集
生きづらさがある社会での「セルフヘルプ・グループ」の価値
本会は、昭和63年3月の「県社協活動推進計画」で当事者活動の支援を主要事業に位置づけて以来、セルフヘルプ・グループの活動支援に取り組んでいます。
今回は、偏見や孤立に直面する社会の中で、当事者が自らのチカラを取り戻し、仲間と支え合う場として、安心できる居場所を生み出すセルフヘルプ・グループの価値について考えます。
SHGのはじまり
セルフヘルプ・グループ(以下、SHG)は、疾病や障がい、依存症、精神障がい、犯罪被害や遺族など、さまざまな生きづらさ、共通の課題を感じる当事者同士が自主的につながり、共感の中で悩みを打ち明けたり、課題解決のために経験や情報を分かち合ったり、相談活動や社会に理解を広める活動を行うグループです。
SHGの立ち上げの理由はさまざまですが、ある統合失調症の親と向き合う子ども向けの家族会の代表者は「自分と同じような思いをしてほしくないから」と言います。大学3年生の就職面接で母の病のことをオープンにした際「お母さんの病気、あなたにも遺伝しないのか」と質問されたそうです。その時、偏見がいまだに存在することへの悲しみを感じ「これからを担う子どもたちに悔しい思いをしてほしくない」とグループの立ち上げを決意しました。
根強く残る偏見や差別を解消するため、社会に向けて働きかける必要性に迫られてSHGを立ち上げたことが分かります。
また、ある場面緘黙(※)の子どもと保護者の会の代表者は、当初場面緘黙の当事者や家族、支援者を対象にしたグループに参加していましたが「子どもとその親だけが集まる居場所をつくりたい」という思いから新たにグループを立ち上げ、活動を始めました。
既存の活動テーマがあっても、自身の当事者性と向き合った結果、より自身が抱える生きづらさに寄り添えるグループを求め、参加対象者を限定したり、活動内容の異なるグループが立ち上がったりすることもあります。
(※)家等では普通に話すことができるのに、学校等特定の状況では話すことができなくなってしまう不安症群に分類される精神疾患で、症状や困りごとは一人ひとり異なる。
SHGの持つチカラ
SHGは当事者により、当事者のためにつくられるグループのため、当事者の体験や知識がグループの中で蓄積されていきます。最初は悩みを聞いてもらう側だったメンバーが、やがて新たな参加者の悩みを受け止める側へと変化していくことがあります。この「受け手から送り手への変化」は、当事者の自信や成長へとつながっていきます。こうした回復経験者の体験談は、時に専門家による治療よりも説得力を持ちます。これこそが、SHGの持つチカラの一つですが、SHGは制度や専門職では補えない〝狭間〟を埋めるために、自然発生的かつ必然的に生まれ、あり続けるものとも言えます。
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SHG活動を通じた社会への問いかけ
以前と比較し、学校や職場での配慮や制度が少しずつ整備され、SNSやメディアを通じて個人の経験が共有されやすく、多様性を認め合う意識が高まってきていますが、さまざまな生きづらさを抱える人やその家族が直面している生きづらさそのものは、決して軽くなったわけではありません。
SHGの支援機関・団体はいまだ少なく、専門職であっても病気・少数派への偏見や間違った理解、思い込みなども見え隠れする現状があります。そうした専門職による二次的な傷つきも少なくありません。
このような社会の中で、言葉にできない感覚を理解し、励ましてくれる仲間と出会い、気持ちや情報を分かち合いながら生きるチカラを取り戻していくSHG活動は、単に「助け合い、支え合い」や「少数派の集まり」という言葉では捉えきれません。悩みを抱えながらも口にできなかった人たちが安心して思いを吐き出せる場、心理的安全性を得られる場が社会に求められており、SHGの活動から、当事者の存在が明らかになり、私たちに向けて多様性のある社会の在り方を問いかけてくれます。
活動を始め、続ける難しさ
一方でSHGには、自主的でボランタリーな活動であるがゆえの課題やSHGという形態特有の課題が聞かれます。
〈SHGの課題例〉
●回復のためには継続的なミーティングが必要だが、安定した活動場所の確保が難しい
●専用の活動拠点を持たないため、電話相談や資料の保管が代表者の個人宅になってしまう
●メンバーの安全やプライバシーに配慮しつつ、同じ悩みを抱える他のグループとつながりたいと思っても、交流の機会が十分に得られない
こうした課題を解消するため、本会では、分かち合いや交流、相談に利用できる相談室、備品を保管できるロッカー、郵便物を受け取るメールボックス、打合せや作業に使えるスペース、グループ主催のイベント周知のための情報発信のサポートを行っています。また、セルフヘルプ活動の相談窓口として、SHGの立ち上げ支援や参加希望者への対応、情報提供等を行っています。
SHG活動支援のこれから
SHG活動は多分野にわたり、個別性が高いことや少数派であることが少なくありません。こうした背景から、広域かつ公的な性格を持つ本会が支援することにより、市町村域では出会う機会の少ない仲間とつながることができ、参加者の匿名性を守りながら安心して活動に参加したいというニーズに応えてきました。事業開始時の登録グループ数は10グループでしたが、令和8年4月末現在は61グループまで大幅に増加しています。
本会はこれからも、生きづらさを抱えている当事者の相談に丁寧に向き合い、SHGの持つ「チカラ」と可能性を大切にしながら、安心・安全な居場所づくりを継続していきます。また、SHGの意義や当事者理解を広げる普及啓発にも取り組み、SHGの応援団としての役割を果たしていきます。(地域課)
〈コラム〉
セルフヘルプ活動支援事業が20年を経過した節目として、『セルフヘルプ活動支援事業20周年記念誌』を発行しました。
これまでの事業の歩みや活動を支えてくださった関係者・SHGの方々の声をまとめています。活動者や支援者の想いに触れ、SHG活動の意義やチカラへの理解を深めるきっかけにしていただけましたら幸いです。
HPにて公開中
〈コラム終わり〉
〈イラスト〉
セルフヘルプちゃん
SHG活動への理解と協力の輪を広げるため、PRキャラクターが誕生しました!
〈イラスト終わり〉
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NEWS&TOPICS
DV・ストーカー被害者への支援に向けた県の取り組みについて
昨年、川崎市でストーカー被害を訴えていた女性の尊い命が失われるという大変痛ましい事件が明らかになりました。
県では、事件を重く受け止め、こうしたことが二度と繰り返されることのないよう、支援施策の充実に向けて取り組んでいます。
被害者支援の現状と課題等
県は、川崎市での事件を受け、被害者支援の在り方やその課題等について考えるシンポジウムを2度開催したほか、支援機関との会議を開催し、学識者や被害者を支援する民間団体、市町村と、支援現場における現状や課題等について意見交換を行っています。
シンポジウム等では、被害当事者や被害者の支援を行う民間団体等から、①相談先が分からない・分かりづらい、②相談の仕方が分からない、③警察が動いてくれない、④制約の多い場所への避難を決断できない、⑤なぜ被害者が逃げ回らなければならないのか、といったご意見をいただきました。
5つの強化に向けた取り組み
被害者の一時保護や自立支援については、困難な問題を抱える女性への支援に関する法律にその施策の根拠が規定されています。また、DV・ストーカー被害は、被害者と加害者の関係性によっては、被害者が自分も悪かったと自身を責める気持ちを抱いてしまう場合があることや、事態が急展開して重大事件に発展する恐れがあるといった性質があり、支援に当たっては被害者の意思を尊重しながら安全を確保するという難しい対応を行う必要があります。
こうしたことを踏まえ、県では、被害者目線に立った支援施策の充実に向け、次の5つの強化を図っていきます。
(1)広報の強化
被害者やその周りの方に対して相談窓口や支援内容が十分に届いていないといった課題を踏まえ、令和7年11月、LINEを通じて相談員に相談ができる「かながわDV相談LINE」のリニューアルを行い、DV被害者に加えてストーカー被害者の相談を受け付けることとしたほか、被害者の周囲の方に対しプッシュ型の周知広報を行うこととしました。併せて、県のポータルサイトの内容を工夫し、被害者が必要とする支援や窓口を分かりやすく一元化しました。令和8年度には、SNS等を活用し、相談窓口や支援情報の周知を行うほか、県のポータルサイトをより分かりやすくリニューアルするなど、広報をさらに強化します。
(2)行政・警察の連携強化
被害者のいのちを守るためには、行政と警察が連携して支援を行う必要があります。このため、県では、現在、警察と定期的に協議し、情報共有ルールの検討など情報連携の強化に取り組んでいます。
また、被害者が自身の状況を客観的に把握できるよう、危険度を見える化するチェックリストの作成に向けて検討を行っているほか、令和7年度には現場で相談を受ける行政や警察の連携強化のため、県警職員と女性相談支援員等の合同研修を充実しました。
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(3)相談支援体制の強化
相談先が分からない・分かりづらい、窓口を案内されるだけではたらい回し感があるといった被害当事者等からの声を受け、被害者からの相談に対して、行政機関や警察等が連携したワンストップ支援を行うための仕組み作りを検討しています。
また、被害者やその家族が抱える事案の法的整理を行い、被害者の訴えを的確に警察等に伝えるため、弁護士による支援体制の構築に向けて検討を進めています。
さらに、身近な地域で「伴走型支援」が実施できる相談支援体制を全県で充実させ、女性相談支援員の配置を促進するため、配置費用の市の負担分を一部補助する事業を実施します。
(4)一時保護・自立支援機能の強化
一時保護を行うシェルターでは、被害者の安全を確保するため、スマートフォンの利用制限や外出制限等のルールがありますが、被害者の中にはすぐに一時保護を受けることを決断できない場合があります。このため、県では、シェルターへの入所を迷っている方の意思決定の時間と安全を確保するため、一時的な緊急避難先を提供する事業の実施に向けて検討を進めています。
また、被害者等の一時保護を受託する民間シェルターについて、民間団体の安定した運営を支援するとともに、被害者の安全確保を行うシェルターを増やし、一時保護体制の充実・強化を図っていきます。
(5)加害者対応の強化
なぜ被害者の自分が逃げ回らなければならないのかという被害当事者の切実な声を受け、DV・ストーカー加害者への対応方法やアプローチ方法について、学識者、医療機関、支援関係機関等による研究会を立ち上げ、調査研究を実施するなど、課題を整理し、対応策を検討していきます。
これらの被害者への支援施策を充実・強化していくためには、さまざまな困難な問題を抱える女性等への支援を未然防止から自立支援まで一体的に展開することが不可欠です。県では、こうした支援を行っている市町村、警察、民間団体と連携しながら、支援施策が実効性のあるものとなるよう、しっかりと検討を行い、取り組みを進めていきます。(県共生推進本部室)
福祉のうごき 2026年2月26日〜4月25日
県・県住宅供給公社 「外国人介護人材の確保・定着に関する連携協定」締結
県は3月26日、神奈川県住宅供給公社と「外国人介護人材の確保・定着に関する連携協定」を締結した。本協定は、外国人介護人材の円滑な受け入れと、地域社会への定着が目的。連携内容として、外国人を受け入れる介護サービス事業者への住宅確保支援のほか、公社住宅団地に入居した外国人介護人材と地域住民との交流機会の創出、それによる団地の活性化など。
神奈川県立福祉機構を設立
県は4月1日、 地方独立行政法人神奈川県立福祉機構(通称、KanaWel)を設立した。当機構は、県当事者目線の障害福祉推進条例の基本理念に基づき、障がいのある人の地域生活支援と、科学的な福祉の研究・実践、人材育成の拠点を目指す。障害者支援施設の中井やまゆり園や発達障害支援センターかながわA(エース)等を運営する。
頼れる身寄りがいない高齢者支援等
社会福祉法改正案が閣議決定
国は4月3日、社会福祉法等の一部を改正する法律案を閣議決定した。頼れる身寄りがいない高齢者等の支援を行う事業や社会福祉連携推進法人が実施可能な業務を、第二種社会福祉事業に位置付ける。また、権利擁護支援の中核的な役割を担う「地域権利擁護相談支援センター」の設置、都道府県で福祉人材確保のための協議会の設置、災害派遣福祉チームとして活動する人材登録、介護支援専門員に係る研修受講を要件とした更新の仕組みの廃止などが盛り込まれている。
成年後見制度「補助」に一本化
民法改正案が閣議決定
国は4月3日、成年後見制度を見直す民法等の一部を改正する法律案を閣議決定した。成年後見制度について、終身制を改め、本人の必要な範囲で利用することができるように、現行の後見および保佐類型を廃止し、補助の制度に一元化される。
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県社協のひろば
社会的養護の新たな指針 『養育ブック第3版』
本会児童福祉施設協議会(以下、協議会)では、社会的養護のもとで生活するこどもの権利を守るため、平成18年から『養育ブック』の作成・改訂に取り組んできました。これは、養育者の孤立やこどもへの不適切な関わりを未然に防ぐガイドラインです。令和6年度に、社会情勢や支援体制の変化に合わせて『養育ブック第3版』(以下、第3版)を作成し、令和7年度にはその活用についての研修会を開催し、現場との課題共有とガイドラインの説明を行いました。今回は、第3版の作成と普及に向けた取り組みを紹介します。
社会的養護をめぐる動き
近年、社会的養護に関わるこどもを取り巻く環境にはさまざまな変化が見られています。代替養育を必要とするこどもの高年齢化や一時保護所の定員超過といった課題に加え、里親委託の推進や施設の小規模化等、支援現場が向き合うテーマも多様化しています。令和6年4月の改正児童福祉法の施行により、こどもの意見表明を支える仕組みが強化された一方で、業界全体で人材確保・育成が厳しさを増しており、いかにしてこどもの権利を守り抜くかが改めて問われています。
関係者の声を反映して
こうした状況を受け、協議会では、令和6年8月に児童福祉施設や里親、児童相談所等の多様な立場の関係者で構成される「こどもの権利擁護研究会」を立ち上げ、現状に即したガイドラインの共有を目指しました。養育者が日々の実践に生かせるよう、自らの取り組みを振り返るためのワークや最新のトピックを盛り込み、より実用性の高い内容にしました。
議論を重ねて完成した第3版は、県内の児童福祉施設や里親家庭、行政機関等へ、広く配布しています。
〈囲み〉
『養育ブック第3版』の構成
1.養育(子育て)と権利擁護
2. 不適切な関わりに陥らないために
3. こどもの意見や意思を尊重するために(意見表明への配慮)
4. 不適切な関わりが起きてしまったら
5.被措置児童等虐待について
〈囲み終わり〉
普及・啓発に向けた取り組み
完成した第3版の活用促進を目的に、令和7年度には対象を分けた研修会を2回開催しました。
1回目は、施設職員や行政担当者を対象に、改訂の背景について理解を深めるとともに、グループワークを通じて各職場が抱える権利擁護の課題を共有し、効果的な取り組みについて意見交換を行いました。
2回目は、里親家庭やファミリーホーム、里親支援に携わる方を対象に開催しました。当事者である里親会等の方々より、こどもとの関わりで生じた葛藤や工夫が紹介され、参加者からは、養育のあり方を捉え直すヒントを得たといった声が多く寄せられました。
第3版作成に中心的に携わり、両研修の講師も務めた村岡薫さん(川崎こども心理ケアセンターかなで副施設長)は、「社会的養護の現場は、悩みが生じやすい環境であることを自覚し、第3版を活用して定期点検を行いましょう。思いや疑問を書き込み、ぜひ自分だけの一冊に育ててください」と呼びかけました。
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たくさん書き込みがされた自身の第3版を手に講義を行う村岡さん
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現場で生きる指針として
第3版は、こどもと向き合う中で悩みを抱える養育者に寄り添い、日々の歩みを支える指針となることを目指して作成されました。こどもが自分らしく安心して過ごせる環境を整えることは、社会的養護の現場が継続して取り組むべき重要な課題です。
協議会では今後、施設や里親、行政機関といった立場や地域の特性等に合わせて、第3版が広く活用されることを目指していきます。(福祉サービス推進課)
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〈全面広告〉
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連載
みんなの防災ノート
いつか来る日に備えて災害ボランティアセンターを住民の力で ―鵠沼地区社会福祉協議会 災害ボランティアセンター運営委員会
災害ボランティアセンター(災害VC)は、市町村社協やNPO、行政等が協働し、市町村域で運営するのが定着しつつありますが、よりきめ細やかな対応ができるように、地域でサテライトという形で運営する例も見られています。鵠沼地区社会福祉協議会(地区社協)では住民自らが主体となって、地区の災害VC(地区災害VC)を運営できるよう仕組みを整えて、10年が経ちました。今回、運営委員の皆さんに活動の特徴などを伺いました。
― 地区社協で取り組む背景や活動内容を教えてください
きっかけは東日本大震災でした。発災時に地域としてどのような対応ができるのか、平時からどのような備えが必要かを検討するため、地区社協にプロジェクトチームが立ち上がり、検討を重ねる中で、「被災してからではなく平時から体制を整える」必要性を共有し、平成29年に地区社協の一部門に運営委員会を設置しました。
運営委員会の中心メンバーは現在10名ほど。被災時には、住民自らの手で地区災害VCを設置し、被災者ニーズの把握、ボランティア活動の調整を行います。
活動は年間計画を立てて、実践的な訓練だけでなく、人材の養成、運営体制の整備を行っています。
❶設置運営訓練は、鵠沼市民センターで実施します。地区災害VCでのボランティア受付、被災者のニーズとボランティアのマッチング、ボランティアの送り出し、ニーズの完了報告といった一連の流れを実際に体験します。❷養成講座は、地区災害VCの役割など、災害時に住民同士が助け合う必要性を学びます。さらに、講座修了者を、地区災害VCの「支援者の会」として組織化し、住民が参加できるきっかけを作り、回を重ねることで支援者の会の人数も増えて、災害に備える意識が広がっています。❸運営体制の整備で特徴的なものは、設立当初から改訂を重ねる『業務マニュアル』です。訓練の知見を生かして、住民が「誰でも」担えるよう工夫をして、現在第8版目。この業務マニュアルに紐づく運営者向け『災害ボランティアコーディネーターハンドブック』、住民向け『災害ボランティア活動のハンドブック』も作成しています。
業務マニュアルは主に手順をまとめているため、「コーディネート」の大事な視点が抜け落ちないよう『コーディネーターハンドブック』を併用します。被災された方に想いを寄せる共感性を持った方と、被災された方との関係をつくるつなぎ役であることが意識できれば、「想いを届けるマッチング」ができると考えています。
― 被災された方、ボランティア両方の想いをつなぐ大切さに気づかされました。課題となっていることはありますか
藤沢市では、行政、市社協、NPOの三者協定に基づき、市全体を統括する市災害VCが設置され、地区災害ⅤCはサテライトに位置付けられます。( 図参照 )
〈図〉
藤沢市の発災後の災害ボランティアセンター設置の流れ
藤沢市災害対策本部
(設置協議)災害ボランティアの活動調整を実施する組織が必要と判断
↓
※3者協定による
藤沢市 災害ボランティア支援センター設置
市社協/FSVネット 災害救援ボランティアセンター設置
↓連絡・調整
地区防災拠点本部(市民センター)
(設置協議)サテライトセンターが必要と判断
↓
地区社協 地区センター設置(鵠沼地区災害ボランティアセンター)
↓設置の連絡
「支援者」
↓可能な方は参集
※3者協定:藤沢市・市社協・FSVネットで平成26年(2014年)5月30日締結
FSVネット:NPO法人藤沢災害救援ボランティアネットワークの略称
〈図終わり〉
お互いに連携することが何よりも重要となりますが、大きな課題に「情報共有」があります。
被災された方のニーズやボランティアの情報は、現状では双方でそれぞれが持つこととされています。災害VC間での共有方法を十分に話し合えておらず、活動が円滑に進まないのではないかと不安に思っています。
また、ボランティア活動に必要な資機材の情報共有も欠かせません。被災された方のニーズに合わせて、必要なタイミングと量を市災害ⅤCから適切に配分できる仕組みを整えることで、よりスムーズなニーズの解決につながります。
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〈写真7点〉
災害ボランティアセンター設置運営訓練のようす
鵠沼地区社協災害ボランティアセンター運営委員会事務局長の望月さん(左、取材時)と、事務局長を引き継ぐ鈴木さん(右)
丁寧に作られたマニュアル類
〈写真7点終わり〉
― 住民の想いをつなぎ、広げ続ける工夫はありますか
地区災害VCを、実際に住民が担うために鍵となるのは「支援者の会」の皆さんです。高校生から幅広い年齢層の皆さんの知見と想いをつなぎ、関係が続いていくように、広報紙の作成、メール配信やオンライン会議を積極的に活用した情報共有など、いつでも頼れるような顔なじみを増やす努力を続けています。
関わってくださる住民の高齢化の課題もあり、ITツールの活用は不可欠です。不慣れな方へのフォローを欠かさず、誰もが無理なく参加できる環境を作りたいです。
― 関係者や他地域へのメッセージをお願いします
地域で支え合う仕組みづくりの一つとして、地区災害ⅤCの取り組みを進めてきました。これは特別なことではなく、誰もが身近にある「災害への備え」をテーマに、地域の中でできることを積み重ねてきたというのが実情です。
活動の中で強く感じているのは、平時からの備えと顔の見える関係の大切さです。災害の状況によって、誰が被災するか分からない中で、誰でも担える仕組みを作っていきたいです。平時から、それぞれが担える役割を意識し、いざという時の助け合いにつながることを目指しています。担い手の確保や活動への理解、町内会自治会が行う防災活動との連携など課題は尽きませんが、それがあるからこそ日常的に対話ができ、今の仕組みを見直す機会にもなっています。
改めてお伝えしたいのは、私たちの取り組みは決して特別なものではないということです。全てが整ってから始めるのではなく、住民だからこそ、できるところから始めてみてはいかがでしょうか。地域の状況に合わせ、小さな取り組みであっても前に進み、継続することで「地域の力」は確実に高まることを実感しています。私たちの実践が、少しでも参考になれば幸いです。
〈QR〉
Info
鵠沼地区社会福祉協議会HP
鵠沼地区災害ボランティアセンター運営委員会HP
〈QR終わり〉
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ありがとうございました!
寄附御礼
匿名含め、合計12件5,359,152円
●ともしび基金/(福)湘南福祉協会、神奈川県立鎌倉支援学校
●交通遺児等援護基金/(株)エスホケン、アトミクス(株)
●子ども福祉基金/(株)エスホケン、脇隆志、(株)タックルベリー
●寄附物品/(公財)報知社会福祉事業団
●ライフサポート事業〈寄附物品〉/(N)セカンドハーベスト・ジャパン
(敬称省略)
寄附の受付はこちら→(かながわボランティアセンターHP)
Info
かながわ福祉人材センターからのお知らせ
令和8年度第1回福祉のしごとフェア
①福祉のしごと就職支援ガイダンス(事前申込制)
②福祉施設等就職相談会(入退場自由)
●日時
令和8年6月27日(土)①11:00~12:30 ②13:00~16:00(入場は15:30まで)
●会場
①崎陽軒本店6階会議室1~2 ② 横浜新都市ビル(そごう横浜店)9階新都市ホール
●対象
福祉の仕事に就きたい方、福祉の仕事に興味・関心がある方
詳細はHPよりご確認ください
神奈川県介護人材確保対策推進フォーラム動画のご案内
令和7年7月に開催した、神奈川県介護人材確保対策推進フォーラムの動画を公開中です。
「かながわの介護・福祉ポータルサイト」から、ぜひご視聴ください
Info
研修センターからのお知らせ
法人・事業所職員の皆様のキャリア形成・スキルアップに福祉研修センターの研修をお役立てください。
研修内容等については、研修センターHPよりご覧ください
News
県社協第2種・第3種正会員活動紹介動画のご案内
(N)神奈川県精神障害者地域生活支援団体連合会にご協力いただき、活動紹介動画を制作しました。精神障がいへの理解やご本人を支える活動について、ぜひご覧ください
福祉タイムスNo.894(2026.5.15発行)
「福祉タイムズ」は、赤い羽根共同募金の配分を受けて発行しています
編集・発行/社会福祉法人神奈川県社会福祉協議会
〒221-0825 横浜市神奈川区反町3-17-2 TEL 045-534-3866
印刷/株式会社神奈川機関紙印刷所